第404話 ダイヤモンド

「ミノウ、ということは、ここで起きた不思議現象はみな」

「きっとそうヨ。ハルミの識の回復魔法が原油に作用するには、このゼンシンのドリルが必須だったのヨ」


「だから砂化した道が、原油池の底にあったドリルのあるところまで一直線に伸びたわけだな。やはり触媒作用か」

「そうだと思うヨ。ただ、そこでドラゴンが発生した理由までは分からんヨ」

「それは俺にも分からん。だが、試してみることはできる。おい、ハルミ」


「きゃっきゃっ。そんなに抱きつかないでよ、ふいんきってばあ、もう」

「ママん、ママん。会いたかったのん。すりすりすり、ペロペロ」

「こ、こら。なめるな。お前は犬かぁ、あははは」

「犬とはなんなん? ペロペロ」


「いちゃいちゃすんなぁぁ!!!」

「「わぁ、びっくりした」」

「男の嫉妬はみっともないノきゅぅぅ」


「うるせぇ! ハルミ、そのしっぽは取れそうか」

「む、むり無理ムリ。これはこの子の一部だもの。そんな酷いことできない」

「しっぽはそっと触るのが吉なのん」


「知らねぇよ! 生まれたばかりのくせして、おかしな知識だけはあるんだな」

「ね、ねえ。ゼンシンには私からきちんと説明して許可をもらうから、この子のしっぽを取り上げたりしないで!」

「それがいいナ」


「デブルフまで混ざるなよ。まあ、無理だろうとは思ってたが。そうするともう実験ができない……あっ」

「どうしたヨ?」

「魔鉄があれば、試験はできるんだよな」

「そりゃそうヨ。あとハルミの識の魔……できないと思うヨ」


「誤魔化すんじゃねぇよ! お前の持ってる刀を出せ」

「だ。だめ、だめヨ。これはスクナを守るのに必要な」

「いままでちゃんばら以外に使ったことないだろうが、出せっての」

「だめだってヨ。これは大切な……あ、そうだ。我はスクナの眷属ヨ。お主に命令される」


「スクナ、こいつの刀をちょっと借りるぞ」

「うん、いいよ」

「ふぁぁぁぁぁぁ!!? ヨヨヨヨッ」


「1本じゃ数がこなせないから、オウミ」

「わ、我は、ちょっとその、あの辺に、ちょっと用事が」

「いいから出せ」

「きゅぅぅ」


「あとはここに奴を呼んで。ほにゃらかほい(魔回線ネットワークへのアクセス呪文である)。こちらシキミユウ。至急依頼したい試験がある、こっちに来てくれ。きょにゅうもえ」

「あら、ユウさん、そんな急に言われてもこっちもいろいろと段取りがあるのよ」

「めっさ面白いことになってるんだ。ダイヤモンドとか取り放題だぞ」

「すぐに行く ギャル」


 あいつのIDはギャルだったのか。イメージ通り……っていうか、いまのスクナとお似合いだな。


「ちょ、ちょっとちょっと、ユウさん。いまものすごく聞き捨てならない言葉が聞こえたのだけど!?」

「す、すまん。スクナのは原宿ギャルのファッションだったな」

「そんなことじゃないの!!」

「なんだ、どうした?!」


「「「ダイヤモンドってどういうことよ!?」」」


 スクナ、ユウコ、ハタ坊のツッコみである。女の子が宝石に弱いのはどの世界でも共通なのだと、認識を新たにしたのであった。


「も、もういから。分かったからなめるのはやめてってば、ふいんきあはは」

「僕はママんから生まれたのん。あの魔法がなければここにいないのんぺろぺろ」


 ひとりだけ例外がいるけれど。



 ここで突然、話は399話の続きに戻るのである。


「また急な場面転換なノだ!?」

「慣れろよ」


「膨大な設備投資が必要なことを、ここでやってくれるでござるか?」

「技術は俺(ミノウ)が提供しよう。金はキタカゼの担当だ」

「ちょっと待つの。その膨大とはどのくらいの費用なの?」


「ざっくりで言えば1億ぐらい……」

「「「ひょぇぇぇぇぇぇ」」」


「それは手が出ないで、足が出るの」

「うまいこと言ったつもりか。そのぐらいの金あるだろ?」

「カンサイ商人の定番ネタなの。それはキタカゼ家の屋台骨をも揺るがす金額なの。シキ研が出せば良いの」


「待ちなさいよ。それはおかしいでしょ。シキ研は石油精製という新技術開発を請け負ったのよ。設備投資はこちらの領分でありません」

「でも、設備がなければシキ研も研究ができないの。研究がてら設備を作れば良いの」


「もちろん試験はこちらでやる。だが、それは実験室レベルの話だ。それを量産できる施設にするのは、キタカゼの仕事だ」

「うぅむ。拙者には良く分からんでござるが、まずはその試験がうまくいったら、もう一度話し合うということで」


「「それはだめよなの!!」」


「資金が出せないのなら、この話は最初からなしにします」

「仕事を受けるといった以上はそちらに責任があるの」

「有限責任です。資金提出は受けた仕事の範疇に入っていません」

「研究開発をする以上は資金が必要なのはあぁだこうだ」

「ごにゃごちゃごちゃ、だからそれは、こうでああでそうで」


 こういうことは最初にきっちり話を付けておく必要があるのだそうだ。こうなると、俺もカイもつまはじき状態である。


「交渉はこいつらに任せて、俺たちはのんびりするとしよう。おい、オウミ、もう起きただろ。お茶とポテチを出せ」

「ほいノだ。まだちょっとくらくらするが、大丈夫なノだ。でもポテチは残り少ないから少しずつなノだ」

「細かいこと言うなって。ポリポリ。ほれ、カイも食べてくれ」

「馳走になるでござる。これは不思議な食べ物でござるな……おおっ。うまい!!」


「どんなもんだいノだ」

「オウミが威張るとこかよ。良かったらこれ、1袋50円で売ってやるけど」

「うっ。それは魅力的だが高すぎるでござる。こちらでは50円あれば新巻鮭が10匹買えるでござる」

「そうか。ポテチはここでは商売になりそうにないな」


「それより拙者は燃料になるものが欲しいでござるばりばりばり」

「自分のことよりそっちに気持ちが行くんだな。良い領主さんだ。オウミとミノウ」

「「なんなノだヨ?」」


「お前らはちょっと原油の現場に行って、もっと増産が可能かどうか探ってくれ」

「なにをまさぐるノだ?」


「まさぐるんじゃねぇよ。ってお前らじゃ無理か。油田の現状をゼンシンに説明して、なにか良い手がないか考えてもらえ」

「今回はユウはしないノか?」

「俺はちょっとここで一休みする、ずずず」


「なんかずるいヨ」

「あ、ミノウのポテチも置いてけよ」


「しまったヨ。余計なひと言で我のポテチ在庫を減らしてしまったヨ」

「ぶつくさ言ってないで、さっさと行ってこい!」

「「ほ~いノだヨ」」


 そして393話に繋がるのである。


「これで、繋がったことになるノか?」

「かなり強引だヨ。無理矢理ヨ」

「いいから行ってこい!!!」


「「ほいさっさーーノだヨ!!」」

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