PHASE-603【予想通りの名前だった】

「チッ」

 舌打ち一つして後方へと下がるアルトラリッチ。


「さて力を発揮させないためにも残りの柱も破壊するか」


「本当に止めてくれるかしら……」


「止めてほしいのならば交渉して欲しいと懇願してはどうか?」

 うわ……。ここで挑発。

 普通に交渉でいいのに。


「意地の悪い。やっぱり生理なんじゃないの」


「…………」

 ベルがリン達の前から消えれば、次にはドズンッ! と、大きな音と揺れ。

 更に一本のオベリスクが斬り倒される。

 風を司っているであろう緑色のオベリスクだった。


「もう! ほんとに!」

 今のはリンが悪い。

 乙女を怒らせると駄目なのだ。


「どうするのマスター!」


「久しぶりに本気で怒ったわよ。オムニガル」


「任せて!」

 お互いが大きく頷きあうと、ポルターガイストのオムニガルが両手を前へと突き出す。


「握りつぶせ。そして喰らえ! ガシャドクロ!!」


「本当にガシャドクロだった!」

 予想通りじゃねえか。

 ジオフロントでは見る事が出来なかったが、オムニガルが実行しようとする合体ロマンはガシャドクロ。

 正解だったからなんか嬉しい。脅威であっても嬉しかったりする。

 床に倒れたスケルトンソルジャーに、アーチャーやキャスター、グレータースケルトンがバラバラに解体されていき、一カ所に集まり始める。

 バラバラになった骨同士が纏まり束へと変わると、束が次々に連結していく。


「おおぉぉぉぉ!」


「何を興奮しているんですか! 攻撃をすべき黄金の時間ですよ!」

 いやだからね。合体している時に攻撃するのは卑怯者のやることだから。

 それをやっちゃうと空気が読めてないって怒られるから。

 でも見守ってるのって基本、悪の組織だな。でも俺は正義なので。

 

 ――――よし!


「正義、執行!」

 合体していく所に残火を振り下ろしていく。


「あ~! 最低!」

 幼女に言われようが知ったことではないのだ。

 そもそもが数の暴力で俺たちに攻撃を仕掛けてくる時点で、最低なんて言葉はそのまま返すから。

 でもね……。


「くそ! デカすぎる」

 まだ合体途中だが推定で十メートルはある。

 斬ったところで意味はないとばかりに、その部分が別のパーツによって連結。これは時間がかかりそうな相手だ。


「オムニガル」


「了解、マスター」

 おっと、あいつらも何かしら仕掛けてくるか。


「エビルプラント」

 今度はリンが両手を天井へと掲げる。

 残ったオベリスクが輝けば、ピラミディオン先端の球体も強く輝く。

 シンクロするようにクリスタルで出来た床も強く輝き、一定の律動だった緑光の波が荒波へと変わる。


「おお! 揺れるぞ」

 揺れの原因が床から出現。

 床には大きな亀裂が入る――ということはない。

 スケルトンが出てきたように、床からスーッと出現するのは、


「でけー妖華だな」

 現れたのはラフレシアのようなデザインの禍々しい花。

 白いまだら模様が入った花びらの色は深紫。

 花びらは五枚からなっている。

 花の直径だけでも十メートルを超えている。

 花だけでガシャドクロとほぼ同じ大きさ。

 ここから更に大木のような茎と、触手のような蔓によって自立しており、全体で見ればガシャドクロの倍はありそうだった。


「地龍もそうだったが、追い込まれると巨大化になるのが好きなようだな」


「既視感ってやつですよね。ゲッコーさん」


「じゃあまたT-90Aでも出してくれるか」


「ゲッコーさんのテンションがおかしくならなければいいですけど」


「なら、まずは様子見だな」

 今回は巨大サイズが二体か……。

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