PHASE-947【Bioチック】
ベルが乙女モードになってしまったけども、俺としては、
「その方が頑張れる!」
強い男を見せられるチャンスだからな。
俺の逞しさを見せて――いや、魅せてやるぜ!
「なんか頭の悪そうな顔になってますね」
その発言が頭にきたのでコクリコは次のターゲット。
でもその前に目の前のターゲット。
鎌首を上げたギガースワーム・エクソアーマーに向かって軽く跳躍し、鞘から残火を走らせつつそのまま斬撃。
――前回とほぼ変わらない攻撃方法の横一文字。
でもそれでいい。
現状だと問題なく対応できる相手。
だが生命力は高く、両断された体と無数の足がバタバタと動く。
その様を目にしてしまったからか、
「ひぃ……」
ベルだけは弱々しい。
本当にベルらしからぬ声を漏らすね~。
美人より可愛さが秀でてるよ。
「もう大丈夫だから」
肩越しで見つつ、自分の中で思っている男前な声を発し、バタバタと暴れる体がベルの視界に入らないよう遮るように立ってやる。
「す、すまない」
「いや~任せてくれ」
いいよ。ようやく勇者に守られる姫みたいな立ち位置になったじゃないか。
まあ、すまないって台詞がもっと女の子らしかったら最高だったんだけどな。
「なんか勘違いを全力で利用しているような気がしますね~」
さっきからうるさいぞネクストターゲット。それとも何か? 俺が一人の女だけを守っているから嫉妬しているのか? 自分も守ってもらいたいと思っているのかな?
――などと勘違いを全力で楽しみつつも、対象からは視線は外さない。
下半身は力のない動きに変わっているが、未だ上半身は筒状の口を広げて攻撃姿勢を崩そうとしない。
「ふん!」
痛々しい姿に対し、慈悲も込めて頭部に唐竹割り。
縦線を書けば動きが止まる。
残心から両手を合わせる所作。
戦いの中でベルの可愛さに心おどる俺。
倒したらしっかりと両手を合わせる俺。
楽しむ感情と哀悼の感情を同居させることが当たり前になっている。
戦いの場に立つことで色々と慣れてくるものがある。
慣れすぎても駄目なんだろうけど。
「で、ベル」
「どうした?」
先ほどまでと違って凛とした佇まい。
このギャップもありがたき幸せ。
――向こう側はどうだったのかを問えば、
「何かしらの研究施設のようだった」
で、確認している時、薄暗い室内でウネウネとしたのが地面を這い、ベルを見つけて襲いかかってきたそうだ。
「よし、皆しっかりと警戒しつつ進もう」
でっかいミミズヤスデを倒したことから、俺が先頭を担当することになる。
皆が安心して進めるように、
「イグニース」
壁役として炎の盾を前面に展開しながら、ジャンパーという転移魔法へと入って行く。
「おお、あっという間に別空間だな」
扉を開けたら別の部屋って当たり前の感覚が当たり前に思えない感じ。
――……自分で思っていてよく分からん感情だな。
「確かにベルの言うとおりだな」
繋がった先は何かしらの研究施設のようだけど――暗い。
炎の盾のおかげで室内は照らされてはいるけども、室内は広いようで、全体を見渡すには光量は頼りない。
ビジョン持ちの俺はもちろん問題ないが、
「コクリコとアビゲイルさんの為にリンかシャルナ」
「じゃあ、老体には酷だから私が」
「あんただって五百年おばあちゃんでしょ!」
「私は年齢と肉体を二十代で固定しているから。貴女みたいにしっかりと歳を刻んではいないのよ。おばあちゃん」
「キィィィィイ」
「もうソレはいいからさっさとしてくれ」
二人の言い争いを強制的に終わらせてリンにファイアフライを唱えてもらう。
流石はネクロマンサー。最上級の魔導師なだけあって、ファイアフライ一つの光源だけで部屋全体を隅々まで確認することが出来る。
踏み入った室内はやはり広く、全体を見渡せば、壁に沿って透明なカプセルがいくつも並んでいる光景。
「このカプセルには何かしらが入っていたんだろうな」
空のカプセルだけど、わずかだが薄紫色の液体が底に溜まっているのを確認できた。
バイオ的な感じがプンプンとするね。
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