色々と進めていこう

PHASE-193【よき制服である】

 ハンヴィーを召喚。

 

 ティーガーと違い、今回は乗り込んでいるから、ハンヴィーが動けばワックさんは興奮しての大喜び。

 

 馬車より安定して、尚且つ速い。

 どの様な原理で動いているのか、乗車中は目を輝かせて俺を質問攻め。

 もちろん俺は知らないので、未だ左頬が腫れている伝説の兵士に丸投げした。


 俺もコクリコ戦で顔が腫れてるから、正直、口を開くのがしんどいのだ……。


「エルフって回復魔法とか使えないの?」


「使えるわよ」


「使ってよ」


「嫌よ、スケベには使いたくない」

 ――…………。


「ていうか、なんで乗ってんの? なんで一緒にいるの?」


「いいじゃない。私だって王都に行きたいもん。エルフが人間の街。しかも王都って中々に行くことないしね」

 ま、いいけどさ。

 後部座席。

 右から俺、コクリコ、シャルナ、ワックさんと乗り込んでる。

 行きより狭くなったな……。それに、出来れば隣はシャルナが良かった。


「なんですか? その不服そうな目は」

 バーティカルボディの琥珀の瞳がギラリと輝く。

 俺は静かに窓から外を見ることに徹した。


 俺の前、つまりは助手席に座るベルがゴロ太を抱っこしてご満悦。

 やり取りを耳にして嫉妬し、ストレスを蓄積することになった俺。

 

 運転席の後ろでは、俺が丸投げしたもんだがから、ワックさんの質問攻めにあい、流石の伝説の兵士もうんざりのご様子。


 覗きを行った男二人は、王都に着くまで精神的にしんどい罰を受けることになった……。





「おおワックよ!」


「王様、息災で何よりです。強い目に戻られましたね」


「勇者であるトールと、従者の活躍に力を分けてもらったのだ」

 王様、ワックさんの事を知ってたもんな。面識があって当然か。

 楽しげに談笑しているから、友人関係なのかもしれない。


 王都西門を潜れば直ぐあるギルドハウスに最初に寄ってもらうのも良かったが、王様への連絡が第一と判断。

 クレトス防衛の為に、ギルド以外からも王都の兵も出して欲しいと頼めば二つ返事だった。

 強い目に立ち戻った王様は、即断できる賢君である。


 家臣団もワックさんの無事に喜びの声を上げる。

 とりわけナブル将軍を筆頭に、武人の方々がワックさんの無事に大いに喜んでいた。


 武人にとって武具は、自分の命を預ける為の大事な物だからな。一級のそれらを作り出すワックさんには絶大な信頼を寄せているんだろう。





「ようこそワック氏」

 続いてギルドに来てもらう。

 先生がカイル達を横に並べて典雅な挨拶でお出迎えだ。


「王城へと向かう時にも目にしましたが、立派な建物ですね。僕が王都で生活をしていた時よりも、王都全体が発展しているのは、ここの方々のお力が大きいようですね。ギルドハウスの造りを見ればそれも分かるというもの。王都外の木壁に田園も素晴らしいものでした」


「ありがとうございます。クレトスにも、ギルドの者たちの派遣と、食料の配送を実行しますので安心してください」

 破顔の先生の発言に、ワックさんは先生たち以上に典雅な一礼を実行。

 ベルの胸でくつろいでいたゴロ太もそれを真似て頭を下げる。


「感心だぞ。ちゃんとお礼が出来るとは」

 ベルの心は子グマに夢中だ……。

 まったくたるんだ顔をして、それでも中佐ですか!


「なんだ?」

 だから……、なんで俺の時だけ凛とした表情になって睨むんですかね……。

 感情の起伏がすごすぎるよ。


「――――新築の木の香り、本当に出来たばかりのギルドでここまでの建築を――――」

 作り手たちの登用に、無駄のない人材配置。

 これらがうまくかみ合った結果、短期間でこれだけの建物が造れるのかと、王都で見る物すべてにワックさんは感嘆していた。


 三階建てで、一階はクエストの受付に食堂兼酒場。

 二階は宿泊施設。

 ギルドメンバーは無料。

 それ以外は有料となっている。

 三階は俺たち幹部の部屋。

 ワックさんも実績から三階に住んでいただこう。


「まだまだクエストも少ないですが、瘴気が晴れて活動範囲が広がり、被害のなかった場、正気に戻った近隣の村々から、徐々にですが依頼も来ています」


「そりゃ凄い」

 俺も初耳だ。

 どおりで昼間だってのに、受付が賑わってるわけだ。

 

 俺たちが王都から離れて戻ってくれば、進歩の早さに取り残されそうだ。


 受付は綺麗どころの女性たちがスーツに身を包んで、ギルドメンバーや野良の冒険者にクエストの説明をしてる。


「やるじゃないですか。流石は先生」

 耳打ちで語りかければ、


「全ては主の考えのままに」

 女給であるリリエッタ嬢たちは、俺が先生に頼んでいたとおり、下品さは無く、だが、膝がしっかり見えるミニスカートのメイド服に身を包み、以前と違って、先生以外の人達にも歓待の姿勢で接してくれている。


 受付嬢は体のラインがくっきりと出るタイトなスーツ。


 膝を隠す長さのスカートだけど、体に沿っていて、尚且つスリットが入ってるからね。

 エロいOLのお姉さんみたいでこれまたいい。


 いいよ、素晴らしい!

 これで命をかけて励む者たちも癒やしを得られるというものだ。

 女性目線でないのは申し訳ないが、現状、冒険者は野郎のほうが多いからな。

 

 マイノリティより今はマジョリティを優先だ!

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