PHASE-1491【以前に戦ったのは最精鋭じゃなかったのね】
――強い思いを声に乗せてのベルの離れない宣言。
当然ながら宣言を耳にするのは俺とミルモンだけでなく、乗られている側も耳朶に入れている。
「ガァ……」
声の本気度から降りないという強い意思を感じ取ったのか、フッケバインの鳴き声から辛い……。といった感情が伝わってきた。
「心地いいよ~」
って、ミルモンが言う時点で、フッケバインの負の感情は最悪な状況のようである。
「勝ち方はどうあれ、このデカいのを大人しくさせただけでも良しとするか!」
デカくて、広範囲をポンポンと攻撃できるのと戦わなくてすんだことで、俺の体力が減らずにすんだからな。
つまりはポーションの消費を抑えることが出来るということ。
――うむ。
「ここまで来てポーションの消費を抑えられているのはいいことだな」
「それだけ兄ちゃんが強いって事だよ。この要塞でも兄ちゃんの実力は十分に通用するって事だね♪」
主が強者として立ち回れていることに、使い魔は大喜び。
「確かによくやっている」
と、ここでモフモフにご満悦なベルからもお褒めのお言葉。
「まあ、調子には乗らないけどね」
「殊勝だ」
「それに、間違いなく強者はいるからな」
カラス頭のタンガタ・マヌであるクロウスにガーゴイル達。
ラズヴァートが側仕えであり先遣隊という任をこなすストームトルーパーのメンバーなら、クロウス達は軍全体を統轄する
レベル95となれば、間違いなくやべえヤツだからな。
――と、そうだな。
「おい下半身思考主義」
ベルを放置し、フッケバインから飛び降りてラズヴァートと向き合う。
「なんだそのふざけた呼び方は」
「これほどお前を表した呼び方もないだろうよ。この表現力を育んでいって、いずれは名コピーライターにでもなろうかな」
「チッ! 訳の分からねえことばかり言うイカレ野郎が!」
と、苛立ちからの舌打ちと罵倒。
勝者である俺は、それを意にも介さずにプレイギアを取り出す。
「なんだそりゃ?」
「貴様が知る必要はない」
素っ気なく言ってやれば、ここでも舌打ちで返してくる。
「はい! 渋い顔しないでニッコリ笑顔♪」
言いつつプレイギアのカメラ機能でディスプレイに映る、こちらを睨んでくるラズヴァートを撮影。
「どれどれ――」
ディスプレイに映し出される情報に目を向ければ、ミルモンも興味津々とばかりに左肩から覗き込んでくる。
【ラズヴァート・エッケレン】
【種族・フェイレン】
【レベル72】
【得手・風魔法】
【不得手・風魔法、雷魔法】
【属性・従属】
――レベルは72か。
俺の評価レベルが76だから、4レベル差で俺が上。
そこまで差はないけども、結構、楽勝だったよな。
というか、普通に70程度のヤツなら一人でも十分に戦えるようになっている俺は成長しているね。
自惚れたいところだが、さっきベルに調子には乗らないと言ったばかりだから顔には出すまい。
得手が風魔法で、不得手も風魔法ってのには納得。
自身の大魔法パイルストームが生み出す風が原因で、動きに制限がかかっていたからな。
「で、何がしたかったんだよ?」
「お前ってそこそこやるんだな~。ってのを眺めてたんだよ」
「本当! ふざけた言い方だな!」
高レベルだから素直な感想だったんだけどね。
ストームトルーパーがこのクラスで編制されているとなると、集団による攻撃はやはり脅威となるな。
「レッドキャップスよりも上の連中なんだな。お前の所属するストームトルーパーって」
「当然だろうが!」
拘束されながらも誇らしく胸を張って返してくる。
魔大陸で会敵した、魔王護衛軍精鋭・レッドキャップスの平均レベルは40オーバーだったからな。
そこから考えてもコイツ等は強い。
流石は前線や主要部分を任されている
まあ、
「とまあ、格好つけたものの、俺達もまだまだだ」
「おん?」
「まだまだレッドキャップスの奴等には及ばない」
「いやいや、十分、強いって」
「俺達だって最低限の情報は得ている。勇者一行はレティアラ大陸に行ったんだってな」
「ああ。レッドキャップスとも戦ったぞ」
「お前等が戦ったのは、レッドキャップスの中でもまだまだ新兵の連中だよ。精鋭中の精鋭は、魔王様の側から片時も離れない」
「そんな情報を簡単に口にしていいのか?」
「言っても問題ない。お前等がここから生きて出る事など不可能だからな」
また在り来たりな台詞を言うね。
その台詞が漫画やアニメで使用された場合、大抵は無事に出ることが出来るんだけどね。
現実は漫画やアニメどおりには進まないけども、その常套句に験を担がせてもらおう。
それにしても、以前に戦った連中は精鋭の中で新兵か。
新兵がアクセルの上位である縮地を当たり前のように使用してくるんだから、上澄み連中も習得済みなのは確定。
ラズヴァートが嘘をついていないなら、レッドキャップス最精鋭はストームトルーパー以上に面倒な相手になりそうだな。
ショゴス個人の能力だけでなく、そういった面々を従えているから、ショゴスは魔王として玉座に座ることが出来るんだろう。
俺達が出会ったレッドキャップスが最精鋭だったなら、兵力だけなら最大勢力の
それが出来ないほどに、ショゴスとその取り巻きが脅威なわけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます