PHASE-1483【輩みたいでもいいじゃない】
ここでズイっと隊伍から離れて前に出る。
「つまりはお前をボコボコにすれば、
「いやいや……そこは話し合いなんじゃないの? さっきも言ったけど、報告では君らはまず話し合いに重きを置くということのようだけど」
「そのスタンスは初手からずっと駄目だったからな。結局は戦わないといけないなら、こちらの実力を示してから話し合いに持ち込ませてもらう」
ジージーもそう言ってたしな。
「前もってこちらに連絡を入れてくれていれば、戦闘に発展する事にはならなかっただろうにね」
とか言う割には、発言の内容に似つかわしくない小馬鹿にした笑みを顔に貼り付けてるな。
「じゃあ、ここで話し合いを再開という提案を出していいかな?」
「う~ん。勇者以外の女性陣限定による話し合いなら大歓迎だね」
「ああっ!」
「出来れば皆して生まれた時の姿となって、ベットの中ってのがいいね~」
「よぉぉぉぉぉし! オレ、オマエ――コロス!」
「後半、片言になってるよ兄ちゃん。怒りのあまり知能指数が蛮族レベルになってるよ……」
「蛮族結構! あいつは敵だ! ここで出会ったどんな相手よりも倒さないといけないヤツだ!」
「私怨が溢れてはいるが、ああいった軽口を叩く者は私も気に入らんな」
「まったくですね!」「無理な性格だね」「同感ね」
ベルを筆頭に残りの女性陣も不快感を露わにする。
「どうだラズヴァート。こちらの女性陣はお前のことが気に入らないらしい。顔がいいからってどんな女も靡くと思うなよ!」
「普段、平凡な顔の男を見てばかりのようだから、俺の誘いに簡単に靡いてくれると思ったんだけどな。身持ちは堅いようだ。そこがまたいいけどね」
――……。
――うん?
「普段、平凡な顔ばかり見ているから――だと?」
「そうだよ」
「つまりは俺の事を言っているのかな? この中で男となると俺かミルモンだからな」
後者は可愛いからね。平凡じゃないもんね。
「認識はしてるんだな――自分の顔を」
「アクセル!」
「わお!?」
一足飛びで全身全霊の拳を叩き込んでやる!
顔で二度とマウントが取れないルックスに整形してやろうという強い思いで殴りかかったものの――、
「邪魔をするなカラス!」
俺の拳からラズヴァートを守るように、分厚い嘴でガードしてくる。
「ガァァァア!」
と、鳴き声を上げて嘴を振り回し、俺をはじき飛ばす。
体を捻りつつ姿勢を整えてから着地。
「へえ~顔はともかく、動きは綺麗だね」
「コロスッ!」
「兄ちゃん、殺意が凄すぎるよ……」
「時にはそういった感情を漏らすのもいいってもんだ。それが力に繋がることもある――かもしれない」
「ええ……」
「どっこいしょ!」
「ガァ!」
またも俺の殺意が籠もった拳を嘴で防いでくる。
こっちとしては、すかした野郎の顔面を残念フェイスに整形したいってのに!
「ガァァアッ!」
「五月蠅い!」
「ガァ!?」
いつまでも邪魔をするなら容赦はしない。
弱烈火による右フックを嘴部分に叩き込んでやれば、黒い巨体が傾く。
片足立ちになりながらも、転倒は回避していた。
追撃でもう一発殴っていれば、倒すことも可能だったな。
「マジかよ。フッケバインだぞ……」
と、ここでようやくニタニタとした笑みを消し、緊張した面持ちになってくれる。
なったらなったでクール系イケメンフェイスになったので許してやらない。
「ゴラッ!」
「ふぉうぅ!?」
「よく躱したな。殺意の波動を纏った我が拳を!」
「そんだけ殺意が籠もっていれば察知もしやすいさ」
「言い様は爽やかだけども声は上擦ってるぞ。それでも
「耳が痛いね」
「痛いのが耳だけですむと思うなよ! 有言実行のボロ雑巾にしてくれる! フハハハハハハ――ッ!」
「兄ちゃん……」
笑い方が完全い悪役だよ……。と、呆れられるけども、俺の攻撃は止まらない。
むしろ加速する。
拳に蹴撃を織り交ぜてのラッシュで攻める。
同じ土俵ではかなわないとばかりに、ラズヴァートは翼を動かし上空へと距離を取る。
ここの連中はとにかく危なくなれば直ぐ空に逃げやがる。
「おりてこんかいワレッ!」
即座にホルスターとアンクルステルスホルスターからチアッパ・ライノとチーフスペシャルを取り出し、アキンボにて撃ちまくる。
「なんだそりゃ!?」
驚きつつも魔法による障壁で防いでくるが、お構いなしに撃ちまくる。
ダァン! パン! と、軽重からなる音を交互に奏でれば、空へと逃げたラズヴァートは捕捉しづらい弾丸に困惑しているといったところ。
トリガーを引いてもカチカチとしかいわなくなったところで――、
「どうした! いつまでもヒラヒラと飛んでるだけで攻めてこないなら、次はスティンガーぶちかますぞ!」
「完全に語調が輩だよ兄ちゃん……」
女を拐かすイケメンなんてのは、それ以外の男の敵でしかねえ!
「女を食い物にするヤツを俺は許さん!」
「別に食い物にはしてないだろうに……」
「いいやするね! お前はそんなヤツだ! ぶっ倒して悪さできないようにイチモツを切り落とし、宦官の人生を歩ませてやる!」
「おっかねえな……勇者ってのは……」
「ジージーの時とは別人かと思えるくらいに強気だよね」
「当然だ」
「その強気の原動力が負の感情なのはどうかと思うけどさ……」
俺の感情を読み取れるミルモンは、俺の原動力の情けなさに嘆息。
でもいいじゃない。トラウマ発動して情けない姿を見せ続けていた時よりもキビキビと動けてるんだからさ。
キレッキレですよ。今の俺。
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