第7話

「あれ無いかな。」

侑は地下のラボに居た。

探しているのは鉄鉱石だ。

侑は三種のナイフを作ろうと思っていた。

一本はクリエイトで作った物。

一本はスキルで作った物。

一本は自分の手で鍛錬、成形を行った物。


この三本にどの様な違いが出るか。

鑑定眼を使えば、細かい違いも分かるだろう。

見た目の問題では無く、強度や攻撃力などの差が知りたかった。


まだ、鍛冶と錬金術に関してはスキルを獲得していないので現在作れるのは一本だけである。


部屋の片隅に木箱があり、中には鉄の混じった石が入っていた。


…多分、これが鉄鉱石だよな。

鑑定眼を発動し、石を鑑定した。

木箱の中の石は、鉄鉱石だけでは無く銀鉱石やミスリル鉱石などが入っていた。


侑は木箱の中から鉄鉱石を一つ取り出した。

それをテーブルに置き、ナイフのイメージを固める。

指輪をかざし、クリエイトを発動する。

鉄鉱石は吸い込まれ、魔法陣がテーブルに描かれた。

侑は魔法陣に手を入れ、ナイフを取り出した。


ここで侑は新たな疑問が浮かんだ。

…他の石で作ったら、性能に差が出るのかな?


バトラさんが来たら、手に入らないか聞いてみよう。

侑は作ったナイフをケースに入れて保管し、リビングへ向かった。


途中、キッチンでコップに水を汲みリビングのソファーに座った。

見渡すと、出窓でミチルが気持ち良さそうに寝ている。


侑は水を飲みながら、これからの事を考えた。

まずは、鍛冶について勉強しないと。

その後、錬金術だな。

知識とスキルを獲得したら、レベルを15まで上げないと。


で、一度ブラフマー様に会って聞きたい事を聞かなきゃ。

町に行くのはそれからだな。


侑が考え込んでいると、ミチルが肩に乗った。


「ミチル起きたの?」

「ブツブツ独り言が聞こえたから、目が醒めたの。」

ミチルは寝癖を嘴で直しながら、笑ってる。


「侑様?何か考え事をしていたみたいですが、お昼の献立ですか?」

ミチルは懲りずにボケた。


「ごめん、お腹空いた?」

やはり、侑はツッコんでくれなかった。


「お昼は簡単な物で良いよね?」

侑が聞くとミチルはふてくされながら、

「何でもいいですよ。」

と答えた。


キッチンに立った侑は周りを眺め、調理器具や調味料の位置を確認するとカバンからパンと肉の塊を出した。

パンを一つオーブンに入れて、カリカリに焼いた。

肉の塊を包丁で叩き始めると、塩・胡椒・ナツメグを加え焼いたパンを砕いて牛乳に浸して肉に混ぜた。


「ハンバーグですか?」

ミチルが侑に聞く。

「うん、パンに挟んでバーガーにしようかなって。」

侑は肉をこねながら答えた。


「私はマックよりモスのほうが好きだったので、野菜多めでお願いします。」

ミチルはまだ懲りずにボケようとしたみたいだが、侑からは違う言葉が返ってきた。


「ミチルはもしかして、日本に居たの?」

ミチルは藪を突付いた事に気づいた。


「居ましたよ、私は召喚獣に転生する前は使徒でしたから。」

「使徒は転生を繰り返し、人間界と神界を行ったり来たりするんです。」

「そして、得た知識を仕える神様に渡すのが役目です。」

ミチルは自分の情報を少し開示した。


「そっか、だからブラフマー様も日本に居た事が有ったんだね。」

侑は肉を焼きながら、ミチルの話を聞いていた。


「モス派なら、ケチャップよりミートソースの方が良いかな?」

侑はパンをオーブンで温めながら、ミチルに聞く。

「お任せします。」

ミチルはこれ以上、墓穴を掘りたくないらしい。


出来上がったバーガーを紙に包み、侑は天気が良いから庭で食べようとミチルを誘った。


ミチルは大事な事を思い出し、ちょっと待ってて下さいと寝室に向かった。


「朝はバタバタしていたので、渡しそびれました。」

ミチルが侑に渡したのは、丸い石だった。

「ティーターン様から頂いたスキルはパッシブらしく、朝起きたらお腹の下に有りました。」


侑はマジマジと石を見ている。

…水晶かな?でも、少し黄色が入ってる。シトリンかな。


侑は鑑定眼を発動した。

石の下に

黄水晶(シトリン)

魔晶石には向かない

アクセサリー等に使用

と表示された。


「シトリンだね、ミチル貰っていいの?」

「これから毎日、一粒ずつランダムですが産みますので侑様に貰って頂けると嬉しいです。

お庭でお昼にしましょう。」

ミチルは庭に飛んで行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る