第24話 魔法少女誕生?

「せんせい……からだが……すごく…あついです」

「我慢しろ、すぐ終わる」

「で、でも。からだがじんじんしびれて…むずむずするんです」


まどかが俺の手から逃れるかのように、体をくねらせる。

そんなまどかを、俺は両手で押さえつける。


「ああ……せんせい!!」

「変な大声出すな!びっくりするだろうが!」


いきなりまどかが変な大声を上げた為、驚きの余りまどかの両肩から手を放す。


魔法習得の第一段階、魔力感覚法を行っていたのだが……

こいつ…魔力を感知してやがる。


魔力感覚法

対象に瞑想をさせ、そこに魔力を流し込む事で感覚的に魔力を理解させる方法だ。

通常、魔法の才能の無い者はここでふるい落とされる。


魔力感覚法を2-3回行い、才能無しとしてまどかを放り出すつもりだったが、まさか感知してしまうとは。

正直、驚きを隠せない。

何故なら魔力を感じられるという事は、魔法が使えるに他ならないからだ。


生まれつき魔力を持たない者は、魔法を感覚的に捕らえる能力が無い。

尻尾を持たない者に、尻尾の感覚が理解できないのと同じだ。

逆を言えば、感覚を捉えることが出来た以上、まどかの中には力の大小は兎も角、魔力が存在することになる。


まじかよ……


「あの…先生。どうかしましたか?」


正直迷う。事実を伝えるべきかどうか。

魔法が使えれば当然便利だ。

だがその力にはリスクが付き纏う。それも特大の。


周りに知られれば、確実に碌な事にならない。

俺は大人だから、その辺りを弁えて行動できるが、まどかは10歳の子供だ。

この年で魔法を習得すれば、間違いなくそのうちやらかすだろう。

そうなったときこの子の運命はどうなる……


この子だけじゃない、そうなれば俺も芋づる式に御用だ。

まどかの、そして俺自身の為にも、この子には魔法を教えるべきじゃない。


「ん、いや。残念だけどまどかには魔法の才能が無いな」

「え?」

「体が熱くなってムズムズしたんだろ?それは魔力が受け入れられてない証拠だ。体が魔力に拒否反応を起こしてるんだ。残念だけど魔法を覚えるのは諦めろ」


うむ、我ながら惚れ惚れする程の法螺だ。

これならまどかも納得するだろう。

悪いなまどか。これがお互いの為なんだ。


「諦めません!私諦めません!!魔法少女はずっと小さいころからの夢だったんです!それをちょっと才能が無かったくらいで、諦める事なんて出来ません!!」

「出来もしない事に時間を取られれば、人生を無駄に消費することになるぞ?」

「構いません!!それでもあたしは魔法少女を目指します!!」


まどかの想像以上の頑なな反発に、思わずたじろぐ。


「先生は夢を目指す人に、無駄だからやめろってあざ笑うような人なんですか!?」

「いや、流石にそれはしないが…」

「だったらこれからも御指導お願いします!!」


駄目だこりゃ。説得は無理だな。

まったく、頑固なガキだ。

だがまどかは無理でも、こいつの親なら説得できる可能性はある。


「わかったよ」

「ありがとうございます!」

「とりあえず今日はもう帰れ、お前も色々と考える事があるだろう?」

「ないです!」


おのれ10歳児。

俺の優しさをことごとく否定してきやがる。


「あっそ。まあいいや、とりあえず帰れ。あと一応親御さんの連絡先も教えといてくれ、連絡先が分からないのは不味いからな」


子供の相手は本当に疲れる。

早くあっちに世界に行きたいぜ。


「…………」


まどかが、何故かこちらをジト目で睨みつけて動かない。


「どうした?」

「先生…お母さんを説得する気なら無駄ですよ。お母さんは私以上に本気ですから。それじゃあ帰ります」


そう言ってまどかは玄関から帰っていく。

やれやれ、これだから勘のいいガキは嫌いだ。

しかし、まどかの言う事が本当だったらと思うと、頭が痛くなってきた。


マジ勘弁してくれよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る