カクヨム的脱出ゲーム

ハイロック

第1話「第一の部屋 くるくる」

「あれ、私たちって遊園地デートしてたはずだよね?何この部屋、いつの間にこんなとこ来たの?」

「なんか、一瞬真っ暗になったと思ったら、どこだここ、さっきまで俺たちは屋外にいたよな?」

 地元の大型ショッピングモールに付随する遊園地でデートしていたこの二人は、高校1年生のできたてほやほやのカップルである。

 名前は、田出だしゅつするおと城山フランソワーズ・ラビリンス。

 クラスマッチの打ち上げをきっかけに、なんとなく距離が近づいて、するおが友達にあおられてこくった結果、ラビリンスは二つ返事でOKした。


 初デートはラビリンスの希望で遊園地となったのだが、するおが勇気を出して、手をつなごうと腕を伸ばした瞬間、屋外にもかかわらず周囲が闇に包まれ、一瞬のうちに狭い部屋の中に場所がうつっていたのである。


「ドアがあるけど、ちっとも開く気配がないな。そもそも、取っ手が回らない」

「ねーどうなってるの? 絶対さっきまで、外にいたはずなのに?するおくん、ひょっとしてなにか私が眠りに落ちるようなもの飲ませて、ここに連れ込んだの?」

「いや、そんなことするわけないって! 俺も一瞬暗くなったと思ったらここにいたって感じなんだよ?」

「うーん、わかったわ、いいから、早くここを出ましょう。ドアが開かないわけないじゃん、私があけるからちょっとどいて」

 そういうと、ラビリンスは勢いよくドアを蹴飛ばした。

 しかし、もちろんドアはびくともしない。


「ラビちゃん、大丈夫? 蘭ちゃんじゃないんだからそんなんでドアは開いたりしないよ」

「いたいよぉ……」

「ラビちゃんそんなことしなくても、あそこに窓があるから、あれを割って出よう」

「そうだね」


 二人はドアの反対にある窓にむかって歩こうとした、その時


「まってするおくんあぶない!」

 ラビリンスは進もうとする、するおの衣服を引っ張って、歩みを止めさせた。

 足元には大きな穴が広がっていた。

 底が見えないくらいの深い穴、落ちればおそらく命はないだろう。

「うわっ、んあだよ。危なかったあ、どうなってんだこの部屋?」

「しかも、穴の周り見て、なんだか砂まみれ……」

 よくよく見れば、穴の周りどころか、あたり一面が砂にまみれている。


「砂に足を取られて、穴に落ちるなんてことのないようにしないとね」

 二人は慎重に中央の穴を避けて部屋の隅を通って、窓にたどり着いた。


「なんか、開閉とかできなそうな窓。壊すしかないわね」

「なにか、壊せるような道具ないかな」

「そんなん必要ないわよ、任せて」

 

 ラビリンスは再び鋭い足刀を窓にむかって突き出した。

 しかし、窓にはヒビ一つはいらない。

「いたいよお」

 ラビリンスはその場でうずくまってしまった。

 一方で、するおは初デートにして彼女の狂気的な面を見て後悔しそうになっていた。

「防弾ガラスなんかな?これ、ラビィ大丈夫かい?」

「うぅ、いたい、だいじょうぶなわけない」

 もし防弾ガラスじゃなかったとしたら、破片が刺さってけがをしていたと思うのだが、そこまで考えは回らなかったんだろうかと、するおは思ったがもちろん口にはしない。


 するおはここで窓の隣に、タッチパネルがあることに気が付いた。

 「ここから出るためには、キーワードを入力せよ」と液晶部分に表示されてる。


「ラビィこれ見てよ……なんかどうやらこの部屋は脱出ゲームかなんかみたいだぞ」

「何脱出ゲームって? あ、なんか変なパネルあるね、キーワードって何よ、パスワード的な奴、そんなんわかるわけないじゃん」

「いや、こういうのは絶対ヒントがあるはずなんだ」

 するおが液晶下のパネルをみるとそこには、ケータイ電話の文字入力のように、横3マス×縦4マスに「あ、か、さ……」と表示されてる。

 そして一番下段の左側に、「ヒント」というパネルが表示されている。


「とりあえず、ヒントを押してみよう」

「うん」

 ヒントを押すと、液晶部分に

『この部屋にないものが答え、あるものは一周する』と出た。


「えぇ、どういうこと?」

「まあこういうヒントってわかりにくいものだからね」

「この部屋にないものなんて、いくらでもあるじゃない。広さもないし、何より自由がないわ、そうだ、きっと答えは自由じゃないかしら」

 とっさにラビリンスの手がタッチパネルにのびそうになる。

 慌てて、する男はその手を止めた。

「ま、待ってくれ、何回挑戦できるかわからないんだ。ここは慎重に行こう。とりあえず、この部屋中を調べつくして、あるものをすべて探るんだ。脱出ゲームはそれがセオリーだからね」


「えぇー、よくわからないけど。するおくんにその辺は任せるね。じゃあ二人でとりあえず部屋中を探しましょう」

「穴に落ちないように気を付けてね」


10分後


「なんか、何もないわね」

「あったのは、コミック課長島耕作全巻とナスが一本……」

 しかもご丁寧に島耕作の表紙のタイトルのに丸が付けられていた。


「絶対、島に意味あるわよねこれ」

「それと、ナスもまあ意味あるよなぁ」

「ナスと島……? ほかに何かあったかしら、さすがにナスと島だけってことないと思うのだけれど」

 その後二人は、徹底的に砂の中とも調べたりはしてみたが、何も見つかりはしなかった。

 果たして入力すべきキーワードとは何か?


(応援コメントに答え出てしまったので、考えたい人は見ないようにね)


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