PHASE-1305【大生物のあとしまつ】
――対処できたことと安堵で二人が笑みを向け合う中――、
「ですが遅かったのも事実。シャルナとタチアナの掩護ありきでしたよ。もっと次への行動へと素早く移行できないと駄目です。相手は待ってくれませんからね」
俺とは逆に悪いところを指摘するコクリコ。
発言に対して素直に頷く二人。
本来なら称賛と一緒に俺がその部分も言わないといけない事だったな。
コクリコに言わせたのは申し訳なかった。
「まあ前衛が一体を中衛と後衛に任せっきりだったのは反省だよな」
「あえてでしょ」
「まあ、うん」
このくらいの手合いを対処できないなら申し訳ないけど、アラムロス窟に強制待機とも考えていたからな。
その心配はないくらいに練度は高かったけど。
後は場慣れだろう。
慣れていけば冷静な状態を維持しつつ、素早く次への行動に移る事が出来るようになるだろうからな。
この部分は俺も研鑽していかないといけないところだけども。
「ううう……」
「どうしたミルモン?」
「オイラも活躍したかったよ……」
「いやいや、道を指し示すこと自体が大活躍だからな」
「オイラとしては戦闘に参加したかったよ……」
短気ゆえに好戦的でもあるからな。
「アクセル使用時に、離れなかったのは凄かったぞ」
「まあね」
褒めてあげるとちょっと機嫌がよくなった。
「活躍する機会はあるさ。ミルモンにはミルモンに出来る事ってのがあるからな。そこで力を振るってほしい。というか、現状でも十分に振るってもらってるしな。今後も頼むよ」
「お任せさ!」
あっという間に上機嫌。
やはりミルモンの扱い方は、コクリコと同じような方法がいいようだな。
「それで――このアジャイルセンチピードはどうします?」
俺とミルモンのやり取りに一区切りついたところでコルレオンが死骸を指さす。
巨大なムカデの亡骸が四体。
このままにするのは惜しいとのこと。
素材として確保するべきだろうと提案するコルレオンにパロンズ氏も賛同。
鉄球によるダメージは受けたけども、ダートを弾くだけの外骨格は防具の素材として適しているし、一メートルを優に超える左右の長い顎肢も剣やナイフとして使用できる。
アジャイルセンチピードの幼体の顎肢を利用して、ゴロ太がソードブレイカーを俺の為に制作してくれたしな。
――……まあ、使ったことはほぼ無いと言ってもいいけども……。
アンクルホルスターに収まるチーフスペシャルと、ゴロ太のナイフからは「解せぬ……」という幻聴が聞こえてきそうだ。
「会頭。どうしますか? 無理なら放置ということでいいでしょうか?」
「大地に帰らせ、新たなる動植物の糧にするのもいいでしょうな」
と、コルレオンとパロンズ氏。
それはそれでいいとも思うけど、素材として活用できるのをこのままにするってのは貧乏性な俺には出来ないのも事実。
「この辺りならまだ窟まで近いから、ドワーフさん達にお願いするのもいいかもしれないけども――」
わざわざ戻るのも面倒だし、窟の方々に迷惑をかけるのもあれだしな。
となると――、
「トールはトラックなるものが出せるでしょう。なにをそんなに考え込む必要があるのですか」
「コクリコの言うとおりだよな」
俺もその答えを選択しようとしていたところなんですよ。
木々が伸び、下生えと隆起した地面の中で召喚するのが難しいと思っていたから躊躇していただけ。
コルレオンがトドメを刺したアジャイルセンチピードがダメージを受けた時に地面で暴れ回ってくれたことで、そこそこ広い空間が出来ていたのでそこを利用させてもらおう。
――……利用はしたけども、流石にトラック一台を召喚するには無理があったようで、木々が原因で傾いた姿で召喚。
こういう時、宙空に大小構わずなんでも収納できるアイテムボックスという能力がある主人公たちが羨ましくなる。
車体の姿勢はどうあれ、積めそうだから良しとしよう。
問題は、
「どう積み込むかだな」
「私は周囲を警戒しておくから」
即そう発するのはシャルナ。
虫系はベルと同様で苦手だからな。
切り口からは青い体液も出ているし……。
俺も積み込み作業は拒否したいところ。
なのでシャルナに便乗するように――、
「俺は防衛を行う!」
「駄目です!」
「駄目かぁ……」
直ぐさまコクリコから却下。
現状、脅威もないのに防衛なんてしなくていいと、至極真っ当な返しを受ける。
でもってシャルナと一緒に自分も周囲を警戒すると言って、積み込み作業をスマートに回避。
「はぁ……」
大体、こんなデカいのを持ち上げて運ぶとか、ピリアで肉体強化しても流石に無理があるっての……。
「ぶつ切りにして運びます?」
「お、おお……」
そう言って双剣の一振りだけを抜剣するコルレオン。
バイタリティは俺よりもはるかに高い。
艶ある紫黒の外骨格の切り口から青い体液が出ているだけでも嫌なのに、これ以上に体液まみれとなった部位を持って運ぶなんて、拙者、嫌でござる。
以前の洞窟で、ダイヒレンの白い体液が一帯を染め上げた光景を思い出してしまい、背中から尻にかけて寒いものが走る……。
「よし、ここはゴロ丸に頼もう」
三メートルサイズのミスリルゴーレムの力なら積み込み作業も楽ってもんだ。
首にぶら下げている地龍の角の一欠である曲玉を手にしようとしたところで、
「会頭。ここは自分に全てを任せてください。その間、皆さんは体を休めていてください」
ズイッと俺へと距離を詰めてきてからの力強い発言。
「パロンズ氏だけに運ばせるなんて出来ませんよ」
いくら筋力向上を目指しているとはいえ、そういうのは安全圏である王都だけでやっていただきたい。
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