PHASE-1087【短気は結局、力頼みになる】
「それでポルパロング殿は?」
「まずはここで謝罪だ! それを確認した後、主はお会いになる」
「なにも悪い事してないのに?」
「いい加減にしろよ人間! 貴様はここに出向いた時点で我々に従うんだよ!」
「なんで?」
「そら! フレイムアロー」
ドンッと激しい音と共に俺の横に炎の矢というより槍が突き刺さる。
「おお……」
「驚くのも当然だろう。エルフが使用すれば初歩の低位魔法でもこの威力だからな」
「いや驚くのはそこじゃなくて、主の屋敷の床を抉っていいのか?」
「こちらに従わない場合は力を使ってもいいと言われているのでな」
何とも性急だな。
主がどうのこうのというより、コイツ本人が激オコで力に打って出ただけだよね。
周囲の正規兵の皆さんは驚いているもの。
私兵だけは戦いは確定していたのが当然とばかりに、口角を上げて佇んでいる。
「こんな事をしたら外交問題ですよ。こう見えても俺は公爵ですよ」
「だからここでしっかりと上下関係を教えてやるんだよ。力の前に屈服しろ」
「いやあのね。俺の力とか聞いてるでしょ」
「無論だ。だがこの屋敷で巨大なモノを召喚できるのか? ここは王の城の一部でもある。そこに巨大な船を出せば、王はお前たち人間に対して心証を害するだろう」
こっちはすでに短絡バカのお前の行動で心証を害してんだけどな。
――はぁぁぁ……。
本当に溜息しか出ない。
話だけで無事に解決することも出来るだろうと期待してたところもあるんだけどな……。
長命で聡明? なエルフだから、もちろんそういった解決策も打ち出してくると思っていたのにな。
確かに俺が大人になって向こうの言うように形だけでも謝罪をすればいいんだろうけど、結果としては向こうがつけ上がるだけだろうし。
どのみち謝罪を口にしたところで、今度は謝罪した俺に脅しとして力を行使し、俺達を従わせて自分たちのために利用するって考えに至るのも目に見えている。
「馬鹿は種族が違っても馬鹿なんだな……」
「その発言は死にも値する」
「ああそうかよ」
値すると発せば間髪入れずにフレイムアローと続く。
ご自慢の脅し魔法なんだろう。再び槍サイズのを掌の上に顕現させれば槍投げのフォームとなり、
「今度は脅しではない!」
こちらへと目がけて投擲。
素晴らしい勢いだ。
――勢いだけだ。
「リンさんや、本物を見せてあげなさい」
「いいわよ」
あら、今回は素直だな。
大方、高い位置からの上から目線のお馬鹿が許せなかったんだろう。
上から目線はリンの独擅場だもんな。
背後で轟々とした音が発生すれば、次には俺の横を通過する。
こちらに迫ってくる槍サイズの炎の矢を電柱サイズの炎の矢が迎撃。
迎撃だけでは物足りないとばかりに呑み込めば、そのまま術者へと目がけて飛んでいく。
「ハハ、余裕の顔が即座に歪んだな」
「そうね」
リンの電柱サイズがテイワイズに襲いかかる。
「なんだ!? 何なのだ!」
とか言いながらしっかりと魔法による障壁を顕現させる。
プロテクションを当たり前のように使用できるのは流石はエルフ。
「おい! なんだこの魔法は!?」
「どっからどう見てもフレイムアローでしょ。貴男のこそ何なの? あんなのでよくもまあ強者感を醸し出すものね~。ああ恥ずかしい」
「女ぁ!」
リンに挑発を受ければ怒髪天を衝くってやつだ。
怒りのままに周囲に指示を出している。
リンの言うように恥ずかしい奴だよ。
自信満々の魔法を容易く超えられれば、次には周囲に指示を出して数で訴えてくるんだからな。
「ポルパロング様の屋敷で魔法を使用した。この者達は国に騒乱をもたらす者達だ! 勇者でもなければ公爵でもない。討伐せよ」
「お前が最初に使ったんだろうが」
「黙れ! 厄災なる存在!!」
わ~お。この手合いは自分の言い分だけを好きなだけ発言して、こっちサイドの話は一切聞かない駄目駄目なやつだ。
駄目なのは初見で分かっていたけども。
「アッパーテンペスト」
背後からの声と同時に、テイワイズが立つ踊り場に竜巻が顕現。
回避する表情は引きつっていた。
「良いんだよねトール。向こうが仕掛けてきたんだから!」
「いいぞ」
肯定すればシャルナは勝ち気の笑みによる戦闘モード。
反面、攻撃をされた方は舌打ちをしながら一階へと着地。
着地と同時に、
「戦闘準備」
発言に従って即座に動くのは私兵の連中。
躊躇しているのは正規兵。
「正規の皆さんは怪我したくないなら動かないでくださいね。私兵はしばくけど」
「一斉攻撃! やれ!」
テイワイズがこちらへと手を向ければ、色とりどりの魔法が迫る。
大したもので全てが中位魔法以上。
コクリコにも見習ってほしいもんだ。
コイツ等には姉御モードの時のコクリコの精神面を見習ってほしいけど。
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