PHASE-210【イメージor暗示】

「で、どうすんの? 考えるな感じるな。でもってイメージしろという矛盾の特訓か?」


「いえ、トールはすでに、ま、ま……魔法が使えますから……」

 認めたくないからって、自分より凄いのが使えるからって、そんなに声を震わせなくてもいいのに。


「ちなみに、俺のは魔法じゃなくて――――、大魔法な」


「ぐぐ、ぬ……」

 きっちりととどめは刺してやる。


「と、とにかく魔法が使用出来るという事は、マナの感覚を知らず知らずに習得しています」

 なんてアバウトな。

 あんだけマナを扱えるようになる為には、考えるな感じるな。でもってイメージとか矛盾なことを言っていたのに。

 

「マナ感知習得からはイメージが大事になってきます。私がピリアで使用出来るのはタフネスだけです。なのでこれを師事します」


「それを聞いて真っ先に思ったことを口にしていいか?」


「――? どうぞ」


「お前が使えるピリアがインクリーズじゃなくてよかったってことだ」

 初対面時、肉体強化であるインクリーズを使用されていたらと思うと……、俺の股間に寒気が走るぜ……。

 子孫繁栄を司る、プレシャスな二つの宝玉が砕け散ったかもしれないからな……。


「なぜ私の使用ピリアがタフネスで良かったのかは分かりませんが、インクリーズはギルドメンバーの中で使用出来る方も多いみたいなので、教わろうとは思っています」

 冗談ではない!

 こんなヤツがそれを覚えたら、俺の宝玉に危険が及ぶかもしれない。

 俺はベルに使用したいんだ! お前に砕かれる確率は極力下げておきたい。


「ハハ――」


「なんですその嘲りは!」


「いやなに。未だ王都の人の多さに縮こまっている内弁慶のお前がさえずると思ってな」


「うう……」

 ヘタレだよな。

 町規模だと目立とうとするくせに、街規模になると挙動不審になるからな。

 で、結局はギルドハウスの自室から殆ど出てこなかったり、俺の部屋に来たりと、ニートみたいな生活を送ってるんだよね。


「お前のインクリーズはいいとして、俺にタフネスを教えプリーズ」


「散々、小馬鹿にしておいて軽々しい態度で頼み事……。トールはある意味、肝が据わってますね」

 王都以外だと、考えも無しに行動するお前に言われると複雑だよ。

 ベルとは違う、実力の伴っていない馬鹿凸だからな。



 

 二人してギルドハウス裏にある修練場の一角に移動。

 内弁慶のことも考えて、人のいない隅っこでやる。


「いいですか」


「おうよ!」


「うむ、大変によい返事です。教え甲斐もあるというもの。では――、タフネスはさっきも言いましたが物理耐性強化です。イメージとして連想するのは簡単です」


「何となく分かるぞ。硬い物を想像すればいいんだな」


「そうです。後は、自分は強靱な体の持ち主だと強くすり込ませるのもいいですね。それにより体内にあるマナが呼応します」

 硬い物をイメージしたり、自分自身に暗示をかけたすればいいのか。


「ちなみにコクリコはどんなイメージを?」


「自分が凄い存在だとイメージしています。まあイメージというか、そもそも私は凄い存在ですけど」

 ――……なるほど。ピリアって、自信過剰なヤツほど覚えがいいのかもしれないな。


 俺は自信家じゃないから、暗示よりイメージの方で頑張ろう。


「魔法が使えるのですから、基本のピリアは使えて当然。さくさくと覚えてくださいね。私もインクリーズを覚えたいので」


「だからお前は内弁慶じゃん。誰に師事を受けるんだよ」


「タフネスをさっさとトールが覚えて、インクリーズも習得。で、私に師事をするのです」

 これ以上インファイトを得意とすると、ロードウィザードって肩書きはどうかと思うけどな。


「ウィザードと武闘家で、魔闘ってオリジナルのクラスが生まれそうだな」


「ふわ~!」

 琴線に触れたようで、迷いが生じているようだ。

 あとちょっと勧めればオリジナルのクラスを名乗りそうだな。

 

 自信過剰だし目立ちたがりでもあるから、ワンオフ的なものは大好きだろう。

 俺としては股間が危機に瀕するパーセンテージが上がるから、やめてもらいたいが。


「いえ、まずはロードウィザードから極めます。その後、その名をいただきましょう」

 ノービスでロードを頭につけてる図太い神経は大したもんだが、極めるとなると、現状からの成長で考えれば、極めるのは棺桶に片足をつっこんでる年齢になりそうだな。


 そうならないといいな。

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