PHASE-616【片側マントは真似したい】

「大体、人間は嫌いなんだろう?」

 なんで嫌いな人間を守るためのものを築いているのか。


「嫌いであっても滅びるのは見ていられないのよ」

 なにこのツンデレみたいな感じ。

 別に貴男の事なんて何とも思ってないんだからね! なんて言いながら、ベッタリくっついてくるタイプのような……。


「そもそも人だけでなく、私の場合は亜人たちも含まれているから。人間が見下す対象である亜人もね! 貴方たちには理解できないかも知れないけど」

 おっと、ずっとこんな所に引き籠もっているから俺たちの行いを知らないみたいだな。

 まあ、外の情勢にはそこまで詳しくないみたいだけども、そんな中でもこういった施設を造っているのは大したものだ。


「亜人たちなら俺たちと一緒にいるぞ」


「なに? もしかして奴隷あつかい?」

 リンの目が、キッと鋭いものに変わる


「そんな事しているような連中と一緒に行動するわけないでしょ」

 シャルナが横から口を出してくる。

 元々、俗世から身を引いた理由が人間の驕りによる亜人種たちとの戦いが原因だったよな。

 解決はしたけども、その後は人と関わらないようにこの地に来たんだろう。

 亜人たちだけでなく、嫌いであっても人間を滅亡から守るための要塞を築くとはね。


「あれ、いい人?」


「失礼ね。私はいい人よ」


「嘘ばっかり。だったら直ぐさま我が親友であるプリシュカを人間に戻してもらいたいものですね」

 ヴァンピレスの呪いを解けとコクリコが凄む。

 凄んだところで相手がコクリコだからか、リンは意にも介していない。

 イラッとしたのか、勝利者として気が強くなっているコクリコさんのワンドが怪しく輝く。

 ポップフレアなる新魔法を更に発動させるつもりなのだろうか。


「凄まなくても戻してあげるわよ。ここまで来て私を倒す事が出来る時点で合格だから」

 自分に勝てない存在なら魔王軍にも勝てない。そんな者達にこの世界は任せられないという、負けても尚マウントを取りたいようである。

 あまりの生意気な言い様に、生意気では負けてないコクリコがいよいよエンレージがMAXになったのか、ワンドを振り上げたところで――、パチーンと、コクリコの動作を見計らったかのようにフィンガースナップが一つ響く。


「お前ね……。結局、戦うつもりか?」


「別に戦うつもりはないわよ」

 この間合いなら間違いなくベルが仕掛けるだろうけど、そのベルが動かないことから察するに、相手からは殺意を感じる事がなかったんだろう。

 ――――フィンガースナップで現れるのは、戦闘時と同様にスケルトンの兵達。

 装備は違うけどね。


「――――お呼びか」


「おお!? 喋った! 今度のは喋るぞシャルナ」


「エルダースケルトンだね」

 こいつらがグレーターより上の連中か。

 当たり前のようにフィンガースナップ一つで、百体以上が出て来るな。

 というか、ランク関係なしに同じくらいの数が出せるんだな。


「本気を出せば最大でどのくらいの数を一気に召喚、使役可能なんだ?」


「二千ってとこね」

 二千……。


「まあ現在、二千は召喚しているんだけど」

 この場には百から二百くらいのスケルトンが召喚されているだけなんだが、残りはどこに? と思ったが、工事の話を耳にしていたから、


「残りは作業か」


「その通り」


「で、主よ。何用か?」

 普通に喋るんだな。片言でもなく流暢に喋るエルダーの一体。

 メタリックグレーの独特な光沢ある流線型のブレストプレートと、剣と盾。

 ショルダーアーマーにガントレット、レッグアーマーと兜もブレストプレートみたいに流線型タイプ。

 漆黒のマントは左肩だけにかけたデザインのものだ。

 ゲッコーさん曰く、片側だけのマントはペリースと言うらしい。

 

 グレーターとはまた違った格好良さ。

 グレーターが歴戦の戦士達とするなら、エルダー達は騎士だな。

 やはりペリースなるマントが格好いい。俺も片方だけにマントをしようかな。

 

 鎧のデザインはロボットアニメで例えるなら、前者は1980年代以降で、後者が2000年代って感じだ。

 角張りと流線。どちらにも良さがある。俺としては見慣れた流線型の方が好み。

 

 独特な光沢が有る装備は、光の加減でその様に見えているのではなく、表面が流動していように見えるので、魔法付与によるものだと思われる。

 魔法付与装備で会話が出来るスケルトンが眼前に百体以上。

 壮観だ。

 驚異ではなく、壮観という二文字が先に浮かんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る