PHASE-1630【別の上澄み連中】
「さあ来るがいい。お前達の自慢の得物を全て私の手へと収めてやろう」
「かなりの使い手のようだが、調子に乗らないことだね美人さん」
一人の男が仲間たちをかき分けて登場。
金髪の優男。
「ブリオレがいいようにやられたのは聞いたけど、直に目にして得心が行ったよ。強いね」
と、金髪の優男の発言に、名を出されたブリオレは面白くない顔へと変わる。
関係は芳しくないようだ。
ブリオレと関係が悪いとなると俺達とは友好的……、
「そしてブリオレには勿体ないほど美しい女性だねアップさん。是非とも俺と良い関係になってほしい」
――……にはなれないようだ。
不敵な笑みの中に潜ませる、下半身でしか物事を考えられない邪な表情。
「なるわけないだろう。お前のような三下以下など誰が相手にするのだ?」
一刀両断によるベルからの拒絶。
これには自分の顔に自信があったであろう笑みを湛える男の眉がピクリと動く。
「生意気な女だね!」
発したのは眉を動かした男ではなく、
「女」
俺が発するタイミングに合わせたかのように、
「ライトニングスネーク!」
よく耳にする魔法だ。
それをバックステップで回避にて対処するベル。
「この大馬鹿者共が! アトラトルに続いて魔法まで市中で使用するとは! 気分よく酔っていたのに不快な酔い覚めをさせてくれる!」
大激怒のレギラスロウ氏。
「五月蠅いよドワーフ」
現れるのは栗毛色のロングヘアの女。
コクリコ同様ウィザードクラスのようだ。
「クアントの誘いを断る女に制裁を加えてやっただけさ!」
会話の流れからして、金髪の優男がクアントって名前のようだな。
「まったくクーメンはおてんばだね」
優男がそう言えば、クーメンと呼ばれたウィザードは照れ笑い。
体が痒くなってくらぁな。
「やれやれ、クアントが攻撃の指示も出していないってのに。毎度、手が早い。連携が乱れるだろう。前衛の俺の苦労を少しは知れ」
「それがクーメンの良いところであり、欠点でもある」
と、更に二人登場。
で、横隊にて隊伍を組む。
四人からなるパーティーのようだ。
この四人の登場に、ブリオレの顔は更に面白くないものへと変わる。
「ブリオレを一撃でのめしたってだけあって、強そうなのが揃っているな」
後で出てきた二人の内の一人が手を額に当て、こちらを見渡しながら発する。
赤髪短髪。
ブリオレに負けず劣らずの隆起した筋肉の持ち主。
登場時の発言どおり前衛担当のようだ。
「実力があろうが勝手が過ぎる。この地にはこの地の流儀がある。それを荒らす新顔には仕置きが必要」
と、続くのはロマンスグレーの壮年の男。
細身でレザーの軽装だからスカウト系ってところかな。
四人が前へと出てきたところで相手側に活気が戻る。
連中の高揚とブリオレの苦々しい表情からして、
「ゴールドポンドの上澄みの中でも上澄みってところかな?」
「その通り! 私達がゴールドポンド最強パーティー。ソードマンであるクアントがリーダーを務め、紅一点のウィザードである私クーメン。ウォーリアーのザンザとスカウトのウッドからなる最強パーティー!」
「むせそうな名前で集まったパーティーだな。で、最強パーティーって何で二度も言うのよ」
二度言って強調したいのは分かるが――最強と言うには役不足だな。
ここいらじゃ確かにやり手なんだろうが、凄味がこちらまで届いてこない。
内のクランなら新人たちよりちょっと強いくらいかな。
トロール戦で活躍した新人のライとクオンに比べると絶対に格下だけども。
「やっぱり内のクランの層は厚いな」
聞こえない程度で独白しつつ、頼りがいのある仲間たちを誇らしく思う。
「なに笑ってんのさ! その中で一番弱そうなくせに! 女同様アンタにも制裁を加えてあげるよ!」
手にする黒色のスタッフを俺へと向ければ、先端に備わる拳大の貴石が黄色に輝く。
「ライトニングスネーク!」
ロープサイズの電撃の蛇が俺へと飛んでくる。
う~ん――しょぼい。
イグニースをちょっと展開してから圧縮しての弱烈火を右拳の前方に顕現させて――、
「貧弱、惰弱ぅ!」
小気味よく右ストレートを電撃の蛇へと叩き込む。
ボフンッ! とバチン! といった炸裂音が同時に生じる。
「そんな!?」
魔法を放った方からは驚きの声。
大した威力じゃねえな。
これなら普通の右ストレートでも問題なかった。
一応は中位魔法だから警戒したけど杞憂だった。
コクリコのに比べるとお話にならない。
まあ、コクリコのライトニングスネークも最初の頃はこんなもんだったか。
今では単独でも十分な威力を発揮するけど。
装身具とサーバントストーンもあって、ちょっとした大魔法のような威力も放てるようになったし。
目の前のと比べれば本当に成長してくれている。
「次こそは女同様に制裁を!」
「いやいや、内のアップは容易くお宅の魔法を回避しているから。さもアップが制裁を受けたみたいな言い方はしないでほしいね」
「何ですって!」
「落ち着いてクーメン。あいつの言っていることは事実だよ」
クアントが諫める。
こいつの発言で鼻息は荒いままだが攻撃に移らず踏みとどまるあたり、信頼関係はしっかりと築けているようだ。
「油断するような相手じゃないけど、皆、油断だけはしないように。足を掬われて不要な軽傷は避けたいからな」
「言うね~。連中の表情を瞬時に曇らせるのが上手い」
と、ガリオン。
相手側を見れば、俺の発言がとても気にくわなかったようで、優男の眉の動きがさっきよりも荒ぶった動きになっていた。
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