PHASE-127【炎のフォローが欲しいところ】

 マレンティは氷の壁に守られながら魔法を唱えてくる。

 調子に乗ってドカドカだ。

 その姿に配下の奴らが鼓舞されて、動きが良くなっている。


「弱い弱い。所詮は人間だな」


「そうかい、じゃあこいつはどうだ」

 バックブラストに気を配りつつ、ゲッコーさんが放つのは、発射体は安い物では、一発五千円くらいでお馴染みのスーサイドウエポン、RPG-7。

 

 命中率はあれだが、威力は折り紙付き。

 しかも、動かない氷の壁となれば――――、


「なんだと!?」

 破壊は容易い。

 粉々になる氷はキラキラと輝く。

 ベルの炎の壁に照らされて、無駄に美しい。


「我のウォール・オブ・アイスを破壊する、異質な爆裂魔法。いや、魔導具か」


「コクリコ、やれ」

 ハリウッディアンなお髭が笑みを湛えれば、期待に応えるように強く首肯をし、


「ファイヤーボール」

 初期魔法が放たれる。

 氷の壁の一部は穿たれたが、いまだ健在。


 コクリコの魔法は、穿たれた部分から侵入。

 これは直撃――――、


「くだらん。また初歩ノービスか」

 あ、やっぱり初期魔法だと無理か……。

 派手なトライデントで叩き落とされた。


「なぜ貴様がフィニッシャーなのか。場違いだろう。禍々しきマスクよ」

 馬鹿にされるよな~。


「くっ、本来の私の力はこの程度ではない! 今はこの仮面のせいで――――」

 コイツ……、さらっと嘘つきやがった。

 ガスマスク取ったら本来の力に戻るとか、どんな中二設定だよ。


「仮面を取ってしまえば、マナが私の力に触発されて、ここら一帯が完全に消滅してしまうのですよ」

 俺、ベル、ゲッコーさんの三人は、半眼でコクリコを見てやる。


 気付いているのか、こっちには一切、目を向けようとしないコクリコ。

 むかついたので、


「完全に消滅していいから、解放しろよ」


「なんとぉぉぉぉぉぉ!?」

 味方からのツッコミは考えていなかったようだな。

 出来ないのを知っているなら、ここは話を合わせるべきだろうと、ガスマスク奥の琥珀の瞳が泣きそうになっている。


「こ、今回はトールに花を持たせてあげましょう」

 上からな態度は崩したくないんだな。

 口八丁な存在に思えてきたぞ。


「来るがいい勇者。ここを墓標にしてやる」


「うるせえ! レベルと言う名の評価向上のために倒させてもらうぞ」

 でも、どう戦うべきなんだろうな。

 コクリコの口八丁を真似ても、マレンティには通用しないだろうしな。


 ホブゴブリンのような力任せのタイプと違って、こいつは技巧派みたいだし、苦戦しそうだな。

 困ったもんだ。


「期待しているぞ」

 なんて、美人様に言われたら、童貞はやる気になるんですよ。

 くらえ俺のマテバ!


「ええい! 面妖なものを使う」

 とはいえ、氷の壁に弾かれるんだけどな。


 でも、銃弾を目で捕らえることは難しいようで、相手からしたら見えない攻撃のようだ。


 しかし、氷の魔法は便利だな。

 壁とか作れるし。ベルとコクリコで火はかぶってるからな。

 俺、氷結系を目指そうかな。


 その前に雷系を真っ先に覚えないといけない状況なんだが。

  

 だが、火と反対の魔法を習得するってのはいいよな。

 相反する力だからこそ、お互いが引かれ合う。

 なんて、童貞の浅はかな考えも含まれている。


「なんだコイツは……」

 どうやら俺はトリップをしていたようで、戦場には不釣り合いな、だらしない表情になっていたようである。


「絶好の機会を狙えないなんて情けないな」

 誤魔化すようにマレンティを挑発。


 コイツはプライドが高いからか、発言を正面から受け止めるようで、すぐにオコな状態になる。

 意外と御しやすいな。


 幹部っていっても、精神面は意外に脆い。


「なめるな!」

 来た! でっかい氷の柱。


「頑張るだけさ!」


「うむ、いい気概だ」

 ベルの褒める言葉にテンションは上がるんだけども、なぜにベルは炎で消してくれないのか……。

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