PHASE-820【その名前やめて……】

「そんな! 疾風のマイネスが」

 驚くほどかよ。


「くそ。これならどうだ!」

 傭兵団が腕に刻んだトライバル系の入れ墨であるマジックカーブを使用。


「フレイムアロー」

 と、ファイヤーボールの一段階上に位置する魔法を発動する。

 リンが使用した時は電柱サイズだったが、修練も積んでもおらず、魔法が使用可能になる入れ墨を体に彫って自己満足で終わってるヤツのは細い枝のようなものだった。


「ふん」

 と、以前に矢を掴んだような要領で掴んでやる。


「馬鹿な!?」

 何が馬鹿なのか。こちとら火龍装備だっての。掴まなくてもこの程度なら当たったところでダメージすらないぞ。


「くそ! 俺の魔法を!」


「なら俺が!」

 続けて魔法を発動しようとするのが出てきたので――、


「よっと」

 地面を強く蹴って一足で二人へと接近し、腕を二回振って終わり。

 右と左のワンツーだけで終わる容易い連中。


「くらえぃ!」


「ほっ!」

 背後からの一撃を前回り受け身に近い動きで回避。

 立ち上がって背後からの相手に睨みを利かせれば、


「まさか一度ならず二度までもマイネスがやられるとはな」

 ――見た覚えがある。

 といってもコイツの顔は覚えていない。

 覚えているのはウォーハンマーだ。

 前回、馬鹿息子との会談時には背負っていたけども、今回はしっかりと両手で握っている。


「やはりマイネスは四人衆には似つかわしくなかったようだな」


「ああ、あいつは四人衆の中で最弱」

 と、また記憶にない二人が横から出て来てのテンプレ発言。

 発言からして、そして人数からして四人衆の残りの奴らだろう。

 俺の背後に立つ三人の登場に、俺を取り囲む傭兵団からわっと声が上がる。

 一応は実力者として尊敬されているようだ。


「底辺の中で憧れるとか。終わってんな」


「それは我々に言っているのかな?」


「俺以外、他に誰がいるんだよ? お前等しかいないだろうが。そんな事も分からないから底辺なんだよ」


「貴様!」

 丸太のような腕がウォーハンマーを大上段へと構えて驀地。

 マイネスに比べれば遅いが、そこいらの傭兵団よりは速い。


「ぬぅん!」

 振り下ろされたウォーハンマーから鈍い音。

 打ち込まれた地面が大きく窪む。


「お宅もピリアを使用出来るんだな」


「我がインクリーズによる一撃は、巨大なモンスターも打ち倒す」

 口角を上げても笑み。

 初歩のピリアでそこまでドヤられてもな。


「というか訂正していいか」


「何をだ?」


「巨大なモンスターも打ち倒す――じゃなくて、打ち倒せるはず――じゃないの? お前等って口ばっかりでモンスター討伐とか経験してなさそうだもん」


「本当に腹立たしい小僧だ!」


「その声の苛立ちようから察するに、本当だったみたいだな。否定もせずに真っ先にお怒りになるのがいい証拠」

 負けじと口端を上げてドヤってやれば、


「生意気っ! この刃壊はかいのジョルスが振るうの一撃で、その生意気な口をきけないようにしてやる! さあ我が膂力と得物に恐怖するがいい!」


「…………ええぇ……」


「いまさら臆しても遅い。許しを請う機会は逸している。あの世へと送ってやるぞ小僧!」

 ――……強いショックを受けてしまう……。

 まさかの武器名に我が耳を疑ってしまったし、ウォーハンマーで殴られるよりもキツい言葉の衝撃だった……。

 

 こいつらが中二病を拗らせているってのは理解していたけど、コイツの武器名と俺のギルド名がただの一文字違いっていうね……。

 俺が考えたギルド名と一文字違い……。

 こんなのと同レベルとか…………。虚無感にとらわれる……。

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