PHASE-760【開店もしてないのに常連かよ!】
号して一万五千と言うけど、まだ戦力はある。
ちらりとその力を持つ人物に目を向ければ――、
「あと千は加えていいわよ」
と、リンからのありがたい発言。
王都の改修作業はいったん中止。
アンデッド二千の内、千はバランド地方の地下施設。
残りの千を実働部隊として割り当ててくれる。
ネクロマンサー様々だ。
――さて。
謁見の間での話し合いも終わったけども、高順氏が来ない。
解散となったので俺達はギルドハウスに向かう。
もしかしたらいるかもしれない。
――――ふむ、いない。
まだ来てないのかな?
とりあえずは一階で待つ。パーティーメンバーは自由行動に移行。
一階では戦の前だけど、冒険者として胆力は一級品のようで、皆さん緊張は纏っていない。相も変わらずに騒がしい光景だ。
にしても、高順氏とは久しぶりの再会となるな。
一緒に戦った経験はないけど、活躍は聞いているし、今回は共に戦うことになる。大いに頼らせてもらおう。
――…………。
――……。
ふむ。
待てども待てども来やしない。
どうするよ。もう日も傾き始めたんだけど。
おかしいな。正午過ぎには来てもいいくらいだろう。
なんかあったのかな。心配になってくる。
王都からトールハンマーまでの道は安全が確保されているそうだけど、ここまで遅いと不安だ。
――……うん……。
中々にギルドハウスに顔を見せないから本格的に心配になってきた。
ベルと合流して南の街道を見てこようかな。
ギルドハウスからだとベルと行動するのが一番早いからな。
ベルのいる場所は、斜向かいのファンシーなお店が出来る予定の建物だし。
行って入ってみれば……。
「……何やってんですかね。高順氏」
「これは勇者よ。久しいな」
埃一つついていない美しい白銀の鎧に、赤い外套。
兜頂部の赤い毛飾りを揺らすハードボイルドが、なんか可愛いのに取り囲まれていますね。
「ここにいないでギルドの方に来てもらわないと」
「すまないな。月に一度、王都には顔を出すように知者殿に言われていてな。いつもの感覚だった」
先生にトールハンマーの進捗状況や近況を伝えるのもこの人の仕事らしい。
いつもは、ここやワック・ワックさんのいる作業場に寄ってからギルドハウスに赴くそうだ。
本来なら要塞防衛の指揮官なんだから留まって欲しいけども、自分から進んで王都にきて連絡をするという。
生真面目さってのがこの人の人格なんだから仕方がないと思ったのは――一瞬だった。
本当の目的は――、
「ほら、近くで取れたツルコケモモのじゃむなるものだ」
ゴロ太たちに会いに来ているって事だろうな。だからここか、ワックさんの作業場に最初に向かうんだろうし。
クランベリーのジャムを高順氏はお土産としてゴロ太や子コボルト達にあげている。
一人に大瓶を一つと明らかに甘やかしているように思える。
やはり子コボルト達はリオスに住んでいたということもあり、クランベリーのジャムを貰えば心から喜んでいた。
「ありがとう高順のおじさん」
ほっこり笑顔のゴロ太からお礼を言われれば、
「一杯食べて大きくなるのだぞ」
と、膝の上に乗せている美人様と同じような発言をする高順氏。
「よかったなゴロ太。皆」
「「「「うん♪」」」」
ちびっ子達の嬉しい返事にベルもご満悦。
白いのが皆して楽しげである。
それはいいんだけども。
「高順氏。北伐の事で話をですね――」
「それは後でもいいのではないか? べる殿に聞いたが決定はしたのだろう」
「はい」
「では後は敵陣を落とせばよいだけだろう」
「はい」
「難しい話ではない。まずはこちらを優先させてくれないか」
「…………はい……」
自分を隠すことなくモフモフを愛でる事が出来るタイプなんだな。
でも不機嫌ではないようだから、ベルから話は聞いたとしても、馬鹿息子のゴロ太を渡せという話は聞いていないようだ。
そこははしょってくれて助かるよベル。
流石に怒りに支配されたこの二人を制止するってのは、不可能だからな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます