第3話

中に入ると、白い部屋の中央にテーブルと椅子だけがあった。


この場所も色彩と音が存在しない空間に思える。

しかし、中央のテーブルには女性が座っていた。

その女性は銀髪で腰までありそうなロングヘアーだ。

細身の身体に一枚の白い布を巻き付けているように見えるドレスで此方を手招いている。

椅子に座るよう促され、女性は話し始めた。


「私の名前は創造の神ブラフマーと申します、転生の承諾ありがとうございます。」

メールを送った本人だった。


「すいません、大切な物を二つ持ってきてしまいました。」

俺は約束を破ってしまった事を謝った。


「大切な物を一つの意味はこれから向かう属性を調べるだけなので、実際は何個でも構いませんよ。

それに貴方は大切な物を標本1種類と数えましたが、厳密には中に49個の大切な物が入ってますよね。」

冗談ですと、いたずらにクスッと笑った。


「本来であれば鉱石を持ってきた貴方は地の神ティーターンの部屋へ行く筈でした。

ですが貴方はTに話しかけ、Tは貴方を気に入ったのでこの部屋に通したのでしょう」

俺は特例だと教えてくれた。


「貴方は何処からか来たのかと聞かれ、すごく遠い所からだよと答えました。

日本などの地名を使わず、彼が理解しやすい表現をした気遣いなどが彼にとっては嬉しかったのでしょう。」

Tが気に入った理由を教えてくれた。


「Tなどが認めた転生者のみがこの部屋に通されます。

この部屋に入った時点で貴方には創造神の加護が付与されます。

そしてこのあと地の神ティーターンの部屋に入ると地神の加護が付与されます。

本来、1つ付与される加護を貴方は2つ受けることになるのです。」

侑はわからない単語がたくさん並んで、戸惑いを隠せない。


「転生者自体は珍しくないですが、加護を2つ付与されている転生者はあまり居ません。

加護等については後で説明しますね。」

ブラフマーは侑の戸惑いを察した。


「あと、転生者になったから勇者になって魔王を倒してくださいなどの使命は有りません。

貴方がやりたい事、これから関わり合った人達から受けた心情で好きに動いて下さい。」

侑はラノベで読んだような、魔王を倒すとかのイベントが無くて安心した。


「それでは私からあなたには3つのスキルと召喚獣を差し上げます。

あと、貴方固有のスキルを差し上げますので考えておいてください。」

侑はまたわからない単語が出てきたと困惑する。


「スキルは、

全種族とモンスター、獣と話せるスキル(ランゲージ)。

スキルの名前と内容を学習すると習得できる(ラーニング)

見た物の名前などが判る様になる(鑑定眼)

です。」

ブラフマーは解きほぐす様に、優しく説明した。


「では、召喚獣を呼びますので名前を付けて下さい。

名前をつけた時点で貴方の召喚獣となります。」

ブラフマーは侑に微笑むと床に召喚魔法陣を描いた。

魔法陣が光り、中から1羽の青い鳥が姿を現した。


青い鳥は俺の肩に乗って名前を待っている。


「…ミチル。」

俺は青い鳥をミチルと名付けた。


俺は小さい時に母親からよく幸せの青い鳥の話を聴き、母親の名前の由来とも聞いていた。

なので、青い鳥を見たとき迷わずミチルに決めた。


名前を貰ったミチルは肩からテーブルに降り

こちらを向きかしこまった。


「ご主人様、素敵な名前をありがとうございます。宜しくお願い致します。」

ミチルはぎこちなく挨拶をした。


「私はしばらくの間席を離れますので、固有スキルを考えてて下さい。

魔法陣を作っておきますので、食べ物や飲み物は魔法陣に手をかざしイメージして下さい。

あなたの世界の食品を出せます。」

ブラフマーは侑に落ち着く為の時間と気持ちの整理をする時間を作った。


「では、また後で。」

ブラフマーは部屋から消えた。

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