お互いの秘密

 夫婦になったからといって、全てを知っているわけではない。

 私には彼に話していない事もあるし、彼だってそうだろう。

 しかし、それを無理に聞くつもりはない。

 それがお互いの為だと思ったし、無理に聞いて嫌われたくはなかった。


 今は聞かなかった事を、後悔している。

『探さないでくれ』

 たったそれだけ書いた手紙を置いて、私の元から彼は消えた。

 何の手掛かりも無く、生きているのかさえも分からない。

 どうしても好きだから、私は彼の部屋を探す事にした。

 何かの手がかりか彼の秘密が出てくれば、嬉しいのだけれど。


 探し始めて数十分。

 全く彼についての情報が出て来ない事に、私は焦りを覚えた。

 結婚生活は決して短いものでは無かったのに、部屋には彼に関するものがほとんどない。

 一体、どうして。

 私は部屋の真ん中で、一人呆然としていた。

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