PHASE-178【その声……】

「え、嘘だろ。じゃあ、本当に……」


「噂だと、パーティーには赤い髪の美姫がいると聞いたが」


「そうだ、六花のマントは偽物の可能性もある。赤髪の美姫はどこだ!」

 俺の外見を上から下まで見た後に、偽物の可能性とか言わないでくれる……。

 こういうところなんだよな、マントの効果が薄れるのって……。

 威厳がないのは、俺自身がちゃんと理解してるから……。


「……そこにいるだろう」

 落ち込みつつベルを指差して、ハンター達を誘導してやろうとすれば、


「ここです!」

 と、赤髪でもないまな板が、アホな自意識を見せてきたので、


「あいた!」

 尻に蹴りを入れてやった。


「話が進まんから出しゃばるな。聞けハンター達! いま現在は色々あって白い髪になっているけども、お前等の言ってる美姫ってのは、このベルヴェット・アポロ中佐の事だ!」

 きまったね。俺の口上。

 六花のマントを見せた時以上にきまった。


 メインを支えるバイプレーヤーのような立ち位置だけども。

 ふう、勇者である俺がバイプレーヤーって……。


「本当にお宅らが――――」


「まだ信じないか! 俺たちが勇者一行だよ!」


「必死になって発言すれば、虚言にも聞こえてくるから落ち着いたらどうだ」

 うむ。ベルの発言は正しいな。

 これだと偽物が必死になっているようにしか見えないからな。


「もし本当なら、剣を一振りするだけで、多くの敵を炎で呑み込むって話だったな」


「いまは使えないが、お前たち程度ならば無手でも十分だ」

 しゃなりしゃなりと接近。ハンター達は後退りしつつ、両手を前に突き出して、


「あんたの実力は理解している。戦う気なんてない」

 白い髪ってところで、本来ならブラフとも考えていいんだろうが、そこそこのやり手と思われるハンター達は、明らかに自分たちでは太刀打ち出来ないと判断したようだ。

 

 その辺の察知力は素晴らしいな。


「素直に動物たちを解放すれば、話は会頭が聞いてくれるだろう」

 そこは俺に丸投げかよ。

 まあ、会頭ですから。

 

 俺は大人と違って、責任がとれる責任者を目指しますよ。ベルの好感度ポイントを上げるためにも!


 最近は、忠誠心のポイント確認をまったくしないな~。

 上がってないって分かってるから確認しないだけだけど。


 だって、普通に殴られるし蹴られるし、踏まれるし。

 そもそもゼロって数字を見るだけで、メンタル豆腐な俺は、結構な時間ヘコむからね。

 絹ごしから木綿メンタルになったとしても、ヘコむ事は変わりないからね。


「中々のやり手みたいだし、こちらの指示に従うなら、ギルド加入願いの話が出来るようにしてやるよ」

 どう言おうが、魔王軍と行動している山賊たちと悪さをしてたんだ。

 当人たちは山賊たちを利用してたんだろうが、一発で加入なんてのはさせられない。


 ここは先生に判断してもらうのがいい。

 人物鑑定は、適材適所の神に頼むのが一番だ。

 

 橋渡しとして、紹介状を書いてやると伝える。

 二人は顔を見合わせてからややあって、


「分かった、指示に従う。こいつらも解放する」

 素直に応じてくれた。


「先ほど倒れた二人も頼む」

 ほうほう。逃げ出したが、仲間の事はちゃんと考えられるんだな。

 了解したと返せば、


「親の所に案内する」

 言って、捕まえていたケーニッヒス・ティーガーの子供と、ぬいぐるみみたいな子グマのゴロ太が、もぞもぞと動く麻袋から解放された。


「ゴロ太!」

 駆け出すワックさん。


「ワックさん!」

 ゲッコーさんに負けないくらいの渋い声なのに、よちよちとした駈け足でワックさんに抱きつく――――というか、抱っこされるゴロ太。


「ああ! 可愛い!」

 隣のベルの様子がちょっとおかしいが、とりあえず二人のやり取りを見守ってみる。


「心配したんだよ」


「ごめんよワックさん」

 声で台無しだよ……。可愛さが台無しだよ。

 語り口が子供口調なのに、アニメ作品より、洋画吹き替えで活躍してそうな男前な声だよ。

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