第28話【ガルシア視点】ダチパワー


「で、リーナに何か用があったのか?」


そう聞けば、真白は魔法をリーナに教えてもらおうとしたそうだ。


あいにくだが、真白には使えないということを伝えれば、なぜそう決めつけるのかと聞かれた。


だから、『おまえには魔核がないだろ』と言ったのだが、



「魔核って?」



………本当に何も知らないような感じで聞いてきた。


ふざけているようには一切見えない。


陛下から護衛を任される前に真白のことを少し聞いていた。


『この人間は魔大陸を知らない』


ただその一言だけだ。


だが、この様子だと魔大陸はおろかこの世界のことを何も知らないように見える。


まさか………な?


さすがに何も知らないわけじゃねーよな?


最低限、この世界には24の大陸があるってことくらいは誰でも知ってるだろう。


だが、何も知らないとすれば記憶喪失の可能性もある。


それか、ど田舎育ちの人間ってことも考えられる。


もしくは、箱入り娘とかか?


俺は様々な思考を巡らせながら、魔核の説明をした。


「魔核っつーのは………」


ざっくりと魔核の説明をすれば、


「……異世界に魔法があっても使えない身体とは、こんなにも悔しいことはない!」


真白は両目に今にもこぼれ落ちそうなくらいの水をためて、そんなことを言った。


えぇッ⁉︎


俺を見ても、いくら怒鳴りつけても泣かなかったあの真白が泣いているだとおぉぉぉぉぉ⁉︎


ど、どどどどどどどーーーーすればいいぃぃぃ⁉︎


真白は、今では俺のダ、ダチだし?


そのダチの為になんとかしてやりたいと思うのは当たり前なんだが。


で、どうする俺!


魔法、魔法、魔法………。


と俺は頭の中で連呼した後、思いついた。


「だ、だが、古の魔法なら使えるかもな」


古の魔法。


これは世界の最初にして最古の魔法だ。


「ズズズ……魔核がなきゃそもそも魔法は使えないんじゃなかったのか?」


真白は鼻水をすすって涙を拭った。


よ、よかった。


どうにか泣き止んでくれたようだ。


「まぁそうなんだが、今の時代に使われてる魔法っていうのは、自分で技を編み出して魔力を放出させる自由型造形魔法と書物に記された通りに魔力を放出させる定形型造形魔法でこの二つが主流となっている。だが、この二つの魔法は大量の魔力放出が必要で魔核無しでは放出不可能だ。しかし、昔は魔核から魔力をうまく放出できず魔法を操れない者であふれかえっていた。そこで、編み出されたのが古の魔法だ」


「でも結局は古の魔法も魔力が必要なんだろ? 上手く操れなかったわけだから、上手く魔核から魔力を引き出すような魔法だったってことなんじゃないか?」


「そ、それは………その……」


正直、そこまで考えてなかった。


チラリと真白の顔を見れば両目に涙ではなく今度は鼻水が────。


美人な顔が台無しに………って、そんなこと考えてる場合じゃねー!


と、とにかく泣き止んでくれえぇえぇぇーーーーー!


「だ、だが、まだ望みはあるだろ?」


何も言わないままよりはいいと勢いのままにいってみた。


ゴクリと喉を鳴らし、真白の顔をチラリと見れば、


「………まぁ、そうだな。じゃあ、古の魔法教えてくれよ!」


「えぇ~………………」


鼻水が止まっていた。


やっと泣き止んだか……。


ここで新たな問題発生。


古の魔法は昔に使われていた魔法で、あまり馴染みがない。


そもそも古の魔法という名を聞いたことはあるが、実際にこの目で見たり使ったりしたことはない。


だから、古の魔法に関する本を探すため、ローレンス図書館へ向かうことしにたのだった。


図書館へ向かう長い廊下を歩いているとき、俺は一つ大きなため息をついて思った。


子供を泣き止ませるのって、敵を抹殺するよりも大変だな。


でも、ダチの為ならこれくらいの苦労は当然か。









ガルシアは、ダチパワーでどうにか乗り切ったのだった。




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