第7話 美少女現る
「で?此処はどこだ?」
「此処は組織の隠れ家よ。まあ、もう逃げられちゃって、もぬけの殻だけどね」
聞きなれない高い声に興味を惹かれ、声の主を見る為振り返ると、そこには少女が居た。
赤毛の可愛らしい顔をした美少女だ。
誰だこいつ?と思い、繁々と眺めていると。
「何?あたしに見惚れてるのかしら?」
などと寝言をほざきだす。
妖精のような可愛らしさを持つ美少女だが、はっきり言って守備範囲外だ。
興味のない相手に見惚れてるの?とか言われると正直イラっとする。
まあ所詮子供の戯言、ここは大人の余裕をもってスルーしてやろう。
もっとも、次言ったら子供でも容赦なくぶん殴るけど。
「いつも一緒に居る少年が居ないんだが?お嬢ちゃん何か知らないかい?」
「何?あなたあの子の事、男だと思ってるの?言っとくけどあの子は女の子よ。一応ね」
知っとるわい。知ってて少年呼ばわりしてるだけだ。
しかしこの少女、えらく大人びた喋りを方するな。これが世に言うおませさんって奴か。
「ポエリなら痕跡が残って無いか調べてるわよ?貴方の役に立とうと頑張っちゃって、可愛い子じゃないの。」
可愛いと来たか。少年が。
あんなのを可愛いと評価するのは、年寄り連中位の物だろう。
年寄りにとっては、若い=全部可愛いみたいな部分があるからな。
それにしても趣味といい喋り方といい、随分と婆臭い少女だな?
興味がわいてきたので、再び少女を繁々と眺めてみる。
「まだあたしが誰だか分からないのかしら?」
「分から無いも何も、初対面だ」
「バッサリ切るわね。じゃあヒントをあげる。赤い髪に赤い瞳、そして名前の頭文字は“あ”よ」
いきなり謎々かよ。子供ってホントこういうの好きな。
しかし赤毛で“あ”か…
「わかったぞ!!赤毛のア「絶対違う!」
人の言葉を遮るとか行儀の悪い子だな。
「やれやれ、しょうがないねぇ。あんたと詰まらない漫談をこれ以上続けてもしょうがないし、教えてあげるよ」
そう言うと少女がビシッとポーズを決めつつ叫ぶ。
「そう!あたしこそが美貌の女海賊アルビダさ!」
「に、憧れる可哀そうな少女って事か?」
「違う!!」
婆臭い上におつむが弱いとか絶望的だな。
少女の悲惨な将来の姿が浮かんでは消え、次々と脳内シミュレートされていく。
「頑張れ!!」
「あんた、今とんでもなく失礼な事考えてないかい?」
どうやら勘だけは鋭いようだ。
少女よ、その勘を頼りに強く生きるのだぞ。
「お待たせしました勇者様。残念ながら痕跡は見つけられませんでした」
「そうか、ご苦労だったな。所で少年よ。この少女はとても残念な娘だ。優しくしてやってくれ」
「は!?何故私がこんな女海賊などに優しくする必要があるのですか!!」
少年がいきなり声を荒げた為、思わず面食らってしまう。
へ、へへ、俺をびっくりさせるとはやるじゃねーか。
成長したな、少年よ。
ん?女海賊?少年の言葉が引っ掛かる。
こんなに小さな子がそんな裏家業に手を染めているのか?
此処は大人として、がっつり説教をしてやらんといかんな。
「いいか嬢ちゃん。世の中辛いことが多い。ままならない事もだ。だからって道を踏み外してはいけない。海賊稼業から足をすっぱり洗って第二の人生を始めるってんなら、嬢ちゃんが海賊だったって事は、俺の胸の中にだけ仕舞っておいてやる。いいね?」
決まった。我ながら完璧な説得に、自分で自分に100点満点を上げたい気分だ。
気持ちよくどや顔で少年の方を向くと、何故だか大きなため息をついている?
ひょっとしてこれが感嘆の溜息って奴なのだろうか?
「勇者様。お忘れでしょうが、この娘はアルビダですよ」
あ!ピンときた!
そのとき俺の全身に電撃が走る!
「成程。そういう事か…」
「分かってくれたかい?」
「お前ら2人で俺を担ごうって魂胆だな!!」
「なんでそうなるんですか!」
「なんでそうなるんだい!」
少年と少女の声がハモる。
ふふふ、馬脚を現したな。
これだけ息がぴったりな以上、間違いなくこいつらはグルだ。
こうして始まった二人との
目覚ましに邪魔さえされなければ、俺の完全勝利に終わるはずだったのだが、今日の所は引き分けで勘弁しといてやるぜ!!お前ら命拾いしたな!!あばよ!
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