PHASE-1523【回収】
などと、俺が間取りを考えている中で開かれる宝物庫の扉。
自分の装備を取り戻すという強い思いが体に宿ったのか、小柄なコクリコからは想像が出来ない力強さで、重々しい鉄扉を一人で押し開いていく。
開いたところでゲッコーさんと同装備のハンドガンであるCZ75 SP-01を手にしたユーリさんと、この中で唯一装備が整っている俺と行動していたエルダースケルトンが宝物庫へと進入。
本来はエルダーではなくロマンドさんが進入役を買って出てくれただろうが、現在ロマンドさんと俺と行動していたピルグリムは、コクリコ組のスケルトン半数と共にアル氏がのびている広間にて待機。
ここに同行させているラズヴァートの拘束は、コクリコ組のルインが担当してくれている。
扉の先に入った二人の内、
「クリア」
と、ユーリさんからの発言を耳にしたところで宝物庫へとお邪魔する。
「おお! おおぉ? ぉぉ……」
「しょぼいですね」
おう、有り難うコクリコ。
開かれた扉の先の光景。
宝物庫と聞けば煌びやかな宝石や金銀財宝が山を作り、宝剣なんかが棚や壁に沿って整然と並んでいるのをイメージしていたが……。
コクリコが言葉にしてくれたように地味な光景が眼界に広がる。
「宝物庫って言うよりは、ただの物置……」
「失礼な! ここに有るモノの価値が分からないなんて!」
「まったくだぜ!」
俺の発言にご立腹なのは、ポームスとラズヴァート。
ここにあるのは見てくれではなく中身が重要な物ばかりだそうな。
とくに後者の方を発する時のラズヴァートの声には強さがあった。
前者よりも後者が嫌いなようだ。
俺達サイドからすれば、前者が圧倒的に嫌いだけどね。
――ふむん。
「煌びやかさのない短剣。くすんだ鏡などなど――」
色味は地味だけども手入れには余念がないようで、宝物庫内は掃除が行き届いていた。
置かれたアイテムに埃は積もっていない。
常に掃除されているってのが分かる。
「有りましたよ!」
駆け出すコクリコの先には、
「こういった地味な色ばかりだと目立つな」
青白い輝きを放つミスリルフライパンの神々しさよ。
その側で一緒に仕舞われているスケルトン達の装備を確認したところで――、
「仕舞われた――」
芽生える不安感。
誰が仕舞ったんだ?
アル氏はコクリコ、スケルトン達と一緒に室内にいた。
で、ポームスは俺達の交渉役。
加えてスケルトン達の装備を運ぶなんて小さな体では難しい。
「ユーリさんはクリアと言いましたけど、まだいるようですよ」
「進入した時は奥側の気配を感じ取れなかったけど、今は感じるね。で、直ぐさま構えに移行するその姿、流石はドムと共に旅をする勇者だね」
「どうも。でもそれが分かっていないのもいますけどね……」
我先にと駆け出すコクリコは止まらない。
「おい! 止まるんだよ!」
「なぜです?」
肩越しにこっちを見てくるも足は止めない。
「警戒を怠るな! 敵が潜んでる!」
そう発せば、俺達が感づいたことで窮したのか、
「喰らえ!」
コクリコの側面から飛び出してくるのは、この要塞でよく見た通常装備の者。
「ほっほう!」
他愛なしとばかりにテンションの高い声にてスライディング。
側面からのロングソードによる急襲は横薙ぎ。
それを床を滑って躱せば、
「倒しなさい」
「了承した」
コクリコに続いていたコクリコ組のエルダーが拳を急襲者に対して見舞う。
無手であっても流石はエルダー。
グレートヘルムで頭部を守ろうとも意味がないとばかりの一撃は、兜を変形させる威力。
拳打一発で戦闘不能。
「おのれ!」
残りが出てくる。
数は――五人。
十六人の装備を宝物庫へと運ぶ役目としては十分な数だな。
まだ伏兵がいる可能性もあるけども、
「ギャッ!」「がぁ!?」「……」
警戒を強める中で急襲者たちが瞬く間に倒されていく。
で、
「最後は私が締めくくりましょう!」
言いつつコクリコが飛び蹴り一閃。
「ぬぅん!?」
グレートヘルムの正面に直撃。
倒れる前のスリット部分から見た光景は靴底だろうね。
蹴りを受けた急襲者は海老反りとなって床へと勢いよく倒れる。
「ふふん! この程度の急襲で我々を仕留められると思っているとは片腹痛い!」
――……うん……。
「成功例を見たって感じですね」
「そうだね」
ユーリさんが相槌を打ってくれる。
この宝物庫では撃退に成功した。
で、失敗例はアル氏という強者に遭遇し、力及ばず倒された。
急襲者が並の相手だったから今回は脅威にならなかっただけだ。
アル氏に拘束されていたことを猛省するんじゃなかったのかよ……。
――……鳥頭か!
これは修正が必要だな。
「あいた!? なんですか!」
「反省できていないから拳骨一発だ。思慮が浅いんだよ」
今回とアル氏との遭遇。我先に駆け出すという動きは同じだったろう? と指摘すれば、言葉をつまらせる。
自分にも思うところがあったようだ。
猛省は嘘だったのかと問えば、更に言葉をつまらせるコクリコ。
その横ではロマンドさんの代役として俺と行動していたエルダーが、お前達も同様の動きだったな。と、発せば、スケルトン達が肩をすぼめる。
ラズヴァートを拘束しているルインだけは鷹揚に頷いて、エルダーの発言に賛同。
敵地での周辺警戒は宝物庫であっても油断はするな。と、ロマンドさん代役のエルダー。
継いで宝物庫であるからこそ、様々な罠が仕掛けられている可能性もあると声を荒げる。
――――コクリコ組、俺達から説教を受けながら装備を無事に回収。
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