第46話 アルコール
「そうでしたか。ご相談があれば何なりと。解毒や治療の心得もありますので」
「まあ。ロベリタ? 貴方、魔法の国の人間を連れてきたと聞いていたけど……随分と優秀な人材を選んだのね」
「あ、ありがとうございます」
正確に選んだのは、私ではなく、前のロベリタ、なのだけれど。
軽く会釈をすると、女王陛下は微笑ましそうに顔を綻ばせた。
と、その時、アランと同じように黒い服を纏った人物が女王陛下の背後に近づく。
その人は何事かを女王に耳打ちし、影のように去っていく。アランと同じような格好をしているということは、あの人も護衛役なのだろうか。サングラスをしており、顔は良く見えなかった。
「ごめんなさいね。呼ばれてしまったわ。積もる話もあったけれど……ゆっくりしていってちょうだい」
彼女は困ったように笑いながら、黒い服の人物が向かった方向へと立ち去っていく。
その後ろ姿を見送り終えると、体中からどっと力が抜けるのを感じた。
「いきなり女王陛下とは、運が悪いんだか、良いんだかねえ」
セシルが笑う。私は深呼吸をし、近くのテーブルに置かれていたシャンパンのような飲み物に手を付けた。周りの人たちは自由に飲んでいるので、私も例外ではないだろう。
果実酒、だろうか。かすかな炭酸の中に、甘酸っぱい香りが広がる。いくらでも飲めそうだったが、前世――と言っていいのか、元の世界でのことがあるので、アルコールはほどほどにした方が良いだろう。
しかし私は、いつ死んだのだろう。苦しんだ記憶も、吐いた記憶もないので、眠る様に死んだのだろうか。だとしたら理想的な死に方だ。自殺願望、とまではいかないまでも、居場所のない居心地の悪さは感じていたので、なんだか複雑な気持ちだった。
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