PHASE-664【宇宙世紀の試作3号機ですかね】
「一気に決めるぞ」
ここでとどめといこう。
今度は二人で攻める。
初手に戻ったわけだが、初手と違ってリビングアーマーの妨害はない。
完全なる二対一だ。
「ディザスターナイトよ。卑怯とは言うまいな」
「ヴァァァ!!」
頭に纏わり付く炎の消火に必死で返事はしてくれないけども、その叫びを了解したという意味でとらせてもらう。
「ティンダー」
追撃のモロトフ。
掌だけでなく、一度発動してイメージをコントロール出来るようになれば指先にも出せるというのは分かった。
頑張れば五指に同時に顕現させることも出来そうな気がする。見た目だけならスゲー強うそうな禁呪法っぽい。
もちろん現状それを試す余裕はないので、モロトフだより。
消火に必死の所に追加の炎を加えてやる。
頭部から胸部に炎が燃え広がる。
「本当に今回のは炎が持続するぜ」
今回はちゃんと
ガソリンに灯油。砂糖も入れてるって言っていたな。
なんで砂糖なのかは分からんが……。
とにかく爆発だけでなくよく燃えるし、炎がへばりつくようにしつこく纏わり付いている。
暴れ回るディザスターナイトは手に持った装備を振り回す。
ファルシオンよりも面の広いタワーシールドを振り回される方が怖いな。
「コクリコ」
「御代わりを上げますよ」
追加のファイヤーボール。今度は直線を描きながら飛翔し――直撃。
ボンと大きな音で爆ぜる。
ここにきてコクリコのファイヤーボールのサイズが以前より大きくなっている気がする。
力をつけてきているってことだな。
爆発に二メートルオーバーの巨体がよろめく。
「ここだ!」
青白く輝くミスリルメイスを大上段に構えれば、
「合わせてくださいよ」
「なんでそっちに合わせるんだよ。俺に合わせろや!」
なんて返しつつ、しっかりとコクリコの動きに合わせる俺は紳士です。
コクリコが斜上段でミスリルフライパンを構えている姿は、戦闘中だけども滑稽で笑える。
というか、戦闘中だからこそ滑稽なんだよな。その姿。
その光景を見続けてしまう。
見続けるもんだから、自然とコクリコに合わせるって形になったわけだ。
「ヴァァア!」
炎を振り払うも時すでに遅し。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
ディザスターナイトの咆哮をかき消すコクリコが、跳躍からそのまま体重を乗せて、顔面にパカーンとフライパンを叩き付ける。
衝撃で弓なりに体が反れば、必然的にディザスターナイトの顔は天井を仰ぎ見る格好になる。
正確には天井ではなく直上から降下してくる俺なわけだが。
「おらぁぁぁぁぁ!」
コクリコに負けないくらいの裂帛の気合いで振り下ろすミスリルメイスをフライパンに続いて叩き込む。
頭蓋に張り付いたドドメ色の皮膚の下からゴシャリと潰れる感触が、メイスを握る俺の手に伝わってくる。
確実に倒したといった手応え。
だがここで手抜かりはしない。
大の字にて仰臥となっているところに、再び振り上げたメイスを全力で振り下ろそうと――したが、こういう時、俺よりも速いのがコクリコ。
「内包されし我が力よ、解放と共に大いに爆ぜよ――ポップフレア」
フレア系だと一番下の魔法らしいが、一応は中位でも強い方。
いちいち決め台詞を口にしながら、顔面へと目がけて唱える辺りは流石コクリコ。
そもそも外のマナであるネイコスを使用して魔法は使うんだから、内包じゃないぞ。それだとピリアあつかいだろ。
――……まあそんなツッコミはどうでもいいよな。うん……。
それ以上に……、
「だから零距離の意味!」
「確実に仕留めるためです! それに零距離は浪漫ですから」
今回、同様の行為が二回。オムニガル戦の時も含めれば三回。是非にやめてもらいたい! 味方が側にいる時には絶対にやめてもらいたい!!
ただでさえ防御力がローブだけだってのに、なんでこうも無鉄砲なんだ……。
これ、バーストフレアなんかを習得した日には……。
――……想像するだけで背筋が寒くなる……。
二本目のハイポーションを勇ましく飲むその姿は、栄養ドリンクのCMオファーが来てもいいくらい。
俺がとどめを刺すこともなく、ディザスターナイトはコクリコの一撃で完全に沈黙。
烏帽子デザインの兜を残してその中身は消し飛んでいた。
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