PHASE-121【圧倒】

 今度は――――、ディスプレイに映る標的ではなく。ミニマップに表示される赤い点に向けて、ロックオンしていく。

 四連装ランチャー四基。ミサイル数は計十六機。

 

 ――――全てでロックし、


「発射」

 ボタン一つで十六機のミサイルが激しい音を轟かせ、空気を切りながら超低空で飛翔していく。


 ――――カウントダウン後、全弾命中。


「これで合計して二十体のゴーレムが轟沈した」

 双眼鏡で、沈んでいくのを確認してくれるゲッコーさん。

 体でなく、隻でカウントしてもらいたい……。


「絶対に外れることのない、狙ったところに必ず当たる。トリスタン卿が手にした弓、フェイルノートのようだ」

 トリスタンって、円卓の騎士の一人だったっけ?

 

 例えが変化球すぎるよ。ゲッコーさん……。

 

 でもって、さっきからゲッコーさんしか口を開かない。

 

 残りのベルとコクリコは、驚きで声が出せないようだ。

 ベルは表情にしっかりと驚きが表れているけど、ガスマスクは分からん……。

 

 分かるのは、この状況ではシュールだということだけだ。

 ――――だが、それも一時。


「だんちゃ~く、いま~」

 俺に代わって、嬉々としたくぐもった声で、コクリコがカウントする。

 カウントすれば、シーゴーレムが沈んでいく簡単なお仕事。

 

 水平線上に出現した敵の姿は、線から点へと変わっていく。


「試し撃ちだ」

 と、装甲ボックスランチャーを起動して、トマホークも一機発射する。

 

 ハープーンで沈むのだから、使用しなくても容易く破壊できるのは分かっているが、一応とばかりに発射。


「だんちゃく、いま~」

 さっきよりも適当なコクリコの言い様。

 爆発はやはりハープーンより大きい。


「先ほど以上の威力に、シーゴーレムの後方に待機していた敵の艦隊が浮き足立ってる」

 なるほど、今まで以上の物が存在するのかと、心に植え付けるのも手だな。


「そろそろ動いていいんじゃないか」

 継いでゲッコーさん。

 

 ミズーリの前に脅威は無い。

 

 前進しつつ、艦首の主砲六門が火を噴く。

 

 放たれた40.6㎝は、寸分の狂いもなく、シーゴーレムに着弾。

 確実に当たるから、誘導するミサイルはそもそも必要なかったとばかりだ。

 だが、視覚的な恐怖は十分なほどに植え付けられた。

 

 ――――没セシメル。

 肉眼でも十分に敵が見える頃には、百を超えるシーゴーレムの存在は無くなっていた。


「サハギンですよ」

 興奮するコクリコが指をさす。

 その方向を見れば――、


「半漁人だ」

 ゲームでもお馴染みの、三叉の槍、トライデントを手にした半漁人であるサハギンが、甲板で慌てふためいている。


「圧倒的すぎて申し訳ないが、敵だ」

 背筋が凍りそうな怜悧な語気のベル。

 つまりは俺に沈めろと伝えているのだろう。


「了解」

 悪いがこれも世界のためだ。

 

 これからあのサハギン達に待ち受ける運命には同情する。

 まあ、俺が実行するんだけどね……。


「ファランクス起動」

 頭が半球状。その下に続く円筒状のレーダーの更に下に、六本の銃砲身からなる砲塔が可動する。

 捕捉するのは、海賊たちが乗っていたのとさほど変わらないキャラック船。


「発射」

 目標を照準に定めて、トリガーボタンを押し続ける。

 

 ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――――。と、響く音。

 

 目標に高速で弾が連続して当たれば、木造船は木っ端を舞わせながら、蜂の巣どころか、大穴が至る箇所に出来上がっていく。


 弾幕の力。数の力だ。

 

 バリバリと穴を開け、浸水が始まる。

 

 サハギン達は泳ぎは得意だからか、次々と海に飛び込むが、ファランクスの弾が運悪く当たった者は、形容しがたい姿に変わっていった。

 

 幸運なのは、痛みを感じる前に死ねたことなんだろうな。

 

 ――――木造船に対して、ファランクス、各砲塔を撃ちまくり、海上に陣取っていた敵の艦隊は、ミズーリ一隻によって壊滅した。

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