PHASE-383【素晴らしき夢の続き】
「いいじゃないですか道案内。俺たちの知らない街なんですから」
すかさずフォローを入れる。俺に対するポイントがアップしているはずだ。
現にランシェルちゃんが、俺に笑顔を見せてくれている。
姑息と思われても、俺は可愛いメイドさんと仲良くなりたい。
「初めての場所は、知らない道をゆっくりと散策するから楽しいんだ」
いや、あの……。
言ってる内容と顔が一致しないんですけど……。
なんで蛇のような目で俺を見るんでしょうか。完全に獲物として狩られる側なんですけど……。
こうなってしまえば、ヘタレな俺は何も言えなくなってしまう。
勇ましい者と書いて勇者なんだけどね……。
勇者であろうとも、伝説の兵士の睨みには抗えない。
「ランシェルちゃんの申し出はありがたいけど、身内だけで散策しながら楽しむよ……」
いま俺が言えるのはこれが精一杯。
ゴメンも付け加えて、ランシェルちゃんがこっちサイドに対して、心証を悪くしないために尽力する。
だがしかし、ここまでゲッコーさんが強く言ってくるのも珍しいな。
ランシェルちゃんが気にしないです。と、言ってくれたのが救いだったな。
というのを俺はベッドに転がって思い返していた。
本日も贅沢な夕食を堪能し、でっかい湯船を独占。
姫との交渉が上手くいかなかった以外は、最高の一日と言ってもいいだろう。
目的の一つである、姫を王都に連れ帰るってのは失敗が濃厚だ。王様には申し訳なく思う。
あの態度からして難しいかもしれないけど、万に一つ、姫が心変わりする可能性もある。
帰りたいとの言質は取れなかったが、帰りたくないという発言も無かったからな。
王都が安全と分かってくれれば、一緒に帰ってくれるかもしれない。
ここよりも安全とは言えないけどな……。
侯爵に関しては、ライラが言うように王様に忠誠を誓ってくれているから、協力はしてくれるだろう。
その辺も踏まえて、今後の話を進めていかないといけないな。
俺たちはその為に来たんだからな。
居心地がいいとはいえ、目的を忘れることはない。
明日は更に気を引き締めようと思っているが…………、なんで散策?
ゲッコーさんは何を考えているのだろうか? 悠長に行動するほど余裕があるとは思えないんだけどな。
何も無く行動する人ではないからな。
勝手に裏で動いているし、
「その辺も踏まえて、メンバーと今後についてしっかりと話し合いをしないとな~」
ゴロゴロとキングサイズのベッドで転がりながら独白。
このベッドに寝っ転がると、毎度いい香りがする。
毎日シーツを取り替えてくれているみたいだけど、その度にエッセンシャルオイルか香水を塗布してくれているのかもな。
美人がいつでも側にいてくれるような香りだ――――…………。
――…………。
――……。
『いい加減に起きないか』
「はひ!? なに!」
なんだよベルか。
「もう朝かよ。いくら何でも早いぞ。いま寝たとこだろ」
どんだけ俺は深い眠りだったんだ? 深く眠ると直ぐに朝って感覚になるのは知っているが。いくらなんでも早すぎだ。
――……って、前回も同じような事を思っていたような……。
だけど今回は夕食時にそこまで酒は飲んでいない。
『何を言っている。まだ夜中だぞ』
「おんおん?」
――……じゃあなんでベルは俺の寝室にいるの? しかも俺の寝ているベッドで、俺の横に座ってますけども。
今夜も随分と月明かりが綺麗だ。
灯りなんてなくても、ベルの美貌と白銀に輝く長髪が、しっかりと目に入ってくる。
――――そっか、これあれだ。昨日と同じような夢だな。ベルの寝間着もエッチな仕様だし。
しかし二日連続とはね。
童貞だし、多感な時期だし、色々と溜まってんのかな。
『どうしたのだ? 惚けているのか?』
「いや、まあ」
相変わらずリアルな夢だ。
婀娜っぽいのは昨晩と一緒。やはり俺は色々と溜まってんだな。
『はやく』
「え?」
更に色気を帯びた声が俺の耳朶にダイレクトアタック。
潤んだ目で見られれば、俺の体は固まってしまう。もちろん全体がね。一部とかではなく。
この夢は本当に凄いな。
ベルが胸を強調するように胸の下で腕を組んでみせる。たまにこういう佇みかたをする時もあるが、その場合は凛とした姿の格好良さの中に、エロが含まれているって感じ。
だが、ここでは十全でエロいだけだ。
眼福もいいところ。
ずっと見てしまう。いいよね。夢だから。
夢なら許されるって。だって夢だもん。
『今日はどうしたい?』
切れ長の目は目尻が下がり、連動するように、柳眉も八の字を書いている。
ギュッとする以上の事が出来るってことなんだろうか。
というか、今日はどうしたいとか言ってるんですけど。
この夢は、昨晩の続きのようだ。
セーブ機能でもあるのかな?
へんてこな夢を見ているような気もするが、ベルの胸が至近にあるわけだから、そんな細けえ事は気にしてはいけない。
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