PHASE-646【猛者みたい】
「キィ!」
説明を受けた途端に仕掛けてくるコウモリ。
高い鳴き声と共に俺の体に衝撃があった。
抜剣して構えた姿勢の肩部分に当たった衝撃。
だが痛痒を覚えるといったものではない。
パンチを食らった程度。しかも鎧を装備しているから問題は一切ない。
目に見えない衝撃ということに、衝撃を覚える程度だ。
この場合の反省は、説明を受けてるのに攻撃を受けることだろうな。
ここにベルがいたなら、間違いなく怒られていた。
「ファイヤーボール」
が、ワンドから放たれれば、
「ギィ……」
初期魔法でワンパン。
炎に包まれながらバタバタと羽を数回羽ばたかせ、その後、動かなくなり力尽きるエコーストライカー。
「他愛なし。そして――肉のいい香りです」
――……おい……。
俺たちと出会う前の食生活が窺い知れる……。
「ま、そんなモンスターを倒しただけでそこまで格好をつけられても……ね」
呆れ口調のリンの声など気にもせず、中二心全開のポージングで悦に入るコクリコ。
「まだまだ格好つけるのは早いようだぞ」
パタパタとしっかりとした羽音を聞くことが出来る。
これだけ聞き取ることが出来るって事は――、
「団体さんだ」
「無駄ですよ。ライトニングスネーク」
ポージングを崩さないまま、良い声で魔法を発動。
バリバリと電撃の蛇が宙をのたうち回りながら不規則な線を描き、迫ってくるエコーストライカーの群れを一網打尽。
青白い光によって照らされる黒色の大コウモリの群れが、煙を上げてバタバタと落下し、ピクピクと痙攣しながら命を落としていく。
「大したことない相手です」
なんだろうか……。大した相手でないというのは分かっているんだけども、瞬く間に一掃する姿のコクリコが、猛者に見えてくる不思議。
姐御や姐さんと呼びたくなるくらいに、頼りになる姿である。
「では行きましょう」
――――真っ直ぐに続く通路に戻り、そのまま直進すれば下へと続く階段を発見。
あまりにも単純だから警戒してしまう。
一応、周辺警戒をしつつ俺が先頭で階段を下りていく。
階段は二十段ほどしかなく、直ぐに次の階層に足をつける。
「さて二枚目の準備を頼むよ」
「了解です」
一枚目をめくり、二枚目の羊皮紙にマッピングを始める――。
この階層でもエコーストライカーの襲撃があったけども、コクリコのファイヤーボールと俺のロングソードで容易く撃退。
流石はオリハルコン製のロングソード。触れればそれだけで両断できる切れ味を有している。
撃退し足を進めれば、羊皮紙に描かれる地図も広がっていく――。
このくらいのレベルが続くなら、俺とコクリコだけでも何とかなるな。
――――この階層は枝分かれした道が多く、マッピングに時間を要した。
でも、これぞダンジョンという喜びもあった。
喜びを俺たちに与えてくれる物。
それは――、
「見ろコクリコ!」
「ええ! 金ですよ!」
地下二階の枝分かれした通路の一つで宝箱を発見。
トラップに用心しつつ箱を開けば、中から出てきたのは拳二つ分ほどの金塊だった。
「うっは!」
ランタンの灯りを反射する神々しさテンションが上がる。
両手で持てばずっしりと重い。その重さに更にテンションが上がる。
これはダンジョン攻略している感が出てきた。
というか、地下二階で金塊をゲット出来るとか最高だな。これを売れば同じくらいの金貨にしてくれるのかな?
雫型金貨何枚分になるんだろうか。
確か雫型は混ぜ物の金貨だったな。でもこの金塊は純金だろう。
王侯貴族や素封家、大商人御用達の金無垢の円形金貨と交換してもらおうかな。
買い物には適さない金貨らしいけど、どうしようかな~。
やばい、夢が膨らむ。宝くじを買った後に色々と考えて楽しむのに似ているな。
でも、この金塊は現実に俺たちの目の前にあるからな。
地下二階で大きな金塊だぞ! これは更に下層階に進めば金塊以上のアイテムをゲット出来たりするかも。
「ただ問題がありますよ」
「どうしたコクリコ?」
折角テンション上がってんだから神妙な面持ちになるんじゃないよ。
「このずっしりしたのを持ち歩きながら下を目指すんですか?」
――……確かに……。
ゲームだと道具袋に入れてパーティーで行動するけど、現実だと俺の背嚢に入れるという選択肢になるだろう。
ダンジョン攻略用のアイテムも入っている中で、この重さを加えて背負い続けながら下を目指すのはな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます