PHASE-150【変化していく王都の風景と人々】
三階建てだ。
凄いぞ! 大きいぞ!
豪邸のような煌びやかさはないけど、木の温もりを感じさせてくれる。
外壁は丸太を加工して、重ねて積み上げていく構造。
二階三階にはバルコニーが等間隔であるし、所々は煉瓦造り。
アルプス山脈の麓にあるようなログハウスだ。
にしても広い。
ちょっと前まで、おんぼろ小屋しかなかったのに。
ギルドメンバーが揃い始めた時は、小屋の周りは、持参のテントだったのに、その名残が一切無い。
「なんですか、この仕事の早さは」
「素晴らしい人材が揃いましてね。中にはドワーフと呼ばれる種族もギルドに加入しましたよ」
「え! それは凄いじゃないですか!」
渡りに船だ。直ぐさま会いたいと先生に頼む。
もちろん火龍の鱗を加工する為だ。
「それはいいのですが、まずは報告を」
ああ。王様にね。
正直、なんで俺がいちいち連絡を? と、思ってしまうのは、調子乗り始めてるってことなのかな。
態度が大きくなれば、隣の白髪美人に蹴られるかもなので、素直にギルドハウスの隣に立てられた、以前の小屋より立派な、馬小屋前に用意された馬車に乗り込む。
馬小屋ではヒッポグリフが大人しくしていた。
先生は完全に飼い慣らしたようだ。ビーストテイマーの称号を与えてもいいかもね。
――――恐れ入る。
王城に向かう馬車から街中を眺めれば、ちょっと前まで戦災に見舞われていた地とは思えないくらいに復興している。
荒れていた大通りの石畳はしっかりと補修が行き届き、壊された家屋も新たに建てられ、雨風も余裕で耐えそうな造りだ。
住人の方々が、十分に生活が出来る水準だ。
井戸の前では奥様方が楽しそうに話している。
あれが本当の井戸端会議ってやつか。
談笑が見られると言う事は、それだけ心にゆとりが生まれた証拠だな。
ここに来た時は、あんな表情が出来るようになるなんて想像も出来なかった。
「勇者殿」
と、ナブル将軍が王城前で俺たちを出迎えてくれた。
下車して挨拶をすれば――、
「ベルヴェット殿!?」
「お気になさらず」
返されれば、顔を伏せる将軍。
どうも、ベルが強い衝撃に襲われて白髪になったと勘違いしているようで、なんと励ませばいいのかと考えているようだ。
冷静に考えてほしいものだ。
最強の存在であるベルがそんな衝撃を受けているなら、一緒に行動している俺たちだって、ただでは済んでないよ。
それが分かっていたからだろう。先生はベルの白髪を見ても、そこまで驚いた様子はなかった。
むしろ、バニー姿の時の方が、いいリアクションだった。
――――ん?
「おや? 門が無くなってますね」
といっても、一つ目のはある。
魔王軍の侵攻に恐れて、急遽つくられた、真新しい鉄で出来た第二の門が無くなっていたのだ。
「ええ、荀彧殿がですね――――」
東西南北の第二の門すべてを先生が撤去して、持ち去ったそうだ。
今では王都外にも木壁があり、ギルドと、王兵の士気の高さから、無駄な門など不要と言ったそうで、無駄な鉄は武具にすると王様に迫ったそうだ。
三国志の中でも、先生は強引に推し進める時は、推し進める人だからね。仕方ないね。
王様も、戦う者たちの命こそ最重要。役に立てられるならと快諾。
他にも不要な金属を集めさせて、提供してくれたそうだ。
王様、名君に立ち戻ってきてますよ。
まあ金属の集め方が、
「おお! トールよ! よくやってくれた!」
一言一言に元気が漲ってるな。
ドンドン進化してるね王様。
服装の上からでも分かるくらいに、胸板が厚くなってるよ。
骨張ってた手のころが嘘のようだ。
ていうか、最早、別人だな。
「ベルヴェット殿……。大変な目に遭ったのだな……」
いや、もうそのリアクションやめれ。むしろ失礼だからな。
悲しげな目もなんかむかつく。
言われるベルは慣れてしまったのか、苦笑いを顔に貼り付けての応対。
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