PHASE-481【染めて得る】
「にしてもだ、後半のゴブリンとオーガが血を求めていたの何だったんだ? 特にゴブリンは鬼気迫るものがあったぞ。ヴァンパイアじゃないのに」
隣を歩くランシェルに質問をすれば、皆も興味があったようで、ランシェルに視線が向けられる。
全員の視線を受けて、コホンと咳を一つすれば、
「あれは、強者の血で帽子を染めたいという思いが口に出たのです」
「コトネさんも言っていたな」
倒した強者の鮮血で帽子を染めるって。
レッドキャップスに入るための通過儀礼みたいなのが、強者と一対一で戦い、勝利すれば晴れて入隊ってやつだったか。
で、倒した相手の鮮血で帽子を染め上げるんだよな。
「あの帽子は魔装の一つです」
「魔力付与がされているって考えでいいか?」
「はい。赤黒い帽子の正式名称は、
――――
ランシェルの説明では、倒した者の血で帽子を染め上げれば、倒した者の力を帽子に封じることが可能となる。
従来の力と、帽子の能力で、現状より倍ほどの力を手に入れることが可能なのだそうだ。
もちろん相手が強ければ強いほど、大きな力を得ることが出来る。
この場合、倒せればの話になるが。
強すぎる存在であるベルの血に心を引かれた結果、ゴブリンとオーガは血を欲する発言をしたわけだ。
上書き保存タイプの魔装だそうだ。
「よかったよ。ショゴスみたいに捕食すればするほど強くなるって装備じゃなくて」
「流石はトール様ですね」
ランシェルが褒めてくれる。
何を褒めてくれたのだろうと首を傾げていると、
「
「へ~」
この魔大陸でも高尚な魔道具を製作する存在がいたそうだが、その存在を捕食した事で、物を作る知識を得ることに成功し、作り出したのが赤い帽子。
製作者の力に似たような能力の魔装、
十全でショゴスの捕食と同じような能力の魔道具を作り出すことは出来ないのだろうか。
それとも自身と同じような存在を誕生させたくないために、あえて作らないのかは謎だけども、こっちとしては作れるのに作らない選択をしているなら有りがたい。
「――――ついたな」
ランシェルと話し込んでいたら、目の前にはでかい壁。
近くで見れば綺麗に切りそろえられた石積み構造。
ブロックとブロックの隙間にはカミソリ一枚も入りそうにない。
建築技術の高さが窺える。
おどろおどろしくて、石積みも適当な感じが、俺が想像する魔王軍の建築物ってものだったけど、眼前のは荘厳な建築物だ。
「さて、門付近まで来たがリアクションはない」
「ですね。こういうのって、大抵が入れば虎口のような感じになっていて、十字砲火をうけるってイメージですよね」
「まあ、城や要塞の作りは得てしてそんなものだろう。で、どうやって開けてもらうんだ」
ゲッコーさんは俺に質問をしてくるけど、どう開けるかは想像が出来ているようで、笑みを湛えながら窺うスタイルだ。
「ここは派手に行きましょう」
プレイギアを取り出してからの、
「ティーガー1」
輝きの中から顕現する、全長が八メートルを超える威風堂々たる鋼鉄の虎を召喚。
「これがシャルナ様が驚いたという鋼鉄の象なのですね」
初めて目にするランシェルの黄色い瞳は恐れを宿していた。
アハトアハトを使用すれば恐れは更に増すだろうな。
「みんな離れてて」
そう告げて俺は乗り込み、第三帝国の凄いヤツを起動させる。
唸るエンジン音。パーティーを待機させて、大地を揺らす無限軌道により門へと最接近。
「マスターキーで開けさせてもらう」
木材と、補強の為の格子状の鉄から成る巨大な黒い門に対して砲身を向け、L2トリガーで目標を捕捉。
ディスプレイの中に移る円が絞り込まれて、円の色が赤色から緑色になったところでR2トリガーを押し込む。
ズドンッと、大気を振動させる凶悪な発射音の後、直ぐにガギンッという金属の抉れる音がすれば、左右開きの門の右側部分がくの字になって吹き飛ぶ。
直撃した補強部分の鉄にはいびつな穴が空き、曲がり、木材は木っ端となって一帯に舞い散る。
一発の発射で右側の門は破壊に成功。
88mm徹甲弾の威力は、この世界での攻城戦にて、無類の強さを発揮してくれそうだ。
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