ストーカー・パンデミック
世淮ひとみ
繭墨葵視点
prologue ハッピーな日々の終わり
「連続通り魔殺人事件、ねぇ」
他人事の様に呟いてはみるが、やっぱり他人事には思えない。
僕は一人、アパートの一室でコンビニで買った新聞を読んでいる。
デカデカと一面に書かれたその記事に吸い寄せられる様にして買ったのだった。
ここ数週間で三人もの人間が道すがら殺されるという事件が、ここ近衛市で起きている。それはクラスメイトの雑談で知っていたが、僕の家にはテレビもPCも無いので、その事件の重大さがあまり理解出来ないでいた。
「こうも全国紙で取り上げられてるのを見ると……流石に無視出来ないよな」
殺された人達の氏名を眺めながら、僕はそう呟いた。
『やっと動くんですか?』
僕の独り言に反応し、部屋の何処から女の声が響いた。それは肉声ではなく、どこかに設置されたスピーカーからのものだ。
「まあな、この事件、僕が生きてる限り終わらなそうだ」と、その音声に対して返答した。
『私が突き止めましょうか? この事件の犯人』
「君が犯人だったら話が早くて助かるんだけどな」
『私じゃないですよ。ずっと貴方の事、カメラと集音器で監視してるんですから。そんな馬鹿げた事してる暇ありません』
そう。この女──御白井華に僕は二十四時間監視されている。僕のこの自宅のワンルームには無数に監視カメラが設置されており、盗聴もされている。その行為こそが馬鹿げてると僕は言いたい。
「なあ、ゲームやめない?」
『最早、これはゲームでは済まないですよ。人が三人も殺されてるのですからね』
それに、と彼女は続ける。
『皆さん、途中から遊びではなく貴方を本気で愛していますよ。良かったですね』
くくく、と笑いを押し殺す彼女。
「はあ……まさかこんな事になるとは思わないだろ」
『ですねーこんな事始めなければ良かったですねー』
「なら今すぐにでも君がやめろよ」
『それは駄目です。でも……そろそろ本当に動いた方が良いかも知れないですね。もう面倒だとか言ってる場合ではないですよ』
「ああ──そうだな」
僕は天井を見上げて、独り言を呟いた。
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