アイドルだって女の子

勝利だギューちゃん

第1話 アイドル

思春期となれば、普通は同年代のアイドルに興味を持つ。

男は女性アイドルに、女は男性アイドルに熱狂する。


しかし、俺はアイドルには全く興味がなかった。

皆、同じに見えて、誰が誰だかわからない。


アイドルの存在を否定はしない。

ただ、俺自身が興味がないのだ・・・


なので、部屋にはアイドル関連のグッズはない・・・


アイドルよりも、クラスの女の子のほうが、余程可愛い。

そう思っていた・・・


だが、得てしてこういう人間ほど、アイドルとの接点が出来るもので・・・


ある日、高校の友達に無理やり連れられて、ある女性アイドルのイベントに参加した。

じゃんけん大会があり、勝ち残ったものは、監視つきではあるが、そのアイドルとデートができる。


そういう企画だった・・・


最近は、アイドルとファンとの距離が、昔に比べて近くなっているらしいが、

「ここまで来たか・・・」という、感じだった・・・


友達からは、「予習しておけ」と言われたが、一切していない。

今、舞台にいるのは、別世界の人間・・・

そういう認識しかなかったが・・・


その女性アイドルは、舞台でにこやかに熱唱し、ファンは歓声を浴びせている。

アイドルは、手を振って答えている・・・


殆どは立ちあがっているが、俺は座って船をこいでいた・・・

アイドルに夢中なために、誰にも気付かれない・・・


そして、じゃんけん大会が始まった。

勝ち残れるのは、買った者だけで、あいこは負けと同じ・・・


俺はすぐに負けると思っていたが、あれよあれよと勝ち抜いて、

壇上に上げられてしまった・・・


10人があがり、この中から3人が選ばれる。

監視付きとはいえ、アイドルとふたりだけは、まずいと見える。


だが俺は、3人のうちのひとりになった。


友達からは恨まれてが、譲渡は出来ないので、覚悟を決めた。


そして、デート当日となった。

テレビで放送されるとあり、衣装は向こうが用意してくれた。


アイドルが来るまでの間、3人と同じ部屋になった。

少し気不味い・・・


「すいません」

3人のうちのひとりの男に声を掛けられた。

「あのアイドルさんについて、教えていただけませんか?」

「えっ」

「僕、さっぱりわからなくて・・・」

「あなたもなんですか?僕もわからないんです」

意外だった。同じ人がいるとは・・・


「あなたがたもですか?僕もわからないんです」

「えっ、おたくもですか?」

どうやら、俺を含めた3人は、アイドルには全く興味がないようだ・・・


後のふたりも、俺と同じで友達の付き添いで参加したようだ・・・


「どうしましょうか?」

「悩みますね」

「まあ、普通の女の子と思えばいいでしょう」

「そうですね」

意見が一致した。


ただ、アイドルの名前だけは覚えておいた。

「優月綾(ゆづき あや)」


後は、いいだろう・・・

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