魔法少女、冒険します
@Hukase_m
プロローグ
月夜に照らされ、その少女は姿を現した。
白いローブのような服を纏い、両手に自分の背丈以上に大きい杖を握るその姿は魔法少女と言ったところだろうか。
「観念しなさい、化け物!。このイズハ様が成敗してあげるわ!」
悲鳴が飛び交う街に、少女の声が響き渡る。
だが、その声を真に受けている者は居なかった。皆がその場から一目散に逃げ出そうと、辺りは騒然としている。
それも当然だった。
その怪物・・・、ファンタジー映画にでも出てきそうな小柄なゴブリン数匹が、コンビニエンスストアの内外で暴れ狂っているからである。
おぞましい外見の怪物は、店のありとあらゆる物を破壊し、それを楽しんでいる様子だった。
魔法少女はコンビニの敷地に歩み寄ると、華奢な体とは裏腹に、重量のありそうな杖を両手でしっかりと握りしめる。
「えっと、全部で・・・6匹ってとこね」
目視で確認する限り、外に2匹、店の中に4匹いる。こちらには気が付いていないようで、声を荒げながら手に持った棍棒らしき物を振り回している。
「こっちよ、掛かってきなさい!」
魔法少女の声に対し、1匹のゴブリンが反応した。
ゴブリンはニヤリと笑うと魔法少女に向かって飛び掛った。
いびつな棍棒が目前に迫った時、魔法少女は杖をゴブリンの腹を目掛けて突き出す。
「遅いわね!」
ゴブリンの攻撃よりも先に、魔法少女の攻撃が繰り出された。
そのひと突きにより、ゴブリンは大きく吹き飛び、コンビニの窓ガラスに体を打ち付け、絶命する。
その音をゴブリン達は聞きつけ、店内に居た奴らも鳴き声を上げながら姿を現した。
「これ以上暴れさせないんだからね!」
今度は魔法少女が先手を取った。ひらりと宙を舞うと、1匹のゴブリンに杖を振り下ろし、頭部に強烈な1撃をお見舞いする。
それを受けたゴブリンはばたりと倒れ、ピクリとも動かない。
他のゴブリンはたじろぎ、口をポカンと開けたままだった。
魔法少女は透かさず、次の攻撃に移る。1箇所に群れた残りのゴブリン4匹に向かって杖を大きく横に振った。
魔法少女の素早い動きを避ける事ができたゴブリンはおらず、4匹はそのひと振りによって倒れた。
「よし、終わりっと!」
魔法少女は勝利を確信して、笑みを浮かべてガッツポーズを決めた。
「いやー、イズハちゃん、やっぱりおっかな〜い」
魔法少女の服のフードから、ひょっこりと小さな生き物が飛び出した。煌めく翼、特徴的な長耳を持つ小さな人は、妖精と言う名に相応しい姿をしている。
「しょうがないでしょ、リリがさっさと魔法使えるようにしてくれないからじゃん!」
魔法少女は妖精を軽く睨むと、むっと膨れてその場を後にした。
「はいはい、いずれ使えるようになりますよっと・・・。必ずね・・・」
妖精はそう呟くと、魔法少女の後を冷たい夜風の中、ゆらゆらと追いかける。
魔法少女、冒険します @Hukase_m
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