第6話 教授と脱獄囚

「やあ教授、どうだいこのご時世。すごい不景気だね」


『政治に関心のない者が言いそうな言葉だ。どうもこうも新聞を見ればわかるだろう』


「これには驚いたよ。うちの国の軍隊さんはもっと強いと思っていたんだがね」


『もともと友好国にいい顔をする為に送られた義援軍だ。そこまで期待はしていない』


「相変わらずの冷徹ぶりだ。懐かしいついでに珈琲でもご馳走してくれないかな」


『たかりに来たなら帰ってくれ』


「いやいや教授、知ってるかい。今やどこの喫茶店も貴族の溜まり場だ。庶民が行って口にできるものなんて水一滴ありゃしない」


『だから大学の珈琲を飲みに来たというわけか』


「この大学は国が管理している。軍のお下がりがたくさん貰えるんだろう?良いじゃないか、幼馴染みのよしみでさ」


『脱獄囚の分際で』


「嫌なら通報すればいい」


『図太いのは変わらないな』


「お互い様さ」





──教授──と──脱獄囚──

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朝露が夜霧に消えた時 佐藤 いくら @satoko1925

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