PHASE-521【現状の実力で出し惜しみすることこそ禁忌】
「動くなよ」
ゲッコーさんのAA-12 が連続して火を吐き出す。
単発弾による威力重視型。
「フレイムアロー」
「ファイヤーボール」
続いてシャルナとコクリコの魔法が発動。
俺の地龍への接近を掩護するための波状攻撃。
着弾すれば小爆発。
遠距離攻撃には煩わしとばかりに、咆哮だけで応戦。集中するべきは正面ということなのか、枝分かれした角を振り回して俺の接近を妨げる。
眼前まで接近すれば、流石に遠距離のヘイトには対応しないようだな。
振り回しつつ体勢を整えようと、後ろに下がる素振りを見せる地龍。
「いまならば!」
再起を図らせるわけにはいかないという気迫ある声が背中へ届く。
声の主はリズベッド。
幼い風貌からは想像できない力強い声でプロテクションを唱える。
地龍の退路を防ぐように、俯瞰から見ればコの字を書いたプロテクションを展開。
今までなら地龍の力で、大地系のプロテクションは吸収されていただろうが、弱っている状態では吸収は困難な様子。
追い詰められた地龍に対して攻める。
近づくことは許さないとばかりに再度、角を振り回し、
「ガロロロロ!」
威圧しつつ毒ブレスを吐き出す。
粘度のある毒と違い、リズベッドのピーコックが即、中和。
「暴れるんじゃないよ!」
正面切っての戦いでは、残火だと枝分かれした角に刀身を絡め取られると判断した俺は、イグニースと発して炎の盾を展開。
使用目的は防御ではなく、拳打のため。
俺の背丈ほどある炎の盾によるシールドバッシュで、角ごと地龍の頭部を殴って揺らす。
続けてワン、ツーと打ち込めば、反撃の棹立ちを行い、地震を発生させようとしているようだったが、
「フッ」
切れのいい呼気。ベルが立っていた障壁から跳躍。
俺と地龍の元まで一足飛びで来れば、そのまま蹴撃を地龍の側頭部にヒットさせる。
棹立ちしていた体はバランスを崩し、側面に展開されたプロテクションに巨体をぶつけて倒れる。
仕掛けろと言いつつも、ちゃんとフォローしてくれる出来た美人様である。
「おっしゃ!」
ここが狙い目と大きく深呼吸を行い、残火を鞘に収めてから、まなじりを決して地龍に躍りかかる。
立ち上がろうとしたところで、飛びかかってくる俺を捉えれば、どす黒い瞳がギョッとしていた。
仰け反るように起き上がるが、この時、俺は地龍の首にしがみつく事に成功していた。
「ブロロ」
「うるさい! 耳元で鳴くな!」
首を絞めて落としてやろうと考えるが、そうはいかない。
太い首を人間の腕で絞めるってのは中々に難しい。
しかも……、
「おお!? おお! この暴れ馬め!」
棹立ちしたり、後ろ足で蹴るような動作をして暴れ回る地龍は、何とかして俺を振り落とそうとする。
暴れる足が床に着ければ、鋭角な岩の柱が次々と生えてくる。
まあ、地龍に乗っている時点で俺には問題はないけども。
「おら! 大人しくしろこの駄馬!」
神に等しい聖龍を駄馬あつかい。
聞く人が聞けば、不適切と俺は怒られることだろう。
首元にいる俺に対し、頭を起こして角で攻撃しようとするけども、
「ショラッ!」
後頭部に火龍の籠手を利用した裏拳を思いっ切り打ち込んでやる。
「ボロロロ……」
なんか弱い鳴き声になる。
「この、この、このぉ!」
弱気になっていると分かれば、ひたすらに後頭部を殴り続ける。
俺の拳が通用しているというより、火龍の鱗で出来た籠手というのが、大きな効果を生み出しているのかもしれない。
殴られることで長の威厳が体に伝わっているのか、暴れ回る動きから、静の状態へと変化していく。
「まったく、さんざっぱら暴れやがって! 俺はロデオをやるためにこの異世界に来たわけじゃねえぞ!」
最早、八つ当たりのレベルになっている俺の発言と行動。
「何よりも――――、頸部や背中のトゲが痛えんだよ! トゲじゃなくて鬣を生やせ馬鹿!」
本当に、ただの八つ当たり。
「ガロロロロロ」
悪あがきを見せようとする地龍は、角を水面に着けて床を擦ろうとする。
ゴーレムを生み出して、俺を引き剥がさせようと画策しているようだが、
「させるかよ!」
残火を鞘ごと腰から外して手に持ち、二本の角の根元に通してからの、
「ふん! ブーステッド」
俺にとって禁忌のピリアを発動。
本来は禁じ手。使用すれば行動不能。
でも、ここで決めないといけないのも事実。
確実に決めて、動けなくなったなら、頼れる仲間の肩を借りるだけだ。出来ればベルがいい。
後先を考えず、決断しなければならない時は即、実行!
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