PHASE-1440【やってやりましょう】
大魔法をバンバン使用してくるのか……。
あれだけのレベルなんだから、当然といえば当然だよな。
大魔法も広範囲攻撃だけでなく、デミタスのデヴァステイターのような個に対してのものも扱えるんだろうな。
天空要塞は主である
うん……。
「あんまり耳に入れたくなかった情報ですよね……」
「だが、入れておかなければならない事だからな」
「そうなんですよね。なんの情報もなく挑むのは愚策ですからね」
「その通りだ。この辺りの説明はフロトレムリへと行く前に、勇者の知者である副会頭殿から説明があるだろう」
詳しい情報は攻略前のブリーフィングでってことだな。
――ふむん。
「失礼な質問になりますけど、本腰入れたガルム氏とタンガタ・マヌだとどっちが上でしょうかね?」
「戦ったことはないが、やり合って最後まで立っているのは十中八九――カイディルだろうな」
「……マジっすか」
「マジっすよ」
マジっすか……。
万全な装備に、ネイコスも有りきのガルム氏が戦ったとしても十中八九なのか……。
「ですが一、二回は勝てるということですね」
「そう思いたい」
「ならばその一、二回の勝運を実力で引っ張ってくればいいだけのこと。命の奪い合いとなれば、その一、二回を制すれば次は戦わなくて良いのですからね」
姐御肌のコクリコが格好の良いことを言ってくれる。
「それにトールはガルムに勝っているのですから、カラス頭への勝率は更に上がりますよ」
「その通りだ」
コクリコの発言に俺に負けた当事者も続く。
「ネイコスありきの戦いなら分からなかったですけどね」
「それはこちらも同様。勇者がネイコスを使用してくれば、こちらの攻撃は防がれていただろうからな」
ネイコス有りきになっていても、自分では勇者には勝てないだろうとガルム氏。
「という事なんですから。そんなカラス頭はさっさと蹴倒して大将首を狙いますよ。もちろん私が最後の一撃を叩き込みますけどね」
「頼りになるよ」
「頼ってください。私の歴史に刻まれる偉業のためにもね!」
と、ここでもテーブルに立っての大音声。
喝采を大の字で浴びて悦に入るというループ。
この場にベルがいたのなら、テーブルに立つ行為ははしたないからやめろ! と、叱られていただろうな。
そういった光景は何度も目にしてるけど。
――ベルね~。
「真の強者となれば身近にいるんですよね。内のパーティーっていう身近に」
「だろうな」
「ここにいますよ」
理解してくれるガルム氏と、そうじゃないコクリコ。
後者の発言に前者と顔を向き合わせて苦笑い。
この振る舞いにコクリコは目を細めて不服を表現。
「天空要塞に行く前にベルにも挑んどくか」
真の強者と戦うことで、天空要塞の猛者達を相手にしても気後れしなくなるだろうからな。
「それは見ものだな」
「勇者として、強者として渡り合ってみせますよ」
「少しは耐えてくださいね。長丁場となればそれだけトールが成長しているということになりますから」
「おうよ」
コクリコの言い様。
少しは耐えてくださいね。――って、勝敗としては俺が負けるということは確定した言い様だ。
タンガタ・マヌの時の勝率どうこうの内容とは差がありすぎる。
それに対して肯定の返事しか出来ない俺も俺だけど……。
戦う前から負けることを考えてるってのはダメダメなのは分かってはいるけども、まず勝てないのは理解しているからね。
仕方がないことですよ。
胸を借りるだけだ。
あの胸を借りるというのが物理的なものなら最高なんだけどな~。
「次は姉ちゃんか」
「そうなるな。ミルモン」
「なんだい?」
「ガルム氏との戦闘では俺から最後まで離れなずに戦闘に耐えたこと――凄かったぞ」
「そうでしょ!」
喜びから空を舞うところ申し訳ないけども、
「でも、ベルの時は俺から離れていた方がいい。というかそうして……」
「そんなにも危険なのかい?」
「それもあるけど、可愛いのが俺の側にいたらベルが加減するし、俺を……怒る……」
「……ああ……」
素早い理解、感謝するよ。
ミルモンを左肩に乗せたまま戦闘しようものなら、危険な場所にミルモンを留めるな! って間違いなくお怒りになるからな。
苛烈な折檻が更に強化されるとか嫌だからね……。
うん……。
戦う前から喰らうことは前提としておりますよ……。
「で、いつ挑むんだ?」
「決まっているでしょう」
ガルム氏の問いに対して、この世界だと合法であるタンカードに入った酒を一気に呷る。
柑橘系で作られたスッキリとしつつも甘味も強い酒にて勢いをもらい、椅子から立ち上がり、
「今から挑戦の約束をもらってきますよ! 明日の昼に修練場で腕試しだ! ってね!」
「ならばその時間に俺も見物のために訪れさせてもらおう」
「強者である俺の勇ましい姿を刮目して見ていてくださいよ」
勇者として、そして強者としてベルと戦ってやります! って返せば、ガルム氏は期待させてもらう。と、言って、空になった俺のタンカードに自身のタンカードをコツンと当て、豪快に飲み干す姿で俺を鼓舞してくれる。
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