PHASE-1338【大通りを進む】
頭さえ無事なら超速再生をしてくるトロールだけども、原形を留めないダメージを被れば、生命は停止。
直撃だったのは一人だったけど、アハト・アハトの衝撃はとてつもないものであり、隣にいたもう一人も衝撃だけで命を失うことになった。
「な、なんだ!?」
と、衝撃により転倒していた残りの二人の内、一人が何が起こったのかを理解できない声を上げる。
その間に、オートリロードにより次弾が装填される。
再びL2トリガーで狙いを定め、驚きの声を上げて尻餅をついたトロールへと目がけて放つ。
――これで三人目。
ただ事ではないと判断した最後のトロールが、盾を捨てて逃げだそうとしたところに、
「ファイヤーボール」
と、俺に代わってコクリコ。
今度のはオスカーとミッターによる力の底上げによるもの。
アドンとサムソンと共に、バランスボールサイズの火球が放たれる。
盾を手放し、こちらに見せる背中に直撃すれば、トロールは爆炎に包まれた。
重装備を纏った巨体であろうとも、コクリコの魔法の前には動く事も出来ずに命を失うことになった。
やはり頭部が無事であっても、オーバーキルによるダメージを受ければ、超速再生のようなスキル持ちであっても助かることはないんだな。
「今の私ならトロールでも問題なく一撃ですね」
いや、本当に強くなったなコクリコ。回復能力持ちで重装備のトロールを倒してしまうんだからな。
弱点があるとすれば、魔法を強化させるために、装身具から力を引き出すことに集中しないといけない時間が必要なところだろう。
そこで距離を詰められると魔導師は不利になる。
でもコクリコの場合――、
「今度は素手で倒したいですね!」
と、自信を持って言えるくらいに接近戦も強いからな。
接近と遠距離をこなせる魔導師ってのは、ある意味チートな立ち位置だな。
チートなんて発想が浮かぶほどにコクリコも成長。
とはいえ、真のチート能力者たちの前では霞んでしまうのも事実。
シャルナの時もそうだったけど、ベルとゲッコーさんの存在が、俺も含めて霞ませるんだよな。
「たゆまぬ精進にて、更なる高みを目指しましょう!」
俺の気持ちを知ってか知らずか、コクリコの声高による誓いが戦車の中まで届いてくる。
俺達の成長による実力が、強者の存在によって霞まない程度には、力をつけていかないといけないよな。
と、思わせてくれるよ。
――ふむん。
ティーガー1の車両内部でディスプレイ越しに辺りを見渡す。
そんな中でカンカンと頭上からノック音がすれば、
「トロール戦以降、静かさが続きますね」
「そうだよな」
俺と同様の思いを声に出してくれるコクリコに返しつつ、もう一度ディスプレイにて周囲を見渡す。
俺が確認しなくても、戦車跨乗による二人が周囲を警戒しているから無用な行動ではあるんだけども。
――ディスプレイのミニマップにも赤点による脅威反応もない。
――四人のトロールを撃退後、ティーガー1にて堂々とこの拠点の大通りと思われる道を真っ直ぐに進んで行くも、相手側からのアクションがない。
道中、竪穴住居内も調べながら進んではいるが、トロール戦以降はスムーズに進めている。
「このままだと直ぐさま中央部分まで到着できそうだな」
キューポラから上半身だけを出して俺も肉眼で周囲を確認しつつ、ティーガー1を操作しながら、
「嵐の前の静けさってやつかな」
と、継げば、
「会頭の言は正しいものかと」
と、パロンズ氏が続いてくれる。
続いてくれつつの動作は、食指を空へと向けるもの。
見上げれば、
「白煙の量がさっきよりも減っているように見えますね」
「その様です。会頭、相手は作業を中断しているものと考えられます」
中断となれば――、
「作業に携わっていた連中も動員して、こちらに備えていると考えるべきですね」
「そうだと思われます」
こちらの目に見えない所でちゃっかりと整えているようだな。
まず間違いなく、ティーガー1を目にした偵察はいたんだろうけどね。
だからこそ、重装備からなるトロールをこちらに投入してきたんだろうし。
結果として戻ってこなかった事で、戦力を無駄に割くことをせずに、中央での勝負に力を注ぐってところなんだろうな。
うむ。やはり俺、この森の戦闘に突入してからというもの、知的な考察が出来ているような気がする。
お馬鹿な俺だが、それなりに考えているような気がする。
王都に滞在していたからな。先生のユニークスキルが俺にも反映されているんだろう。
決して賢くないので、賢くなった発言はしないけども。
間違いなくコクリコに馬鹿にされるって分かっているからな。
「相手は総力戦にて我々に挑んでくるのかもしれませんね。そう考えるだけでワクワクします」
今回、絶好調なコクリコ。
大軍を相手にする可能性があっても、それに恐怖を覚えることなく挑める気概を維持できるのは美点だよな。
「迎撃から邀撃へと移行したということでしょうから、油断をせずにまいりましょう」
コクリコと違って慎重なパロンズ氏の発言に気を引き締めさせてもらおう。
――。
「兄ちゃん、この辺も堂々と行けそうだからドンドンと突き進もう」
「おうよ」
戦闘では活躍できなかったからと、小さな体を活用したミルモンがコウモリのような羽を羽ばたかせて、先導役と偵察を買って出てくれる。
シャルナほどじゃないけども、小さな体を活かし、加えて負の感情を感じ取れる能力によって周囲を索敵。
こちらに対して何かしらの負の感情を抱いているという者が現状、存在していない。つまりはこの場に脅威となる存在がいないというのが分かる。
見通す力だけでなく、こういった能力での偵察も可能なのは有益だな。
負の感情を抱いていないと意味ないけども、このティーガー1の姿を目にして脅威を抱かないってのは考えられないから、実際いないと考えていいだろう。
そう思いつつも、警戒をしながら進んで行けば――、
「トール。目的地に到着と考えていいですね」
「だな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます