第103話魔戦武闘会④
早速嫁達を迎えに行こうと宿に歩を進めつつも宿に居るんだよな? と『ソナー』と唱えた。
すると、祭壇のダンジョンに赤点が一つ向っていくのが見えた。
宿の方にも赤点が一つ。近くにリアの緑点もあるから嫁は宿の方に居るのだろう。
ダンジョンの方が気になってそっちに足を向けた。
ダイチ君に大佐が狙ってくるであろう件をまだ伝えて居ない。
彼が負ける事はないだろうが、伝えないで兵士達を危険に晒すのは宜しくない。
アリアちゃんが怪我でもしようものならガチ切れされてもおかしくない。
俺ならば怒る。知ってんなら言えよと。
幸いダンジョンからでも宿に赤点が向えば『ソナー』でわかるしと、走って現地へと急行した。
とはいえ、それがダイチ君とアリアちゃんの恋の始まりになるかもしれないし、『隠密』セットを使って様子を見つつ、危険なら助太刀するか。
とたどり着いてみれば、丁度接触した所らしい。
見てみれば、また黒髪の少年だ。
これは来て良かったな。出番があるかもしれん。
まあ、不意打ちで倒した方が楽だし、このままどうなるか見てみよう。
「おい、この中にアリアって女は居るか?」
少年はだるそうに見下した視線を向けながら兵士達へと問い掛けた。
「私がそうですが、貴方は?」
「ほう。まあ悪くはないな。
喜べ、お前を俺の女にしてやる。俺が飽きるまで、だがな」
「はい? 貴方は誰ですかと尋ねたのですが……?」
おおう。アリアちゃんも負けてないぞ。
頭大丈夫? 言葉通じてます? くらいの対応だ。
そこで颯爽とダイチ君が前に出てきた。
「いきなり何ですか貴方は。失礼にも程がある。
言っておくけど、何一つ手出しはさせないよ。アリアさんは僕が守る」
おお! カッコいいね。
アリアちゃんの反応は……あー、クエスチョンマークが出てる感じだな。
不快そうには見えないけど、何故そこまでしてくれるの的な顔してる。
それより問題はこの明らかに性格悪そうな男の強さが如何ほどか、だな。
まだ祭壇で召還している魔物も雑魚だし、別れる前につけた防御バフは切れてないだろう。
いの一番にダイチ君と当たるなら取り合えずはこのまま見ててもいいか。
「黒髪にその物言いを見るに、お前がランスロットだな?」
「いや誰だよ。僕はランスロットじゃないよ。
キミみたいな失礼な奴に名乗る名はないけどね」
っ!? 止めて! アリアちゃんバラさないでね?
と思っていたら、様子を伺っていたシャーロットちゃんが口を開いた。
「総大将閣下の知り合いなのですか?」
ぬぉぉ! 止めてくださいシャーロットさん!
って、そりゃそうだよな。争う前に友好関係にあるかどうかくらいは聞くよな。
「お前は馬鹿か? 知らないから聞いてんだよ。殺すリストには入っているけどな。
お前たちも死にたくなければ歯向かわぬ事だ。俺はそこまで温くない」
うわぁ。やっぱりこういう奴も居るよな。思った通り面倒だ。
キナ臭い話しになっている事に気が付いた兵士達は魔物の召還を止めて臨戦態勢に入った。
「おい、俺は言ったぞ。死にたくなくば歯向かうなと」
そう言って武器を向けた兵士達に手刀で『飛翔閃』を放った。何故かポージングも決めている。彼は手を横に払った動作のまま動きを止め目を細めた。
ダイチ君が反応し『瞬動』で『飛翔閃』の刃に追い付くと剣戟で跳ね上げて無効化させた。
「これでもう開戦だね。僕が相手をするから、皆は見てて」
「ちっ、雑魚が調子に乗りやがって!」
襲撃者の男はギリっと歯噛みし表情を険しくさせると背から刀の様な剣を抜いて腰を落とした。
片手で上段に構え腕で片目を隠し、またもポージングの様に決めた。
こいつ、何なの? やばくね?
普通、ガチの殺し合いでやるか?
いや、アキホもその気があるけども……
俺が驚愕している間に二人は動き出した。お互いに『瞬動』で死角に入ろうと飛び回り隙を伺う。
回り合うだけで一向に斬撃は出さない。それは正しい。上手い事『パリィ』で弾かれた日には『パワースラッシュ』で首を落とされても不思議はない。
お互いに『飛翔閃』で牽制しあいながらもダメージを与えられず、距離を取った。
「中々やるな。お前、もしかして召還された日本人か?」
「何を言っているかわからないが、引かないなら切るよ。
僕は手加減とか苦手だし、アリアさんを守る為なら本気で殺す」
「吼えるじゃねぇか。いいぜ? その女は勝った方のもんって事だろ?」
「黙れ! アリアさんは物じゃない!!」
激怒したダイチ君が『飛翔閃』を乱打する。不意打ちでもなんでもない正面からの攻撃だ。余裕であざ笑いながら避けつつも言葉を返す。
「しょせんは強いものが全部持ってく世界だろ。
そのくらいの強さを持ってりゃお前だってわかってるはずだぜ?」
「違う! クズが力を振りかざして好き勝手やっているだけの話しだ!
そんな事を望まない奴らだって居るんだよ!」
「ハッ!! 楽しいのかよ! それで!!」
楽しいよ? 俺はめっちゃ幸せだ。
「ああ。キミは外見が良くなっても、心根が悪いから受け入れて貰える相手が居なかったんだね。
ふっ、可哀そうに……」
その嘲笑を受けた彼は耐え切れず動いた。
きっと思い当たる節があったのだろう。
げきおこぷんぷん丸だ。
良くやった! ナイス口撃!
と思ったのだが、彼は『飛翔閃』で兵士達を狙った。
それを追いかけて撃ち落とすが、当然の様に彼はその隙を狙って切りつけた。
『シールド』は割れなかったが、斬撃に弾かれて態勢を崩すダイチ君。
これはいかんなと、俺は彼の真近かで『隠密』を解除して姿を現す。
いきなりの出現に脅いて後ろに下がったのを確認しつつ俺も後ろに下がり、ダイチ君に声を掛けた。
「ダイチ君、後ろは俺が守る。存分にやっていいよ」
「――っ!! ケンヤさん! 助かりますっ!」
態勢を立て直したダイチ君は即座に構えなおして距離を詰めた。
「だ、誰だてめぇ!」
「お前が名乗れば名乗るけど?」
「そういう事言ってんじゃねぇ! 何邪魔してくれやがってんだ!」
「ははは、なに? 試合でもしてるつもりなの?」
煽り耐性が低そうなのでニヤニヤと小馬鹿にする様に告げた。
「ちっ! 良いだろう。ここは引いてやる。
次は大会で叩きのめす。精々震えているがいい!」
「いやいや、逃がすと思っているのかい? アリアさんを狙ってキミを?
ふざけるのも大概にしろよ!」
とダイチ君は彼を逃がさない様にと出口を塞ぐ様に立った。
おおう。ダイチ君がキレてる。まあ、当然か。
「ハッ! あいつは守りで動けないのにそこに立っただけで封じたつもりか?」
「『ストーンウォール』さあ、障害物が追加された。
果たして強姦志望の男は逃げ切れるでしょうか!?」
俺は動けなくても妨害は出来る事を教えてあげる為に、出口を塞いでみた。
「馬鹿ばっかりだぜ。この程度が足止めになるってのか? 『飛翔閃』」
「『ストーンウォール』」
「……」
「どした?」
彼は腹立たしげにこちらを睨んだ。
うむ。こっちに来ても構わんのだよ?
と、煽りに煽っている状況を利用してダイチ君が『瞬動』で動いた。
死角から切りかかり「僕から目を離すなんていい度胸だな」と回避不能になったであろうラインで声を掛けた。
彼はギリギリの所で反応し剣を振り上げた。
「な、舐めるなぁぁぁ。『パリィ』っ!?」
それすらもフェイントだった様で、彼は刀を振り上げた状態で固まった。
ダイチ君は一切の容赦なく、剣を振り下ろした。通常攻撃だが、もろに決まり吹き飛ばされ、俺が『ストーンウォール』で作った壁に激突する。
だが、倒れる事はなかった。傷を負ってすらいない。
彼も支援を持っていて『シールド』を付けて居るのだろう。
「ハッ! なんだよこの程度か。『エクスプロージョン』」
彼はこの程度かと言って置きながら、『エクスプロージョン』を乱発して、兵士達と通路を塞いだ壁を攻撃してそのまま逃げ去った。
当然、防御バフを全員に付けて居るので無事だ。とはいえ、人数が多すぎるので少し焦りながら掛けなおしをしていたのでそのまま逃がしてしまった。
「えー、あの口上で逃げるんだ……」
俺は思わず呟いた。
「すみません。あれはここで仕留めておくべきでしたよね」
「いや、大丈夫。『ソナー』で補足出来るから。
それよりごめんな。あれが来たの、俺の所為だわ。
大佐が差し向けて来た刺客だろうから」
アリアちゃん達には大佐と敵対した事を伝えてあったが、ダイチ君は初耳だ。その事を説明して謝罪した。
「それは良いですけど『ソナー』って何ですか?」
「いやいや、忘れちゃってる?
最初の頃はマップに赤点映すのに『ソナー』が必要だったじゃん?
それ使えば魔物と敵と認識された相手は赤点で移るよ」
「え? ああ、そんな時代があったって聞いた事はありますけど……
ソナー……うーん、僕には使えそうにありませんね。羨ましい」
あっ、そっか。『ソナー』は途中で自動化されて消えたから、それを知らない人も居るのか。
けど、それは不便過ぎだろ。どうにかならないかな?
無理か。これは皆覚えられなかったし付与もできなかったしな。
「どうする? こっちでやっとく?
って言っても出来るだけ殺しはやらないからどう対処するか迷う所だけど……」
「いえ、僕がやりますよ。アリアさんを狙う奴は絶対に許さない」
ふむ。汚れ仕事だけ頼むみたいで気が引けるが、そういう事なら任せようか。
「あ、あのう……どうしてそこまでしてくれるのですか……?」
アリアちゃんは少しもじもじしながらもダイチ君に問い掛けた。
「え。あ、いや……その……」
と、彼も少しモジモジして上手く言葉を返せない。
おおう。ラブコメしてやがる。
早々に退散しよう。何か、言っておくことは他にないかな……
「あ、そうだ。
あの感じだと大会で決着になるだろうから、大会出る面子だけでパーティー組んでガリガリ上げとけば? あいつ支援持ちだろうから、大差付けないと『シールド』突破出来ないっしょ?」
「そうですね」
出る人何人くらいになるのだろうかと尋ねてみれば、大半は二人の戦いを見て遠慮する事に決めた様だ。
彼らとしては、隊のメンバーが上位に食い込んでくれればそれで良いらしい。
ならば、狙われているアリアちゃんとダイチ君の二人を中心に上げると話が纏まった。
その時俺は思い出した。ダイチ君に魔法覚えて貰えば安全じゃないかと。
「そうだ。ダイチ君も魔法覚えとこ?」
「いや、僕も前回学校通って頑張ったんですが、あの詠唱は無理でした……」
ああ、そうか。物理特化だから無詠唱持ってないのか。
そう考えると錬金術師は更に重要度が増したな。育てておいて良かった。
「えーと、無詠唱そのブレスレットに付いてるからね?
イメージがしっかり出来てる奴は魔力を出すだけで使えるよ。
何故か、イメージがしっかりしてても人に寄って使えないものもあるけど。
『ソナー』とかクリエイトシリーズとかね。ああ、何故かスキルにも有効だから」
「ええ!? って何でそんなに詳しいんですか!?」
「いや、嫁と一緒に帝国の魔法学校通いたくてさ――――」
経緯を説明して暫し雑談を交わし、ダイチ君に試してもらえば、彼は魔法を見せなくても大半が使える様になった。
「うわぁ……あんなに苦労した上に諦めさせられた魔法が……」
と嬉しいんだか悲しいんだか分からない表情を浮かべたダイチ君と別れて宿へと向った。
自分が寝る時に兵士達を守って欲しいと頼まれ事をしたので連絡が付く様にと住居の場所も教えた。
嫁達と合流してホテルの様な住居へと移動すると、彼女達もその大きさに圧倒されていた。
一部屋一部屋が広く、それでも使用人たち全員に個室を与えられるほどなのだ。
リビングルームもとても広く綺麗な作りになっている。
と言っても、豪勢な方向ではない。
白をベースにした簡素だがクリーンな方向の綺麗な部屋だ。
「――とまあ、離れている間にそんなことがあった訳だ」
いつもの様に、離れている間の情報共有をしながらの雑談を始める。
「ランスは、本当に何処に行っても問題に巻き込まれるね。それは才能の域」
いやいや、そんな才能嬉しくないよ?
「……その才能のお陰でご主人様と出会えた。とってもいい才能」
うーん……まあ、そう言われればそうかもね。
ってモンテが喋ってるの久々だな。遠慮してたの?
あ、あの時怒った所を見てから怖かったのか……
ごめんな。おいで!
「モンテねぇずるい!」
と、ララたち三人も飛びついて来たのを受け止めて話を続ける。
「そんな訳で、召還者で一人頭のおかしいのが居たから警戒が必要だな。
ただ、今回はそこまでピンチじゃないと思う。『ソナー』で居場所が割れてるし、一応大会で潰すって宣言もしてきたしな」
「カミノさんを殺すって、知らないからってピエロ過ぎるよね」
「そうですね。ご主人様……ケンヤさんに敵うはずがありません」
え? ユミル、何で言い直したの?
何? 使用人とかそう呼ぶ人が多いから? 自分だけの呼び方が欲しいから?
だから仕方あるまいなんです?
ぐぬぬ。
「全く、いつも通り緊迫感ないねぇ。
いや、それが一番か。ランスさんが慌てた時は大抵世界崩壊の危機だからね」
いやいや、俺、結構それ以外でも慌ててるよ?
ユミルが死の谷行った時とか……
え? もう言わないで下さい? ご主人様呼びやめたからやですー!
「けど、大丈夫なのかよ?
そのダイチって奴は良いにしても、アリアって奴は弱いんだろ?
先にその頭のおかしい奴と当たっちまったらやばいんじゃないか?」
カーチェの懸念はもっともだろう。だが、アリアちゃんに関しては俺が率先して守るのは拙い。ダイチ君が守り抜いて上手くやって欲しい所なのだ。
折角仲良く慣れそうなんだし。
「あー、そこら辺はダイチ君に任せるよ。
彼の彼女だった人なんだし、俺があれこれ手を回さなくても良くない?」
「その通りなのだ! ランスさまはいつもやってあげすぎなのだ!」
えー? でもそれだとアンジェも色々して貰えなかったんだぞ?
私はいいのだ?
そうか……
そんないつも通りの時間が流れていき、夕食の時間を迎えた。
メイドや執事が全部準備してくれるらしいので待っていれば、とても豪華な食事が出て皆逆に恐縮していた。
そう。御貴族様が食べるかの様にナイフやフォークを並べられて、作法力が試されている状態に陥った。
エリーゼ、エミリー、ミラ、ディア、ミレイ辺りは慣れた様子で食べ始めたが、他の面子は大半がキョロキョロと周りを伺っている。
俺も良く分からないし、適当でいいと手本を見せるようにフォークでぶっさしてお肉にパク付いて、全員の食事が始まった。
とてもいい住まいだ。一つ難点を挙げるとするならば、大浴場が無い事だ。
全部屋に備え付けになっているのだが、それでは皆でお風呂が出来ないのだ。
いや、もう一つあるな。巨大ベットが無い事もだ。
これは買ってくれば良いだけなのでどうでもいい。問題はお風呂だ。
何で無いんだよ……この大きさの住まいなら普通あるだろ?
風呂も作っちまうか? けど、これって借家なの? 貰ったの?
うーん……こんなに豪華な家だし、流石に貸してくれているんだろうな。
念のため今はやめておくか。
そんな考え事をしている時だった。
「ねぇ、カミノさん。私、危険を承知で大会出たいんだけどダメかな?」
ディアが結構真剣な表情で問い掛けるが流石にすんなり頷ける話じゃない。
「えー」と不満全開の顔でディアを見返す。
「お願いっ! ねぇ? いいでしょ?」
うーん……かなり本気の様子。ダメだと言いたい。言いたいけど……
ここまで本気でやりたいって言ってる事を却下するってものなぁ……
「むう、危ないと思ったら失格になっても割って入るよ?
多分そうなったら悔しいしブーイングも受けるよ?」
「え? うん! いいよいいよ! そんな状況に陥る自分が悪いんだし」
「ちょっと待ってくれないかい。それだったら私も出たいんだが?」
まあ、ラーサもそうだわな。ユミルは……と、目を向ければ彼女はそこまでして出たい訳でもないらしいが出ていいなら出ると言っている。
人との戦いより魔物との戦闘をしたい様だ。
「うーん。仕方ない。もう自分達でも強度の高い『シールド』張れるしな。
ただ、さっきも言ったけど、俺の判断で割って入るからな」
「わーいっ! 大好きっ!」
えへへと顔を緩ませて抱きついてくるディア。潰されたララが「うぎゅ」と声を上げた。
ラーサもこうしてくれて良いんだけど、やはり人前ではやらないらしい。
「じゃあ出るのはお姉ちゃんとラーサお姉ちゃんとディアお姉ちゃんとお兄さんか。
お兄さんは結果がわかっちゃってるけど、三人の試合は見物だね」
ちょっと、ユーカさん? 俺の試合は勝ちが決まってるみたいなの止めて?
俺だって、ちゃんと戦うんだからね?
って、待てよ。俺、そこまでレベリングしてねぇぞ!?
二度もレベルさげられて感覚的に強いつもりで居たけど……
やばい!!
「ちょっと待った! 考えてみたらさ。俺、レベル下げられたばかりじゃん!」
「え? 祭壇の間で上げたんじゃないの?」
「いやいや、兵士達にずっと使わせてたし、あれから上げてないよ?」
「え!? じゃあ、今なら一本取れるかも?」
「ランスさん、手合わせ願おうか」
「ケンヤさん、私もお願いします」
おいおい、ユミルまで……お前ら、俺をそんなに苛めたいのか?
ならばいいだろう。受けて立ってやる!
「いいだろう。掛かって来い!
だが、俺が勝ったら精力剤飲んで集中攻撃の刑だからな!」
「「「えっ?」」」
ふん、世の中はそんなに甘くないのだ。対価と言うものがいるのだよ!
「……迷う所だね。一度くらい取りたいんだけど」
「わ、私はやるわ! 一度でも一本取れれば生涯の自慢になるもの!」
「私もそう思いますけど……けど……や、止めておきます」
「ユ、ユミルも下りるのかい? じゃあ、私も止めて置くよ。
二人だけであんな事された日には息の根が止まっちまうよ」
「えっ!? ……さ、三人でやろう?」
ディアも勢いが無くなった。
「皆、ランスの言い分に飲まれすぎ。
手合わせして貰うだけで精力剤は割が合わない」
「おーい! ミラさん? 俺の味方して!」
ミラはじっと目を合わせた後、少し考えてからプイっと顔を背けた。なぜだ。
あっ、自分も混ざろうか迷ってたのね……
「そう言えば、アキホお姉ちゃんそろそろ戻って来てもいい頃じゃない?
ここわかるのかな?」
おお、ユーカナイスアシスト。
だが、大丈夫だ。あいつも『ソナー』使えるから赤点で……
あっ……大佐が仕向けた刺客、アキホが『ソナー』使っても同様に反応するかも。
そうなると、カーチェやリアの反応を見極められないんじゃないか?
「アキホとのパーティ解散した?」
「ううん、してないよぉ」
「ああ、なら大丈夫だ。パーティメンバーは『ソナー』で感知出来るから」
あー、良かった。アキホが敵の所に行っちまう所だった……いや、あいつの強さなら問題ないか?
と言うかマジでレベリングしたい。あ、兵士を見に行くとき使わせてもらおう。
うん。半日くらい譲ってもらっても良いだろ。
そんな事を考えていたら、無事にアキホたちが此処にたどり着いた。
人が居なくなった屋敷の方は忍びっ子が見ててくれるらしい。
何か急用があれば、こっちに報告に来てくれるそうだ。
割と物資を溜め込んであるし、ありがたいな。
ペトラたちに俺が居ない間は大丈夫だったかと尋ねれば、ガイールが何度か尋ねてきただけで特に問題無かった様だ。
きっとレラがこっちに向った件だろう。
そう結論付けて皆に部屋を割り振ったりしていれば、もういい時間になってしまった。
俺は精力剤を握り締めた。そして、皆にチラチラと視線を送る。
一人一人目を逸らした。いや、アキホは見つめ返してくれたのだが。
何故だ。何故皆目を逸らす……
「ランスさまぁ、私が居るのだ!」
と、アンジェが名乗りをあげると、アキホとロリ勢が一斉に詰め寄ってきた。
使用人たちからも参加者が出てきている。と言うか前回より増えた。
うむ。これもまた素晴らしい。
さて、今日も夢の世界へと旅立とうか。
そうして、今日一日が終わりを迎えた。
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