PHASE-305【もっと奥へ】

「ふ~……」


「どうしたの?」


「いや~……」

 俺のゲームストレージって洋ゲーと、FPSやTPSばかりだからな~。

 あとギャルゲー……。

 RPGは据え置きでじっくりと大きな画面でやりたいタイプなんだよね。

 もしプレイギアでやってたなら、クリアしたRPGのストレージデータにはエリクサーは999個とカンストしてるし、最強の武器も多々あったのにな……。

 あれだけあればな~。

 

 最近は洋ゲーばっかりにハマってしまったからな。まあ、現状でも凄い人達に囲まれてオーバーテクノロジーもあるから十分ではあるし、最強装備に甘えれば俺自身の成長も見込めなくなるから良かったとも思うけども、そういうデータが別にある事を知っているだけに、複雑でもある……。

 

 データがないからこそ、こういう素材集めを美人のエルフと一緒に採取出来るからいいとしよう。と、ポジティブに考える俺。


「そっちの花も採取して」


「おうよ」

 鮮やかな花々に、様々な草。サルノコシカケみたいなキノコも木からとる。

 乾燥しているようにペキリペキリと音を立てるキノコを折り取るようにして採取。

 で、背負った籠に入れていく。気分は昔話に出て来るおじいさん。


「で、この籠いっぱいに素材を集めて、どのくらいのポーションができんの?」


「この程度の薬草だと、籠一つで小瓶サイズ二、三本くらいかな」

 ――……なんて非効率なんだろう……。

 籠いっぱに取って二、三本とかないわ~。

 せめて十本くらいは出来て欲しいね。

 これ、椎茸栽培みたいにキノコを栽培したり、薬草も自生してるのじゃなく、ハウス栽培的なのにシフトチェンジしようぜ。


「あ、楽しようとしている顔」


「おう考えてますよ。楽ではなく、生産性の向上だけどな」


「無理だよ」

 俺はまだ口にもしていないのに、考えを一刀のもとに両断されてしまった。

 栽培をすると不思議と質の悪い物しか出来ないそうだ。

 森に自生することで、森に存在するマナの影響によって良い物に育つということらしい。

 しっかりとした検証はされてはいないようだが、森の住人である賢者、エルフが長い時の中で至った答えなので、世間一般ではこの考えが浸透しているようだ。

 それを示すように、森の奥に行けば行くほどマナは濃くなるそうで、比例するように良質な素材が採取できるそうだ。

 

 だが、リスクも発生するそうで、森の奥を縄張りにしているモンスターの強さもかなりのものになるという。

 栄養のある食物があれば、自然と強者がそこに君臨するのは当たり前。

 縄張り争いに破れた弱者は、森の端っこに追いやられる。

 弱肉強食、自然界の掟。

 奥に行けば行くほど強くなるのは、RPGでもお馴染みである。


「もう少し奥に行ってみよっか」


「え~」

 何を軽い口調で言いやがりますかね。

 いくら王都に近い森とはいえ、奥に行くと怖いのがいそうだから行きたくないんだけど。

 俺は戦闘の発生しない素材採取をしたいの。

 現在の俺の状況を見なさいよ。体中が痛いんだから……。


 ――……ああ、行っちゃうよ……。

 仕方がないのでついていく俺。

 

 未開の森と違って、途中までは人口の道があるが――――、いま歩く場より先に目をやれば、人口の道は無いし、日の光も枝葉や背の高い木々によって遮断されており、さっきまでの木漏れ日が揺れる牧歌的な風景は無く、夜のように暗い。

 

 いつあの暗闇の奥から、おっかないのが躍りかかってくるのだろう。という恐怖も芽生える。


 鳥のさえずりもない、正に森閑って言葉が似合う森の風景。


「大丈夫だって、私がついてるから」

 森ならお任せとばかりに胸を張るシャルナ。

 体に沿ったような胸当ては金属製だが、心なしか躍動しているようにも見えた。


「――――目線」


「おう……」

 碧眼でジロリと睨んで、続けて拳を見せてくる。

 もうこれ以上、俺は殴られたくはない。

 というか、俺の顔にはもう殴られるスペースは無いからマジで勘弁……。

 

 ベルの最後に見舞った掌底が原因で、未だに顎がガックガクなんだからな……。

 建て付けの悪いドアみたいに、油断してると口が勝手に開くんだからな……。


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