第15話

…リビングから、楽しそうな声が聞こえる。


そこには意気投合して楽しく語り合うメイとミチルが居た。


「随分と楽しそうですね。」

バトラはメイに向かい、節度を弁えろと言わんばかりの目で声をかけた。


「武器できたんだ!」

ミチルは脳天気に、侑の肩の上に座った。


侑とバトラもソファーに座ると、メイがお茶を淹れてくれた。


「緑茶ですか?」

侑はこの世界に緑茶が有るとは思わなかった。


「この世界では紅茶が主流なのですが、紅茶も緑茶も茶葉は同じですから。

紅茶にする前の摘みたての茶葉を譲って頂いて、私が煎じております。

今日はお裾分けする為に、茶筒に入れてお持ちしました。」

メイはミチルに渡した事を伝える。


「ありがとうございます、色々とすいません。」

侑はミチルの事も含めてお礼を言った。


「侑様、この日本刀ってティーターン様のに似てない?」

ミチルは刀を見ながら、首を傾げた。


「良く見てたね、でも外見は似てても中見は別物だよ。」

侑は鷹丸を持ち広い所に移動した。


「この日本刀は『鷹丸』って名前をつけたんだ。

日本刀だけど、忍者刀の構造を参考に作ったんだよ。」

侑は鷹丸を鞘から抜いた。

ラボでは分からなかったが、明るい所で見ると刃紋が薄っすら青い。


「忍者刀って何?」

ミチルは首を傾げている。


侑は鷹丸を水平に構えると、魔力を流した。

すると、柄から蒼白い刃が出てきた。


「忍者刀はね日本刀に見えるけど柄に仕込み刃が隠されていて、間合いが無い時等に刃を出して攻撃出来る武器なんだ。」

ミチルはスター○○ーズみたいって笑ってる。


「鷹丸は更に、弓になるんだよ。」

侑は弓をイメージしながら更に魔力を流す。

すると、弭が現れ魔力の弦が出来た。


「弓にもなるんだ。」

ライ○○ーベルよりすごいね!ミチルは感心してる。


侑は鷹丸を鞘に戻し、ソファーに座った。


「メイさんにお願い事が有るのですが。

もし今日、時間が取れるのでしたら一緒に夕食を作って頂けませんか?」

侑はお茶を飲みながら尋ねた。


「別に構いませんけど?」

メイは何故一緒に作りたいのか分からない。


「では、もう少ししたら夕食の準備を始めましょう。」

侑は嬉しそうだ。


「コンコン、コンコン」

窓を叩く音が聞こえた。


侑が窓を開けると、スライムが居た。


「侑さん、門の近くにシルバーウルフが居るよ。

危ないから、出ないでね。」

スライムは侑の事を心配して、教えに来てくれた。


「シルバーウルフ?

分かった、ありがとう。

スライムも門の近くに行かないようにね。」

侑は何者か分からないけど、スライムの心配をした。


「侑様、シルバーウルフは凶暴なモンスターです。

全長は1メートル位で、牙が鋭く素早いです。」

バトラがモンスターの説明をしてくれた。


「まだ、明るいので今のうちに退治してきます。」

バトラは立ち上がり、玄関に向かった。


「俺も行って良いですか?」

侑は鷹丸を使ってみたくてウズウズしてる。


「侑様…

条件が一つ。

ミチル様に斥候をお願いしたい。」

バトラは無理について来られるより、安全な状態を作った方が良いと判断した。


「私は別に良いわよ?

というより、退治して来ようか?」

…ミチル、口調が変わってきてるよ?

侑はモンスターよりもミチルの方が脅威になりそうな気がしてきた。


「退治したら駄目だよ。

鷹丸が使えないでしょ。

何頭居て、他のモンスターが居ないか等を調べて。」

侑はミチルが余計な事をしない様に釘を刺した。


「…分かったわよ。」

ミチルはちょっとむくれてる。


侑とバトラは庭に移動する。

バトラはカバンの中から愛刀を出した。

「愛刀『叢雨(むらさめ)』です。」

両手剣が得意だと思っていたバトラの武器は、以外にも日本刀だった事に侑は驚いた。


「じゃ、ちょっと見てくるね。」

ミチルはフェニックスに戻り、飛び立った。

夕焼け間近の赤味かかった空にキラキラ光る青い体躯。


「本来の姿はフェニックスでしたか。」

バトラは驚きを隠せない。


しばらくするとミチルが戻ってきた。

「シルバーウルフは全部で4頭、他のモンスターは居ない。

屋敷周辺を見てきたけど、他に警戒するべき物は居ない。」

ミチルはちょっと不貞腐れている。


「4頭ですか、安全策を取りますか…

メイ!」

バトラはリビングに居るはずのメイを呼んだ。

「…此処に居ますけど?」

メイはすぐ後ろに立っていた、手には戦杖を持っている。


「うむ、心配していたが呆けていただけでは無いな。」

バトラはミチルとメイが楽しく会話していたのを見て、使徒としての役目を忘れていないか心配していた。


「では、役割を分担しましょう。

まず、ミチル様は先頭の1頭を群れから離して下さい。

侑様は群れから離した1頭をお願いします。

私とメイは残りの3頭を足止めしますから、ミチル様は私達に合流して下さい。

残った1頭は確実に逃げます、此れはテリトリーに戻り増援を呼びに行く為です。

侑様は、確実に仕留めて下さい。」

バトラはスムーズに事を運ぶ為、丁寧に説明した。


「宜しいですか?

殲滅迄のタイムリミットは15分。

シルバーウルフの皮は素材として人気ですので、傷を付けないように頭を狙って下さい。

タイムリミットを過ぎてしまったら、増援が来る可能性がありますので申し訳有りませんが、ミチル様に全てお願い致します。」

バトラは細かい指示を出し、更に安全に熟慮した。


「侑様に1頭渡したら、後は殲滅して良いのよね?」

ミチルの目の色が変わる。


…話、聞いてないし

本性は戦闘狂?

普段から、怒らせない方が良さそうだな…


侑はミチルの本性を垣間見た気がした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る