PHASE-913【ストレス社会に欲しいスキル】

「それで叔父上。ここは何処でしょうか? 叔父上が慌ててもいないことから、ここは我々にとって脅威となる場所ではないのは分かりますが」


「ここは私が現在お世話になっているところです」


「ほうほう」

 ゆっくりと頷き室内にいる俺達を見渡す荀攸さん。

 そんな荀攸さんの服装は、色は先生同様に青を基調としたもので、袖口が広い文官然としたもの。

 腕を動かせば袖口が優雅に動く。

 その所作によって向けられた腕の方向には俺が立つ。


「してこの少年は」

 誰よりも荀攸さんの側に立つ俺が一番に気になったようで先生へと問い、


「現在の私の主です」

 と、当たり前とばかりに返答。


「ある――じ?」


「そうです。主です」


「は、はあ……?」

 流石の天才も理解できない様子。

 仕方ないよね。曹操じゃなくて俺が主なんだからね。

 曹操と比べると圧倒的にカリスマ性が欠如しているもんね。

 先生は俺のストレージデータがそのまま反映されているから、俺に対しての忠誠心がMAXの100だけども、荀攸さんはそうじゃないからな。

 ゲッコーさんみたいに半々ってところだろうな。


 ――どういった経緯で先生が俺達やこの世界に協力しているのかを語ってくれる。

 流石にマナによるネイコスという魔法。ピリアによるスキルという言葉には不可思議な表情を浮かべていたけども、その辺は直ぐさま俺やリンが室内でデモンストレーションを行って存在を証明する。


 コクリコが目立ちたがったけども、こいつのは室内に被害が出るので、俺が言わずとも結果を理解しているベルとシャルナが動きを制してくれていた。

 

 不可思議から驚きの表情になったのも束の間。

 自分の知らない事象に興奮。

 摩訶不思議な経験をこの身で体験できるというのは喜ばしいとノリノリであった。

 穏和だけども恐れを知らない剛胆な性格なだけあって、未体験なものには好奇心が刺激されるようだ。


「お力をお貸しいただけないでしょうか」

 お願いの為に頭を下げる。


「主。頭を下げなくとも公達は協力してくれますよ」


「いえいえ、俺のような凡人が出来る事なんて平身低頭くらいですから」


「ほうほう。叔父上、この少年は中々に人誑しの才があるようですよ」


「そうでしょう。自分でも知らず知らずにやっているので本物でしょうね。この国の王にでも感化されたのか。もしくは元々もっていた才能かも知れません」


「俺なんてまだまだですよ。だからこそ力を借りないと駄目なんです」


「どうですか公達」


「――――いいでしょう。叔父上が信頼している人物のようですからね。微力ではありますがご助力いたします」


「助かります」


「おやめくださいそんなに深々と」


「我が甥の力を得られるのならば、私も主同様に平身低頭になるというものです」

 先生も十分に人誑しだと思うけどね。


 さて――、

 うむ。想像より俺に対する数値がいいね。

 荀攸さんのパラメータを目にしてそう思う。


 武力41

 知力98

 統率94

 魅力89

 忠誠70


 武力は先生より高く、知力はベルと同等。統率でベルに勝ってゲッコーさんと先生よりやや劣る。

 忠誠心がゲッコーさんと違って最初から高めなのは、叔父である先生が俺を信頼しているというのが反映しているんだろうな。

 高水準の数値からなる素晴らしい人材だ。


 で、この人のユニークスキルは、この人自身を現すような言葉がスキル名となった――【泰然自若】

 自分を含めて指揮下の者たちに影響する能力。

 一切の動揺が発生しなくなり、状態異常を完全回避できる能力。

 この世界においても十分にチートな能力だな。自分も含めて指揮下全てが状態異常を回避できる。


 つまりは精神方面に攻撃をしてくる魔法や、アンデッドが有する負の力による恐怖などを植え付ける攻撃も一切通用しなくなるし、チャームのような能力も通用しなくなる。

 サキュバスメイドさん達の魅了効果もはじき飛ばす鋼の意思を有しているって事だろうな。

 

 これは前線に出てこそ発揮される能力でもあるだろうけど、政治面でも運用できる。

 部下達がストレスを受け付けないで行政などの政務に励めるって事だからな。

 ストレス社会な日本において、上司として是非にいてほしい存在だね。

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