第26話
「回廊を繋ぎましたので、まっすぐ歩いて下さい。」
Bは無表情のまま伝え、侑に会釈をした。
侑は言われるまま回廊を歩いた。
しばらくすると、Tが立っていた。
「侑さんお久しぶりです。」
Tが嬉しそうに駆け寄ってきた。
腕には侑が作ったブレスレットを着けている。
『ちょっと雰囲気が変わったな。』
侑はTの雰囲気が少し大人っぽく、顔付きも幼さが無くなった気がした。
「久し振りと言う程、まだ時間は経ってないけどね。」
侑は笑顔でTに挨拶をした。
「ティーターン様は今、転生者の謁見をしてますので暫く待っててもらえますか?」
Tはまだ入れない事を伝えると、侑が話し相手になってくれる事を期待した笑顔になっていた。
「じゃ、出直そうか?」
侑からは予想外の答えが返ってきた。
「侑さんが来ている事はティーターン様に伝わっていますから、直ぐだと思います。
もし良かったら、話し相手になっていただけませんか?」
Tはこのチャンスを逃さない様に食い下がった。
「別に急いでないし、ブラフマー様とミチルが話してるから戻る事も出来ないし…少し話すか。」
侑はTと扉の近くに座った。
「侑さんはトトリにいらっしゃるのですよね。
あちらはいかがですか?」
Tはこれからの事を考えてか、興味本位なのか侑にトトリの話を聞きたいみたいだ。
「Tは白の試練が終わったら、トトリを見守る存在になるのか。
まだ、家の敷地からあまり出てないからどういう国かは分からないな。
ただ、自然が多くて良い国だと思うよ。」
侑は町にも行ってないし、引き篭もりと変わらないなと笑った。
侑とTが楽しく話をしていると、ちょっとTの表情が変わった。
「謁見が終わったみたいです、扉を開けますのでどうぞ中に。」
Tは侑との楽しい時間が終わり、少し寂しそうだ。
「また、会いに来るよ。」
侑はTの表情を見逃さなかった。
扉の中にはティーターンが立っていた。
少し、疲れた感じがする。
「侑よ、よく来たな。」
ティーターンは侑を手招きし、椅子に座った。
「ティーターン様、お願いがあって参りました。」
侑は挨拶すると、椅子に座り話を切り出した。
「願いとは、冒険者登録の事か?」
ティーターンは疲れているのか、本題に入った。
「はい、その通りです。
登録にする為に、自分のステータスを改ざんしようと隠蔽を試みたのですが駄目でした。
ブラフマー様に聞きましたら、もう少し周りを頼りましょうと諭されました。」
侑はティーターンを気遣い、話が一度で終わる様に丁寧に説明した。
「なる程な、お主はステータスを改ざんしようとしたのか。
それではブラフマーに諭されても仕方あるまい。
お主は自分でどうにかしようとし過ぎるみたいだな。
その辺の話はバトラからも聞いておる。」
ティーターンは侑に周りをもっと上手く使う術を習わせたい、しかし表立ってそれをするとブラフマーに小言を言われるので出来ないと諦めた。
「冒険者登録の件だが、ギルドマスターに話を通そう。
ステータスを弄る必要は無い。
カードの方をブラフマーにカスタマイズで弄らせれば良い。
お主が必要な時だけ、お主の魔力で本来のステータスを表示できる様にしてもらえ。」
ティーターンはテーブルの上にギルドカードを出し、侑に渡した。
「ありがとうございます。
バトラさん夫婦にもお世話になりっぱなしで、ティーターン様にはなんてお礼を言ってよいか…」
侑はカードを受け取ると、バトラの事も含めてお礼を言った。
「バトラから聞いておるぞ。
頼ってくれんと、もっと我儘でも良いと。
あやつの所は子供が居ないから、お主の事を息子の様に思っておるのだろ。
お主がどう思っているか分からんが、嫌でなければ親だと思って我儘を言えば良い。」
ティーターンは侑に遠慮はいらないから、もっと自由に生きろと伝えた。
「俺は6歳の時に親を亡くしました。
周りは大人しか居ない環境で生活していましたから、こういう性格になってしまったのかもしれないです。」
侑は自分なりに自由に生きていると主張した。
「そうだったな、お主は小さい頃に親を亡くして甘える事も出来なかったな。
悪かった、思慮が足りなかったな。
ただ、バトラ夫妻もお主と接して子供が欲しくなったのであろう。
二人して転生願いを出してきよった。
此方の世界の決まり事で、使徒は子供を作れんからな。
だから、バトラ達と居れる時間はそう長く無い。
悔いは残すなよ。」
ティーターンはバトラから転生願いが出てる事、使徒は子供を作れない事を侑に伝えた。
「バトラさん達が転生ですか…
使徒は子供を作れないのですね。」
侑はバトラ達との時間がそれ程長くない事を理解した。
「子供が出来て、使徒としての仕事に支障が出る者が多くて決まった事だ。
子供が欲しい使徒は一度転生して子供を作り、手のかかる時期はあちらの世界で暮らすのだ。
手がかからなくなったら、此方へ転生して戻ってくる。
勿論、子供も使徒となりその中からTの様な次の神候補も選ばれる。」
ティーターンは使徒に関して詳しく教えてくれた。
「Tといえば、雰囲気が少し変わりましたね。
大人っぽくなったというか、幼さが抜けたというか。」
侑はティーターンにTの話をした。
「白の試練がそろそろ終わるからな。
次に来たときには、終わっているかもしれんな。」
ティーターンは隠居が近いと笑っていた。
「そろそろ、ブラフマー様の所に戻ります。
ミチルをおいてきてしまったので。」
侑はミチルの事が心配になっていた。
「おう、困った事があったら自分でどうにかしようとせずに儂にも頼れ。
儂にしても、お主は息子の様なものだ。
遠慮は要らんからな。」
ティーターンは侑に別れの挨拶をするとTに回廊を繋ぐように指示した。
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