第36話 魔王だと?!

「とうわけで、そういうことだ」


「なにがどういうことなの。何も説明してもらってないわよ!」

「言ったじゃないか、こいつはオウミ。今日から俺の眷属だって」


「確かに、それは聞きました」

「だろ? それで良いじゃないか」


 アチラとミヨシが目を合わせて、良いんだろうか? という表情をしている。良いに決まっている。さぁ、紹介も済んだ。


「そんなことより、晩飯を食おうぜ!」


 おーー。とこういう時だけは意見が一致する若者って単純だ。あ、俺もか。ところで


「オウミは食事ってするのか?」

「も、もちろんだとも! それはお主の義務だぞ」


 じぃー。

「な、なんだ。義務だと言っておるノだ」


 じぃーーーーーー。

「な、なんで疑うのだ。そ、それは事実」


 じぃーーーーーーーーーー。

「分かった、分かったノだ。義務ではない。食べさせて下さい、お願いします」


「最初にそう言えば良いんだよ。今後気をつけろ」

「は、ハイなノだ」


「「ドキドキ、ハラハラ、ドキドキ、ヒヤヒヤ、ハラハラ」」


「こら、そこのふたり。なにをドキハラヒヤハラしてんだ」

「だって、そんな言い方、魔王様に向かって」


 ああ、面倒くさい奴らだ。そんな魔王ぐらいで……え? 魔王?


「いや、こいつは女神だぞ? お前らなにを勘違いして」

「ユウさん!! その方は魔王ですよ!! それもミノウ様と仲の悪い妹君で、怒らせたらニホン中の水を枯らしてしまうほどの力があるお方です」


「まさか、まさかユウ、今まで知らなかったなんてことは、ないよね?」


 いや、待てよ。どういうことだ。確かにこいつは女神って自己紹介したよな?


「したよな?」

「お、おう」

「あれは、ウソだったのか? 本当は魔王なのか」

「いや、それはだな、つい、なんというか。いろいろあるノだ」


「なんだよ、いろいろって!!」

「だって」

「その先を早く言え!!」


「は、はいなノだ。言うノだ。だからそんなに怒るな」


 オウミは (´・ω・`) とこんな顔になった。とても可愛い。


「分かった、怒らないから理由と事実を話してみろ」

「だって、だって」

「ふむふむ」


「魔王って言うと」

「ふむふむ」

「誰も友達になってくれないもん」


 …………


「オ。オウミ様……。あの、私たちで良ければ、お友達になります。ずっと、ずっとここで暮らしていただいてかまいませんよ」


 涙を堪えながらのミヨシの言葉である。釣られてアチラも涙声でこう言った。


「僕だって、僕だって友達にぐらいなります。仲良くしましょう」


 単純な人たちだこと。


「じゃあ、そういうわけだ。よろしくやってくれ。さぁ、飯だ!」

「待った待った。お主からはなにか言葉はないのノか?!」

「え? 魔王だって飯を食うだろ?」


「ユウ。そういうことじゃ、ないと思うよ」

「そ、そうか。じゃあ、魚は好きか?」


「そういうことでもな……もういいわ。オウミ様、ユウはこういう人間です。嫌になったらいつでも私が交代しますから」


「ミヨシと言ったな。契約だからそれはできぬが、お主のような子がいて助かるノだ。我にはこやつの感覚がさっぱり分からぬ。クールというか、論理的というか」


 俺にだってお前が分からんけどな。


「無神経というか、傲慢というか。自分も小さいくせに我を小動物扱いするし、自分勝手でご都合主義で態度も口も悪く、性格はどSで歪んでてそのくせエロ好きできゅぅぅぅ」


 ちょいと羽根をつまんでやった。


「ちょっと待てい。途中から俺の悪口になってんじゃねぇか。お前らも頷いて聞いてんじゃねぇよ」


 そんなわけでオウミをつまんだままで食堂に入ると、そこには先に来ていたハルミがいた。そしてオウミを見て、


 え? は? ほ? へ?


 またそこからやるのか……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る