PHASE-1178【すげー上からだな】
「で、どうだい?」
巨木の影に隠れてこちらを窺うゴブリン達を見やりつつ、再び視線をデミタスへと戻して問う。
今度はしっかりと大きな声で問えば、デミタスの金髪からわずかに覗かせる耳がピクリと動いた。
よくよく考えると人間と同じ耳だよな。
元々が狐の姿をした亜人だったんだからケモ耳だったら尚よしだったのにな~。
なんて事を考えられるくらいに余裕がある長い間だった。
だからといってデミタスが俺を無視しているわけではない。
ゆっくりと俺の方を向く。
その表情は今までの強者という表情ではなかった。
表情には恐怖が混じっているように思えた。
「な……なんなのだ……。何者なのだお前は……!」
と、はたして正にで、震える声は恐怖を抱いているものだった。
「勇者から臆病者へと称号を変えた方がいいとお前に言われた男だ」
「そんな下らないことを聞いているわけじゃないのよ!? っぅ……」
大声による発言が斬撃部分に響いたようで、デミタスは顔を歪めて片膝をつく。
「いきなり大きな声を出しからだぞ。大丈夫か?」
「敵を心配するなっ!? うぅぅ……」
「だから大きな声を出すなよ」
「う、うるさい! お前は一体何者なの!? ――! 天の使いだというのは本当だったようね!」
「天の使いって何だよ?」
「お前はこの世界に降り立ったと聞く。どこから来た!」
どこから来たって言われてもな。別の世界の日本って国と言ったところで理解は出来ないだろう。
いや、デミタスのような柔軟性のある天才タイプなら、発言を受け入れて理解をしようとするだろうな。
現に目の前に召喚されたモノがこの世界とは一線を画すモノだからな。別の世界の住人だって事をすんなりと受け入れるだろうね。
――なので教えない。
わざわざこちらの個人情報を敵側に教えることもない。
俺の情報は少なからず相手にバレているようだからな。これ以上の個人情報を教える事もない。
天の使いって発言からして――確かミルトンだったっけ? 名前より出っ歯が目立っていた王様の臣下。魔王軍に内通していたヤツ。
おそらくはソイツ発信の情報で耳にしたんだろうな。
「まあ、想像にお任せするよ」
「不愉快な返答ね。曖昧な返しは、真実である事を隠そうとしていると判断させてもらう」
「はいはい」
簡素に返しつつも心底ではデミタスの読みの良さに感服する。
戦いが始まってから現在に至るまで看破してくるからね。
今では驚きより感服の方が勝っている。
「そうか。お前は本当にこの世界の為に現れたのだな……」
なんだ? 俺を救世主様として崇めてくれるのかな?
だったら俺をボコボコにした事は許してあげてもいいけど。
もちろんこの国でやらかしたことは許さないけどな。
「こんなのが、このような力を……」
こんなのがとか言うな。失礼すぎる。
「いいだろう。約束通りにお前を生かしてあげる。この力を以てして
――…………。
――……。
「……いや何様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
なにその上から目線。
「お前は俺の上役かよ!」
「黙れ。ここで生かしてやるといっているの。この力をしっかりと振るうのよ。ちなみにコレは直ぐに動くのかしら?」
「ああ――まあ」
――多分。ミズーリと同じような扱いになるなら俺の操作で動くだろうね。
「そう――ならばここは素直に撤退させてもらいましょう。コレが理由となるなら私の失敗も咎められない。むしろこの存在の報告を耳にすれば褒賞も出るくらいでしょうね。聖祚はコレを絶対に手に入れようとする」
「奪ったところで扱えないさ」
「聖祚の事を理解しない者はそう思うでしょうね。私は今日ここで見たことを伝えさせてもらう。聖祚と護衛軍の忠臣達だけに限定して」
その他の魔王軍勢力に伝えないのは、護衛軍に比べて信用できないってことなんだろう。
何より俺のこの力を利用して、カルナックとソレに付き従う連中に対して復讐したいんだろうからな。
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