お久しぶりの王都

PHASE-149【発展】

「いやはや、なんとも活気に溢れて――――」

 現在、王都近辺。

 ハンヴィーから見る風景。

 街道は、ここへ転生したばかりの時とは違い、舗装され、乱杭で作られた木柵から更に改善が進み、木の壁が王都を囲っている。

 

 全体を囲むにはまだ日数がいるようで、木の壁付近では、作業に従事している人達。

 

 更には、行商人たちが、複数の幌馬車を使用して王都に向かっていく光景。

 キャラバンってやつだな。

 商隊を前後で守っている、皮の鎧を装備した、冒険者か傭兵の姿もある。

 

 商人に冒険者、傭兵。そして木壁を築く人達。

 

 共通しているのは、明るい笑顔だ。


「これは会頭! 皆さん」

 と、木の壁の関所みたいなところでは、冒険者の一人が俺たちの姿を目にして、背筋を真っ直ぐに伸ばして挨拶をしてくる。

 

 がさつで自由気ままな冒険者像からかけ離れたものだが、真面目に取り組んで励んでいるのはありがたい。


「通らせてもらうよ」


「当然ですよ」

 一緒に門番をしていた数人が、駐車場にあるようなゲートバーを人力で上げて、俺たちの通過を促す。


「徹底しているな」

 感心するゲッコーさん。

 

 何たって、個人の性格を熟知し、適材適所を実行する神の如き才能をもった人物が、その実力を遺憾なく発揮してくれてますから。


「ここからは迂回、願います」

 通過する時にそう言われた。

 真新しい土道を通行するように促される。


 王都まで真っ直ぐに伸びている街道に目をやれば、


「なるほどね」

 王都として、来訪者を迎える為に、見た目も良くしないといけないからな。

 街道には敷石を敷く作業が行われている。

 木壁まであとちょっとといったところ。

 街道も、立派な石畳の道に生まれ変わるようだ。


「城壁の修繕も力が入っている。最初の頃とは雲泥の差だ。王都の正規兵である立哨も動きに無駄が無い」

 と、召喚時は批判してたベルからも、お褒めの言葉だ。

 

 きっと、先生と冒険者に触発されて、ナブル将軍や、心の友であるダンブル子爵あたりが奮闘したんだろうな。

 

 先生の、勝たせる事で自信をつけさせる。

 それが功を奏したからこそ、逃げ腰だった兵達は快活に任を全うしている。

 

 ――――王都西門でも、俺たちを目にした兵士たちが笑顔で近づいて来て挨拶をし、顔パスとばかりに、先に並ぶ行商人たちを飛び越して俺たちを入れてくれる。

 

 申し訳ないとは思うけど、勇者一行なんで。

 なんて調子にのってみる。

 

 やはりというべきか、ベルの白髪姿には、兵士たちも驚いていた。

 

 ――――というか、これはこれで、と、見とれていたと言うべきだな。

 

 ハンヴィーから降車して、門からは歩きだ。


「はわわ……」


「どうしたんだコクリコ?」

 あっぷあっぷしてるな。


「何と高い城壁。それがずっと続いています。流石は大陸の中心である王都。大都市ですね」

 俺の股間を二度も殴った、自称ロードウィザード様は、お上りさん全開である。

 すげー緊張してるじゃん。

 

 普段は目立ちたがり屋のくせに、極端に人の流れが多い場所は経験したことがないのか、借りてきた猫みたいに大人しくなり、俺の背中に隠れる。

 

 大した内弁慶だよ……。


「ま、分からんではないけどな――――」

 まさかここまで活気に溢れているとは――――、


「いらっしゃい!」


「こっちも見ていってよ!」

 なんて快活な声が、方々から耳朶に届いてくる。

 

 門をくぐれば、今まででは考えられない街商が、大通りに沿って商いを行っていた。

 反物、アクセサリー、冒険者向けの装備なんかもある。


「小麦と交換だよ」

 物々交換のようだ。

 まだ貨幣の必要性は、物々交換以下のようだな。


「主!」


「先生!」


「海賊討伐だけでなく、火龍の救出も達成したご様子。西側だけでなく、王都付近の瘴気も完全に浄化されたと連絡がありました。これで王都の瘴気問題は払拭されました」

 王都内に入れば直ぐに、先生がカイル達を従えて、お出迎え。


「ささ、会頭。我らがギルド、雷帝の戦槌のギルドハウスへ――――」

 主でなく、会頭と呼ぶ先生。

 しかし――、ギルドハウス?

 

 西門から歩いてすぐにある、俺たちが世話になっていた、おんぼろな小屋が建っている方向へと誘導される――――。

 

 ――……おんぼろな小屋があったはずなんだ。

 

 うん……。俺の知っている小屋があったはずなんだ……。


「こいつは……」

 驚くゲッコーさん。


「短期間でよくもこれだけ……」

 ベルも感嘆で続く。


「いやいや、短期間でベル殿も随分と変わられましたが、こちらも変わったでしょう」

 と、得意げにベルへと返す先生。

 

 俺たちの眼前には、立派な木造建築の建物が出来ていた。

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