PHASE-910【ですですでっす!】
「ですがその様な事を勝手に――」
「出来るよ。だって俺は公爵なんだから。モンドよ、上の命令は――」
「絶対です」
「そう絶対。モンド自身が言ったことだ。なので上も上であるこのミルド領の長である公爵の俺の命令は、超でスーパーで極でハイパー絶っっっっっっ対なんでっす! です! ですですでっす!」
「凄いアホな言い方だな」
「ゲッコーさん、アホな言い方のほうがインパクトがあるでしょ」
「確かに単純だからこそ分かりやすく伝わりやすい。アホな言い方なのは不変だが」
「このミルド領が良くなるなら俺はアホで結構。なのでモンド。このアホに付き合ってもらうからな。しっかりと支えてくれよ。何たって俺はアホなんだから」
「畏まりました。謹んでレンググ領、筆頭行政官の任に就かせていただきます」
モンドに続いて特務行政官の任に就くことを受け入れてくれる行政官たち。
皆を見渡してから、
「ならばよし!」
と、格好つけてみる。
「ところで先ほどから聞いてますが、特務機関には私は入れるのでしょうか!」
「出来ることなら俺も入りたいな」
――……分かってはいたけど、変なのが二匹釣れた……。
お宅等は俺のパーティーとして頑張ってください。
よし。――――俺だけだとこれが精一杯だな。
人選は間違いないだろうとゲッコーさんが言ってくれてるし、問題はないだろう。
ククナルから出立して東に移動。
町を出る時には奴隷制を撤廃した事がモンド達によって瞬く間に広められ、町を訪れた時は喪服の人々による出迎えであったけど、出立する時は普通の服装で見送られたのは嬉しかった。
見送りの中には冒険者の方々もいた。
奴隷売買に荷担していた者への取り締まりを強化した事で、傭兵団を拘束したり町から閉め出すことも成功。
これによって阻害されていたクエストが平常運転へとなった事で、冒険者たちの仕事も増えた。
これで新人たちに適正クエストを受けさせて成長させることが出来る。と、感謝の言葉を馬上にて受ける。
恨みを持つ者たちもいるけど、好意を抱いてくれる人々もいるというのが分かっただけでも喜ばしい。
――――道中は何事もなく安全に移動できた。
街道の治安がよいのはいい事だ。商人や旅人が安全に移動できるからな。
もっともっと治安をよくするために、各地もククナルのようにしていかないとな。
なので――、
「お任せします」
いくつかの町村を通過して見えてきたのは巨大な防御壁。
防御壁前の街道では一軍が待機。先生がその先頭に立ってのお出迎え。
「ククナルでのご活躍は耳にしましたよ」
一軍は征北騎士団であり、ヨハンによる指揮。騎士団は儀仗用の槍を持って俺達を歓迎。
「指摘する事などはありますか?」
「いえ、主の決断は素晴らしいものです。私もその場にいれば同様の事をしたでしょう」
「先生にそう言ってもらえる事が最高の称賛ですよ。でも俺では限界がありますので、特務機関に関しては先生に丸投げしたいです」
「受け止めましょう――と言いたいのですが」
公都にて爺様と一緒に今後の事を実行するにしても、人手が足りないという事実に直面しているそうだ。
本来、先生には王都を中心に活動してもらわないといけない。この地に長期に渡って拘束する事は出来ない。
そうなると先生の政策を維持するだけの才覚ある人材が必要となる。
人手不足の中でとなると難しいだろう。
「ここはやはり人材の投入が必須ですね」
「以前に申しておりましたね。是非にその人材をお願いいたします。その者の協力があるのなら、私にではなくその者に丸投げしてもよいでしょう。全てを解決するまで止まることなく行動してくれるはずです」
先生が全てを任せられる信頼ある人物。
ただ俺のストレージデータだと、この人物との関係性を構築していない状態。
だがここには先生がいる。
「こちらに協力してくれると思いますか?」
「異な事を仰いますね。私が協力する以上、問題はありません」
「堅実な人物ですからね」
「その通りです。我が甥は有能です」
名を出さなくてもやはり分かっていたか。
先生が問題ないと言うのなら問題ない。
説得の方はお願いして、俺は協力してほしいと全力で頭を下げればいいだけだ。
「では早速、呼ぶために場所を変えましょう。屋敷を借りております」
俺はてっきり公爵邸に移動するのかと思ったんだけども違ったようだ――。
「ふえ~」
街道から見ても巨大だとは分かってたけど、近くで見ると更に凄いな。
なにこの防御壁の高さ……。
王都の城壁より遙かに高いじゃないか。
壁上までの高さは王都城壁の倍の四十メートルはありそう。
防御壁から張り出した重層からなるタレットの胸壁部分の高さは地上から五十メートルはあるだろう。
見る者の頭内に難攻不落という言葉をダイレクトに叩き込んでくる造りだ。
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