第32話

「「侑さん、お帰り。」」

バトラとメイが引っ越し作業をしていたが、侑に気付き手を止めた。


「ただいま、あとこれからは『さん』はいらないよ、父さんと母さん。」

バトラとメイに父さんと母さんって呼んだ侑は、気恥ずかしそうに笑った。


「ミチルさんは一緒じゃ無いの?

何処に行ったの?」

メイはミチルが居ない事に、違和感で気付いた。


「ミチルは転生して、あっちの世界に行ったよ。

やらなきゃいけない事が出来たんだよ。」

侑はちょっと寂しそうな顔で答えた。


「……そう。

使徒に戻られたのね。

侑は寂しくない?」

メイはやっと落ち着いた侑の心をザワつかせる言葉を吐いた。


「凄く寂しいよ。

さっきまで、全く周りが見え無くてブラフマー様に怒られたよ。

寂しいけど、やらなきゃいけない事も父さんも母さんも居るからもう大丈夫だよ。」

侑は苦笑いにも見える表情で語った。


「そう、侑は偉いね。

いっぱい甘えていいからね。」

メイは侑の頭を撫でた。


「父さん、引っ越しが落ち着いたら町に行きたいんだけど。」

侑は少しでも早く町に行きたかった。


「荷物は全部移動したから、あとはメイに任せればいつでもいいぞ。

あと、馬も連れてきているから馬の乗り方も覚えないとな。」

バトラは父として最初やれることは乗馬の指導だなって笑った。


「馬かぁ…

乗馬のスキルでも覚えるか。」

侑はいたずらっぽく笑った。


「おいおい、俺の指導は要らないって言うのか?」

バトラもつられて笑った。


「お昼ご飯はどうするの?」

メイは置いて行かれると分かると、食事の準備をどうするか考え始めた。


「お昼は食べて行くよ、母さんの肉じゃが食べたいな。」

侑はメイの方に振り返ってリクエストした。


「肉じゃがね、材料足りるかしら。」

メイは嬉しそうにカバンの中を覗く。


「足りなかったら言って、俺のカバンの中に多分有るよ。」

侑は自分でも作ろうとメイが書いてくれたレシピの材料は全て揃えていた。


「大丈夫よ、全部あったから。

じゃ、片付けを中断してお昼を作るわね。」

メイは軽い足取りでキッチンに向かった。


「俺も手伝うよ。」

侑もキッチンに向かおうとした。


「おいおい、片付けは俺一人でやるのか?」

バトラは侑を取られて、ちょっと不満。


「町から帰ってきたら、皆でやろう。

父さんも休憩したら?」

侑は早くキッチンに行きたい。


「そうするか…」

同意したものの、心の中では出かけている間にメイが片付けていてくれる事をバトラは祈った。


「やっぱり、美味しいなぁ。」

『ミチルにも食べさせたいなぁ』侑は

満面の笑顔でがっつくミチルを想像してニヤけた。


「そんなに美味しい?

じゃぁ、毎日肉じゃがにしましょうかしら。」

メイはクスクス笑った。


「毎日は勘弁してくれ、なぁ侑。」

バトラはイタ飯も食いたいと呟く。


楽しい昼食を過ごし、バトラと侑は馬に乗って町へ向かった。


「今回は練習時間が無いから、一頭で行くぞ。

しっかり掴まっていろ。」

バトラが手綱を握り、侑はバトラの手綱捌きを見てイメージトレーニングしていた。


家から町までは、所々に家に繋がる枝分かれはあるが迷うことの無い一本道だった。


町に入ると城門近くにある、駐馬場に手綱をかけて番人に銀貨を一枚を渡した。


「取り敢えず、ギルドに行くぞ。」

バトラは侑を連れてギルドに向かった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

第二章はここ迄です。

ミチルに渡したペンダントトップのイメージモデルをツイッターで公開中です。


https://www.twitter.com/koh34700747

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