PHASE-600【基本どんな攻撃も防ぎます】

「生意気な美人さんね」


「ほ、本当だよ! ダークフレイムピラー」

 アルトラリッチに同調するも、上擦った声のオムニガルが唱える魔法。

 でも――、


「無駄だ」

 下方から襲ってくる魔法に対してレイピアを床へと突き刺せば、突き刺した箇所から漆黒の炎が割かれ、ベルに触れる事はない。


「え~……」


「ブラックコフィン」

 連係とばかりにアルトラリッチの魔法が発動。

 オムニガルのものよりも、より濃淡な黒からなる四角柱にベルが包まれる。

 中は超重力に覆われた空間らしいが、俺は先ほどと違って落ち着いている。

 それどころか魔法の名を聞いて直ぐさまオベリスクを見渡せば、黒紫の球体が強く輝いているのを視認。

 黒紫色のクリスタルからなるオベリスクが重力魔法の補助装置のようだ。

 

 四大元素からなる魔法。

 それらを組み合わせていって更なる魔法を組み立てるのがこの世界の魔法だけども、オベリスクのピラミディオン上部にある力は、組み合わせによる魔法も独立させて留めているようだ。

 例に挙げるなら、上位じゃないけど、初歩の回復であるファーストエイドは水と土からなる魔法。

 本来その例が適用された場合、二本のオベリスクに留まる球体が光るって考えられるんだけども、ここにあるのは一本だけが輝いていた。

 組み合わせて出来る魔法も全て独立させているから、多彩なオベリスクが何本も建てられているんだろう。

 

 これらの多様な魔力を蓄える技術を相対するアルトラリッチが考えたとすれば、やはり凄い人物だ。英雄と言われるのも頷ける。

 これらの技術を流用すれば、魔法使用者の底上げにも繋がりそうだな。

 それこそ魔力効果アップのタリスマンや魔力付与装備を作ってもらえれば、高性能の装備やアイテムを市場に出す事が出来る。


「余裕だな」


「一度見てますからね」

 市場の今後を熟考していれば、横から余裕を持って一本を吸い終えてのゲッコーさん。

 安心してあの黒い棺桶を二人して眺める。


「――――他愛ない」


「だからなんでよ!」

 二度目も同様にベルが四角柱を断ち切る。

 納得がいかないと、美人が台無しになるほどに顔を歪めて頭を掻きむしる姿は、アンデッドとしての怖さはないが、女性の狂気は十分に伝わってくる怖さがある。


「ニンバスフレア!」

 耳にしない新魔法を使用するアルトラリッチ。

 ピラミディオンでは白色の球体が輝くから、聖光魔法と想像していいだろう。


「その程度では私には届かん!」

 と、ベルの体が炎に包まれる。

 得心がいった。今までベルを覆い包んでダメージを与えてくる魔法は、全てこれで防いでいたんだな。


「とうとうここまで復活! 本領発揮だなベル!」


「まだ身を包む程度だ」

 だとしても攻防で無敵モードだ。

 後は炎の津波なんかが起こせるようになれば、どんな相手や大軍も目じゃない。


「いや、本当に凄いよ……」

 シャルナが若干引いてる。

 空中には床なんて無いのに、地団駄踏んでるアルトラリッチの姿を見れば何となく分かるけどね、シャルナが引くのも。

 

 ――――ニンバスフレア。相当の威力があると考えられる。

 聖光魔法の大魔法だそうだが、それがベルには通用していない。

 だが、ベルも凄いけどアルトラリッチも凄い。

 オベリスクの補助があるとはいえ、さっきから詠唱破棄スペルキャンセルで大魔法が使える事が凄いし、アンデッドなのに聖光魔法ってのも凄い。


「理が通用しないとか! ……本当はこんなつもりは無かったけど」

 仄暗さを纏う声。


「ご託はいいから仕掛けてこい」


「貴女ね~! 知らないから。エンド・オブ・フェイト!」

 名前からして即死系だろ!

 合掌のように手を合わせる姿は祈っているようにも見えるけど、魔法名が原因で違う意味に見えてくる。

 対象の体や心臓を押しつぶすような動作に見える。


「ベル!」


「――――――いや、なんともないが?」


「……頭が痛くなってきた……」


「アンデッドでも頭痛はするのだな」


「馬鹿にしないの!」


「疑問を口にしただけなのだが」

 肩を竦めて言う辺り、端から見たら馬鹿にしてるようにしか見えないよベルさん。

 チート全開ですやん。

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