PHASE-1031【年齢がレベチ……】

 家族発言をした人物が着地した途端に、ルーシャンナルさんをはじめとしたエルフさん達が下馬をして頭を下げていた。

 どうやらお偉いさんのようなので、俺も直ぐにダイフクから降りようとしたところで――、


「勇者殿はそのままで結構です」

 と、こちらに掌を見せて下馬を制止。

 やはり俺の好感度はエルフの国ではべらぼうに高い模様。

 本当に何で?

 ここまでの道中でもその質問はルーシャンナルさんにしたんだけども、ついてからのお楽しみ的な返しばかりで、ちゃんとした答えは返してくれなかった。


「勇者殿と御一行はいいとして。シャルナはさっさとその――その……凄いな……。この鉄の箱は馬などの動力を必要とせずに自走するのか? 魔法による駆動でもないようだし。話には聞いていたが、実際に目にすると凄いな……」

 シャルナに下車を促そうとしていたのに、JLTVを目の前にした途端、興味はそっちに向いたご様子。

 目を輝かせて見る姿は、おもちゃ売り場で自分の欲しい物を目にする子供のようだった。

 シャルナ――というかエルフ特有なのだろう。透き通るような金の髪と濃い碧眼に白皙はくせき

 全てが揃って美となる存在がエルフなんだろうな。

 それにしても、いろんな作品でもそうだけど、エルフって皆して長髪だよな。何かしらの仕来りでもあるのかな?

 体に目を移せば、纏うのは深緑のマントに青白く輝くブレストプレート。

 間違いなくミスリル製だ。

 ミスリルのブレストプレートを装備している事から、この人物は結構な権力を持ったエルフさんなんだろうね。


「ええっと、お兄さんでしょうか?」

 中々にJLTVから離れようとしないシャルナのお兄さんと思われる人物に話しかければ、


「おっと!? これは大変失礼を」

 照れ隠しなのか咳を一つ打ち、俺と対面すると深々と頭を下げてくる。


「ルミナングス・ファロンドと申します」

 ファロンド。間違いなくシャルナのご家族だね。


「兄ではなく、父です」

 ――…………。


 ――……。


「「「「え!?」」」」

 父という発言に俺だけでなく車内でも一人を除いて驚きの声を上げる。

 珍しくリンも驚いていた。


「今年で5305となります」


 ――…………。


 ――……。


「「「「ええっ!?」」」」

 ここも揃って驚き。

 さっきよりも大きな声だった。

 まさかのお父さん。

 こんなに若いのにか!

 見た目だけなら二十代。シャルナのお兄さんと言われても容易に信じてしまうくらいに若々しい。

 小じわ? ほうれい線? 何それ? と老いに悩む者達は羨ましい限りだよ。


 にしても、5305歳なんて言われても信じられないぞ。若すぎる。

 ――……いやまあ、そもそも5305歳っていうのがね……。

 これもう訳わかんねえな……。

 エルフの年齢に関しては深く考えない方がいいな。その方が精神的に楽だ。


「遠坂 亨と申します。じゅ、十七歳に……なりました」

 ――……なんだろう。年齢の数値があまりにも違いすぎるからか、十七歳という年齢が凄く恥ずかしいような、負けたような気になるんですけど……。

 考えなければ精神的に楽とは思ってはいるが、やはり圧倒的な年齢差によるプレッシャーは受けてしまう。


 シャルナの1904歳の時も驚いたもんだけど、数字が違いすぎる……。

 皆して驚きから固まってしまっているからね。

 ただ一人ギムロンのリアクションは薄い。

 流石はドワーフといったところか。

 リンとは違って素の長命だからな。エルフはそれが当たり前としっかりと認識しているから驚くことはないんだろう。

 エルフとドワーフは長命の代表格。

 だとしても、ギムロンってたしか200歳くらいだったよな。

 ドワーフも長命だろうけども、この圧倒的な数値の差は凄いな……。


「十七歳ですか。今が楽しい時期ですね」

 人間目線から見て、お父さんはそういった発言を選んでくださったんでしょうが……、これほど心に届かない発言もないだろう……。

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