PHASE-147【自慢したいお年頃】

「心配するな。炎は自然と使えるようになる。まあ、いつまでこの状態が続くかは、私もはっきりとは分からんがな」


「ベル自身に何も起こってないなら問題ないさ」


「ありがとう」

 あら! なんて素直なんでしょう。

 

 俺との距離が一気に縮んだんじゃないの? 

 

 病床だと気弱になるっていうし。

 血色はいいけども。


「完全に私の落ち度だ……」


「そうなのか?」

 完璧超人に落ち度ね。


「あんな大型の生き物と、戦闘経験なんて無いだろうから仕方ないさ」

 継いでフォローを入れる大人な対応。


「だとしても、情けない……」

 うわ~。こんなにも暗さを纏ったベルの声って、初めて聞いたかも。


 精進が足りないと、ひたすらに猛省である。


 苦手なヌメヌメ、テカテカボディのクラーケンからの触手プレイ――――、ではなく、攻撃でお怒りになってしまったベルはコントロールをするでもなく、感情のままに青い炎を使ったことで著しく力を消耗したからな。


 火龍の時みたいに、冷静にコントロールしていれば、問題なく青い炎も使えるんだろうが、クラーケンの時は、そうもいかなかったもんな。

 

 あの時、普通にクラーケンを倒していれば、余力を残して火龍とも戦えただろうから、髪の色が白に変わるって事も無かっただろう。


 まあでも、エロかったよな。

 うん――――。エロかった。


 後で、あの時のビデオクリップを見ようかな……。


「なんだか、不快さを感じるぞ」

 おっと、相変わらずに感知は一級品ですよ。


「ま、まあ、とにかくゆっくり休んでくれ」


「別に普段どおりに過ごす事は、問題なく可能だ」

 ふむ。炎の力が消失している以外は、やはりいつものベルだな。


 炎がなくても十分にチートだし、俺という男が、ベルのそこだけに頼っていると思われても嫌だからな。

 

 転生したての頃は、キャラクター達の力を借りて魔王を討伐。と、他力本願な考えだったが、俺は今や、大魔法が使えるわけだ。

 

 ――――そう! 大魔法。


「そうだよ!」


「なんだ? 急に大声を出して」


「悪い悪い」

 興奮のあまり大声になってしまった。

 目を丸くするベルに謝る。


「やいコクリコ」


「なんです? 高圧的な」


「お前は魔法を使えるようになるまでに、どのくらいの歳月を要した?」


「如何に天才であるロードウィザードである私でも、五年を要しました」

 五年か。

 

 カイル達を見る限り、ピリアのマナであるインクリーズっていう肉体強化は使えてたが、魔法は使えていない。

 

 五年で、しかもまだ十三歳の少女が、俺が目にしただけでも、ファイヤーボール、ランページボールの火炎系。

 アークディフュージョンの雷系の三種類の魔法を習得している。

 天才と得意げになるのも仕方ないか。


「おや? 侮辱しないんですね。普段ならロードを頭から取れとか馬鹿にするくせに。ようやく私の偉大さが――――」

 まあ、魔法を使える立ち位置になれば、お前の才能が凄いというのは、理解は出来たつもりだ。

 

 三種類しか見てないが、雷系であるアークディフュージョンは、火と風の魔法が出来ないと、習得できないからな。

 コクリコは、俺たちにはまだ見せてないが、風の魔法も使えるということだろう。

 やっぱりコイツ、以外と凄いな。


 ベルやゲッコーさんがいるもんだから、他が皆しょぼく見えてしまうっていう色眼鏡は、外さないとな。

 

 まあいい、それよりも俺にはやらなければならない事がある。


「偉大さどうこうはともかく、甲板に行こうぜ!」

 話を遮って甲板に無理矢理つれていく。


 俺が何がしたいのか理解できたベルとゲッコーさんは、やれやれと、肩を竦めて笑っていた。


 自慢したいじゃないの。だって男の子だもの。

 それに言いたかった事もちゃんと言いたいし。


「なんです。無理矢理に手を掴んで走り出して」

 やめてくれるその言い方。

 まるで俺がお前に愛の告白をするために、無理矢理に連れてきたみたいじゃないか。

 なので、頬を紅潮させないように。

 チラチラと見ないように!


 俺がなんだか、気恥ずかしくなるから。ていうか、勘違いしそうになるから。


「あー。こほん」

 と、冷静さを取り戻すために、嘘くさい咳を一つ。

 

 船端の手前に立って。


「コクリコ。お前に面白い芸当を見せてやる」


「はい?」


「俺がお前をすでに超えたところを――――だ」


「は?」

 格好良く言ったのに、すげー小馬鹿にした、第6行第1段が返ってきた。


 まあいい。俺のコレを見れば小馬鹿にも出来まい。

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